各種性犯罪における示談金
性犯罪には様々な種類があり、加害者は示談の交渉を行い、これに同意してもらった場合は示談金を支払います。
そもそも示談は、被害者から「示談を受けても良い」という気持ちがなければ成立しないものであり、いきなり示談金の話をしたり相場以上の示談金を提示したりしても成功しないでしょう。
各種性犯罪の種類や、一般的な性犯罪における示談金の相場なども併せて解説していきます。
このコラムは、旧強制性交等罪、盗撮についてのものです。2023年6月23日に公布され、2023年7月13日に施行される改正刑法では、強制性交等罪は「不同意性交等罪」、盗撮は「撮影罪」へと変更されました。
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目次
1 性犯罪の種類によって示談金の相場は変わる
性犯罪には様々な種類があります。中には特定の罪名が付かないものの、各都道府県の迷惑防止条例や法律などで罪名が変わる場合もあります。
また迷惑防止条例違反と犯罪では、示談金の額も変わってきます。
性犯罪の内容や種類から示談金を比較してみましょう。
⑴各都道府県の迷惑防止条例の場合
①痴漢
痴漢とは、衣類や下着の上など直接相手の体に触れたり、手で下半身やお尻、胸や太ももなどを撫でたりすることです。
背後に密着し、体に自分の股間を押し付けたり、エスカレーターや階段でスカート内を撮影したりすることも痴漢行為になります。
一般的に、公共の場で相手の意思に反して性的な行為を行うことが該当します。
痴漢罪というものはありませんが、内容によって各都道府県によって定められた迷惑防止条例違反に問われることがあります。
東京都の迷惑防止条例違反では、法定刑は6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金です。
示談が成立すれば不起訴処分になるケースが多いでしょう。
迷惑防止条例の示談金相場:示談金30~50万円程度 |
⑵軽犯罪法違反の場合
①のぞき
のぞきはトイレや浴室、更衣室や住居内など、衣服を身に付けないでいるような場所をのぞき見る行為です。
こっそりとのぞき見たという行為に対しては、軽犯罪法違反や迷惑防止条例違反に該当します。
②盗撮
盗撮とは、相手に許可を取らずに下着や裸などを撮影することです。
盗撮そのものを罰する規定はないのですが、軽犯罪法違反や迷惑防止条例違反として扱われます。
また対象が18歳未満であった場合には、児童ポルノ規制法に該当し、処罰の対象となります。
前述した2つの内容では軽犯罪法違反に該当することが多く、この場合は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります。
対象が18歳未満の場合は別ですが、示談では民事裁判で認められるのと同等の金額がおおよその相場となっています。
軽犯罪法違反の罰則は、1日以上30日未満の身柄拘束または1,000円以上1万円未満の金銭徴収です。
のぞき、盗撮の示談金相場:示談金30~100万円程度 |
⑶わいせつ罪などの性犯罪の場合
①公共の場での露出
公共の場で体の一部を露出すると公然わいせつの罪に該当します。
不特定多数の人が認識できる場所で性器の露出や性交、または性交類似行為、体の一部を露出した場合、公然わいせつ行為となります。
車内や公園などで性交や類似行為を行った場合でも罪に問われる可能性があり、お互いに交際している関係性であっても他人に目撃される可能性がある場所で行為に及べば成立します。
また、インターネット上で、これらの行為を配信した場合も公然わいせつ罪です。
公共の場での露出では、公然わいせつの他に軽犯罪法に該当するケースもあります。
公然わいせつ罪では、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留となります。
公然わいせつ罪の示談金相場:20万円~50万円 |
②児童買春関連
児童買春は、18歳未満を児童と定義し、相手に対価を与えて性交または類似の行為を行うことです。
金銭授受だけでなく、食事やプレゼントであったとしても該当する可能性があります。
また18歳未満との間に入って仲介する児童買春の周旋、または周旋目的で勧誘した場合も罪です。
児童買春関連では児童買春や児童ポルノ、児童買春周旋罪や児童買春勧誘罪などが該当します。
児童買春は5年以下の懲役または300万円以下の罰金、児童ポルノ所持は1年以下の懲役または100万円以下の罰金、提供であれば3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。
児童買春周旋罪は5年以下の懲役または500万円以下の罰金か併科、これを業としていたのなら7年以下の懲役及び1,000万円以下の罰金です。児童買春勧誘罪は5年以下の懲役または500万円以下の罰金です。
児童買春関連の罪では示談金の相場も幅広く、罪の内容によって金額も変わってきます。
児童買春関連の示談金相場:100万円~300万円 |
③性的動画や画像関連
18歳未満の裸の写真や動画撮影、または配信を行うことは犯罪です。
この場合、児童の裸の写真や動画撮影、性交や類似行為では児童ポルノ製造罪、これらをインターネット上など不特定多数が確認できる場で公開した場合は児童ポルノ公然陳列罪となります。
18歳以上であっても裸の写真や動画、性交などを不特定多数が確認できる場で公開してしまうとわいせつ物頒布などの罪になります。
児童ポルノ製造罪は3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。
児童ポルノ公然陳列罪となると、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金です。
児童ポルノ関連の示談金相場:30万円~600万円 |
※他に慰謝料が加算される場合があります。
④未成年者へのわいせつ行為や淫行
相手に対価を与えなくても18歳未満に対してわいせつ行為や性行為などを行った場合は、各都道府県によって定められている青少年育成条例違反になります。
相手が18歳だと認識していた場合のみで、児童が偽っていた場合などは該当しません。
しかし、お互いが性行為を同意していたとしても淫行と判断されるケースがあるものの、真剣交際であれば違反にならないでしょう。
また親や教師、勤務先の上司など強い立場を利用して青少年と性行為をした場合は児童福祉法での児童淫行です。
13歳未満となれば同意があろうと強制わいせつ罪もしくは強制性交等罪となります。
児童淫行は児童福祉法違反で、10年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方です。
強制わいせつ罪は6月以上10年以下の懲役、強制性交等罪は5年以上20年以下の懲役です。
この2つには罰金がありません。
児童淫行の示談金相場:30万円~300万円 強制わいせつの示談金相場:30万円~100万円 強制性交等罪の示談金相場:50万円~300万円 |
⑤監護者の性的虐待
監護者の性的虐待は、18歳未満の人を監督して保護する人がわいせつ行為や性交などを行うことです。
親などの監護者が、支配的な立場を利用してわいせつ行為や性交などを行うことで、性暴力や脅迫も処罰の対象です。
2017年7月に施行され、監護者わいせつ罪や監護者性交等罪が該当します。
監護者わいせつ罪は6月以上または10年以下の懲役、監護者性交等罪は5年以上(20年以下)の懲役です。
監護者わいせつ罪の示談金相場:50万円~100万円 監護者性交等罪の示談金相場:100万円~500万円 |
⑥わいせつ行為
わいせつ行為は、13歳以上の男女に暴力や脅迫などの力を用いてわいせつな行為を行うことです。
体への接触や衣服を脱がせる、キスをすることなどが該当し、相手の意思に反している場合は強制わいせつ罪となります。
13歳未満なら同意があっても強制わいせつ罪です。
もし相手の心神喪失や抗拒不能をさせた場合、準強制わいせつ罪に問われることもあります。
強制わいせつ罪、準強制わいせつ共に6ヶ月以上10年以下の懲役です。
強制わいせつ罪の示談金相場:30万円~150万円 準強制わいせつ罪の示談金相場:10万円~100万円 |
⑦性的暴行(レイプ)
暴力や脅迫などを用いて13歳以上の人に性交や口腔内に性器を挿入した場合、強制性交等罪に該当します。
相手が13歳未満なら暴力や脅迫がなくても罪が成立します。
もし相手が抵抗できない状態で性交した場合には準強制性交等罪です。
強制性交等罪、準強制性交等罪共に5年以上の懲役です。
強制性交等罪の示談金相場:50万円~300万円 準強制性交等罪の示談金相場:100万円~500万円 |
2 まとめ
性犯罪には様々な種類があり、どの行為が何の罪に該当するかによって示談金の金額も変わってきます。
示談交渉は直接相手と行わず、必ず弁護士に相談してから行いましょう。
また自分に非がないと感じている場合も同じです。
弁護士に相談後、よく確認してからの交渉が円満解決への近道です。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。