未成年と知らずにホテルで性交渉。逮捕される?
成人が未成年と同意して性行為を行った場合、同意があっても犯罪で捕まってしまうのではないかと思う人もいるでしょう。
しかし、状況によっては罪に問われない可能性もあります。
そこで今回は、未成年と知らずにホテルなどで性行為をした場合は捕まってしまうのか、重罪になるケースはあるのか、淫行や類似する性犯罪ではどのような刑罰が科せられるのか、淫行で逮捕された場合の流れとすべきこと、といった点について解説していきます。
目次
1 未成年、18歳未満だと知らなかった場合でも要注意!
結論から言ってしまうと、相手が未成年、つまり18歳未満だと知らなかった場合は罪に問われません。
これは、のちに述べる、不同意性交等罪、不同意わいせつ罪、青少年保護条例、児童買春法、などでも、全て当てはまります。
性行為をした相手が18歳未満だという事を知っていた、知らなかったが18歳未満かもしれないと思っていたにもかかわらず行為をした故意犯だけが処罰の対象になります。
ただし、後述するように、未成年と性的関係を持つにあたっては十分に注意する必要があります。
⑴不同意性交等罪、不同意わいせつ罪は16歳未満だと知らなければ成立しない
2023年7月13日の刑法改正により、強制性交等罪や強制わいせつ罪が、それぞれ不同意性交等罪、不同意わいせつ罪に法改正されました。
条文は以下の通りです。
(不同意性交等罪)
177条3項 十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする(※177条第1項には、五年以上の有期拘禁刑に処する。)。 (不同意わいせつ罪) 176条3項 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする(※176条第1項には、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。)。 |
不同意性交等罪、不同意わいせつ罪は、基本的に「同意がない」と考えられる状況での性交等やわいせつを禁止する法律です。
ただし、16歳未満の場合には、同意があっても処罰されることになります。
しかし、16歳未満と知らなければ、故意がないので、同法で処罰されません。
⑵不同意性交等罪、不同意わいせつ罪は重罪です
不同意性交等罪は、「五年以上の有期拘禁刑」に処せられる犯罪であり、かつての強姦罪に相当する重い犯罪です。初犯でも、実刑がつく可能性は高いです。
また、不同意わいせつ罪も、罰金刑がなく、「六月以上十年以下の拘禁刑」のみの厳しい処罰が科される重い罪です。
ですから、これらの罪を犯さないように、未成年者、18歳未満の相手とは不用意に性交渉をしたり、性的な類似行為をしないことが望ましいです。
18歳未満の女児といえど、化粧もするので、例えば、15歳の女児が18歳だと年齢を偽っているケースもあります。
そのような場合には、年齢をごまかされていて、16歳未満であると知らないことになるので、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪は成立しません。
しかしながら、例えば、その女児が「はじめから15歳だと伝えていた」「中学の制服を着て会っていたから、中学生(15歳以下)だと知ってたと思う」などと言ったとしたらどうでしょうか?
女児がこのように言えば、あなたと女児のどちらを信用するかという話になって、女児の方が信用できるとなれば、警察は不同意性交等罪や不同意わいせつ罪であなたを逮捕したり、検察も起訴するかもしれません。
そうなれば、極めて重い犯罪で立件されてしまい、人生を棒に振ってしまうかもしれないのです。
また、仮に不同意性交等罪や不同意わいせつ罪に当たらないとしても、以下に述べるような淫行条例以外の罪に該当する場合もあります。
具体的な量刑は、それぞれのケースごとに異なりますが、初犯か再犯か、反省の意の有無、被害者の意向、示談の成立の有無、などの諸般の事情が重要な要素となります。
相談事例:【兵庫県青少年愛護条例違反(いわゆる青少年保護条例違反) 20代男性】「過去に15歳の女子児童と性交渉を行い,罰金刑を受けた。その後1年ほどで…」
⑶不同意性交等罪や不同意わいせつ罪以外の淫行条例や、類似する性犯罪ではどのような刑罰が科せられる?
未成年と性行為をした場合、淫行条例違反やその他の罪に問われる可能性があります。
では、どのような罪に問われるのか、またどの程度の罰則を受けるのかについて見ていきましょう。
①淫行条例について
淫行は、各都道府県が定めている青少年健全育成条例・青少年保護育成条例で処罰の対象になっています。
「淫行とは、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいう」 (事件番号 昭和57(あ)621 昭和60年10月23日 最高裁判所大法廷) |
真摯な恋愛感情を以て行為に及んだ場合には、この淫行の定義には当てはまりません。
しかし、淫行か自由恋愛かは、線引きがあいまいです。
真摯な恋愛感情なしに、18歳未満だと知っていながら行為に及んだ場合は、条例違反で逮捕・勾留されてしまい、起訴されると有罪になるのです。
東京都の青少年健全育成条例では、18歳未満の青少年に対する淫行をした場合、2年以下の懲役または100万円以下の罰金が法定刑として決められています。
罰則の重さは都道府県によって異なりますが、同じような水準で決められていると考えて問題ないでしょう。
不同意性交等罪や不同意わいせつ罪は、同意がある場合、16歳未満を規制対象としていますが、16歳から17歳の場合には、このいわゆる淫行条例が適用されることになります。
②児童買春罪
児童買春罪は、対償が伴う性行為が対象になります。ここでいう「対償」とは、金銭に限りません。
食事をごちそうする、おもちゃを買ってあげる、家に泊めてあげるなどの約束をした場合も「対償」に該当します。
この罪の罰則は、5年以下の懲役または300万円以下の罰金となっています。
不同意性交等罪や不同意わいせつ罪は、同意がある場合、16歳未満を規制対象としていますが、16歳から17歳の場合には、金銭等を渡せば、児童買春法が適用されることになります。
③児童淫行罪
児童淫行罪は、児童福祉法で定められている罪で、立場を利用して淫行に及んだ場合が対象になります。
18歳未満の青少年に淫行させた場合に罪に問われるのですが、青少年に対して何らかの影響力を持ち、淫行をするように助長した場合に児童淫行罪が認められるのです。
例えば、教師と児童のような師弟関係、親戚関係、同居関係などによって、青少年に対して影響力や支配力を持っている場合に該当する可能性が出てきます。
罰則は、10年以下の懲役または300万円以下の罰金となっています。
④児童ポルノ所持等罪
児童ポルノ所持等罪は、淫行した際の動画や写真データを所持していたり、パソコンに保存していたりする場合に成立する可能性があります。
さらに、児童ポルノの作成や提供も同様に、児童ポルノ所持等罪の対象になる可能性があります。
児童ポルノは近年、供給者側も、消費者側も罰せられるように法律が改定されました。
供給側は、その販売ルートに関わった全ての人が罰せられます。そして、目的によって量刑が異なります。
処罰の対象としているのは、以下の行為類型です。
- 自己の性的好奇心を満たす目的(単純所持)
児童ポルノを所持、保管したものは、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金が科されます。
- 少人数、特定の者に対する提供目的
児童ポルノを提供、またその目的のために製造(密かに製造したものも含む)、所持、保管、運搬、輸出入したものは、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金が科されます。
- 不特定多数への提供、陳列目的
児童ポルノを提供または陳列、またその目的のために製造、所持、保管、運搬、輸出入したものは、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金が科されます。
2 不同意性交等罪や不同意わいせつ罪、そのほか淫行で逮捕されてしまった場合の流れとすべきこと
不同意性交等罪や不同意わいせつ罪、淫行で捕まってしまった場合、どのような流れで手続きが行われるのか、刑事手続きをする際にやるべきことについて解説していきましょう。
⑴逮捕されてしまった場合の流れ
①逮捕
被疑者を逮捕したら、警察は48時間以内に検察官に事件を送致します。
これがよく耳にする送検です。
②勾留請求
検察官は送検を受けてから24時間以内に、裁判所に勾留請求を行います。
③勾留決定
勾留請求を受けた裁判所によって、勾留と呼ばれる長期の身柄拘束が行われます。
原則は10日となっていますが、最大20日まで勾留可能です。
④処分決定
勾留後は処分が決定します。
被疑者としては、ここで不起訴処分を得ることが望ましいでしょう。不起訴になった場合は刑事手続きが終了となり、略式処分になった場合は罰金を払うと刑事手続きが終了となります。
起訴された場合は、刑事裁判を受けなければいけません。不起訴になるためには、示談活動が非常に大切です。
また、不起訴は前科になりませんが、略式処分もしくは起訴された場合は前科となります。
⑤起訴後勾留
起訴されたら、勾留期間が始まります。
最初は2ヶ月間ですが、裁判が終わるまで1ヶ月ずつ更新され、裁判が終わるまで継続されます。
保釈請求は可能です。
⑥裁判
裁判では、執行猶予の獲得が目標になります。
しかし、児童淫行罪や児童買春罪は初犯でも実刑になる可能性があるため、必ずしも執行猶予付きの判決が下されるとは限らないことを覚えておきましょう。
3 刑事手続きをする際にやるべきこと
逮捕された際には、早い段階で被害者と示談をする必要があります。
逮捕中や勾留中に相手と示談ができれば、不起訴になる可能性が高いためです。
また、早い段階で示談ができると、勾留期間前に不起訴決定が出され、釈放されるケースもあります。
不起訴になることが難しい事例でも、実刑を少しでも短くするために弁護活動は必ず行うようにしましょう。
裁判の情状では、被害者に対して弁償をきちんとしているか、示談が成立しているかが重要なポイントになります。ただし、上記のように、犯罪の被疑者は身柄を拘束されており、自由に示談を進めることは難しいです。また未成年に対する性犯罪の示談相手は保護者であり、自分の子どもが被害に遭ったとなれば被害感情が強くて当然です。なかなか示談交渉の場を設けてくれなかったり、法外な示談金を請求されるなど、示談が難航してしまう可能性も高くなるでしょう。
そのため、示談を目指すために弁護士に相談するのはとても大切です。
4 まとめ
未成年と知らずに性行為をしてしまった場合、罪に問われることは基本的にありません。
しかし、その女児が「はじめから15歳だと伝えていた」「中学の制服を着て会っていたから、中学生(15歳以下)だと知ってたと思う」などと言ってくれば、話は変わります。
女児や相手の親から訴えられれば、逮捕されてしまう可能性もゼロではありません。
ですから、そもそも未成年者と性交渉や性的類似行為を行うことは慎むのが望ましいです。
しかし、それでも未成年者とこれらの行為に及んでしまい、結果として刑事事件化してしまうことがあった場合には、弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談すれば、量刑が軽くなる、不起訴になる等のメリットを得られる示談を円滑に進めやすくなります。
したがって、できるだけ早い段階で弁護士へ相談するようにしましょう。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。