【知らないと後悔!】落書きで現行犯逮捕されるケースと弁護士が出来ること
落書きがオークションで高額で取引されているなど,海外では落書きはグラフィックアートとして捉えられていることもあるようです。
しかし,日本では,許可を得ずに落書きをすることは犯罪行為です。
今回のコラムでは,落書きがどのような罪にあたるのか?その刑罰について解説します。
目次
1 落書きはどんな犯罪になる?
何に落書きをしたかによって,成立する犯罪は異なります。
⑴建造物等損壊罪
第二百六十条 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。 |
建物に落書きした場合には,建造物等損壊罪が成立します。
ここで言う「他人の」や「損壊」の定義は,器物損壊罪と同様です。
量刑は,5年以下の懲役です。
⑵で解説する器物損壊罪よりも重い量刑が科されています。どちらの罪が適用されるかは,落書きの対象物が建造物から取り外せるか,原状回復の困難性等によって決まるでしょう。
⑵器物損壊罪
(器物損壊等)
第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。 (自己の物の損壊等) 第二百六十二条 自己の物であっても、差押えを受け、物権を負担し、賃貸し、又は配偶者居住権が設定されたものを損壊し、又は傷害したときは、前三条の例による。 |
器物損害罪の要件は,
①他人の物
②損壊又は障害
です。
①他人の物
原則として,「他人の物」に自分の者は含まれませんが,建物・公用文書・私用文書は異なる罪が成立するために含まれません。また,262条に規定されているように,自分の物であっても,差押を受けている・賃貸している・物権を負担している(担保に入っている)・配偶者居住権が設定されている時には,器物損壊罪の客体になります。
②損壊または傷害
損壊とは,物の効用を妨げる行為全般を言います。
物理的な破壊に留まらず,広くとらえられています。原状復帰が困難なほどの落書き,傷つけて落書きしたような場合には,損壊に当たる可能性が高いでしょう。
傷害とは,客体が動物の場合に該当します。
器物損壊罪の量刑は,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料です。
参考:器物損壊(他人の物を損壊・傷害)の場合、初犯、示談交渉については弁護士に相談
⑶文化財保護法違反
文化財保護法
第百九十五条 重要文化財を損壊し、毀棄し、又は隠匿した者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。 第百九十六条 史跡名勝天然記念物の現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をして、これを滅失し、毀損し、又は衰亡するに至らしめた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。 |
重要文化財・史跡名勝天然記念物に落書きをしたものは,文化財保護法に違反したとして刑事罰に科される可能性が高いです。釘のようなもので文字を書いただけでも罪に問われます。
量刑は,5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金です。
⑷公職選挙法違反
第二百二十五条 選挙に関し、次の各号に掲げる行為をした者は、四年以下の懲役若しくは禁錮こ又は百万円以下の罰金に処する。
(略) 二 交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、又は文書図画を毀棄し、その他偽計詐術等不正の方法をもつて選挙の自由を妨害したとき。 (略) |
選挙のポスターに落書きをした者は,文書図画を毀棄したとして,公職選挙法違反になる可能性があります。
量刑は,4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金です。
⑸落書き防止条例(各自治体による)
各自治体が,迷惑防止条例などで罰則を設けている場合,刑事罰が科される可能性があります。
例えば,横浜市は,「横浜市落書き行為の防止に関する条例」にて,以下のように規定しています。
横浜市落書き行為の防止に関する条例
(落書き行為の禁止) 第3条 何人も、落書き行為を行ってはならない。 (罰則) 第9条 第7条第2項の規定による命令に違反した者は、 50,000 円以下の罰金に 処する。 |
市の要請によって落書きを消去しない場合,5万円以下の罰金が科されます。
⑹威力業務妨害罪
(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。(威力業務妨害) 第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。 |
落書きによって人が業務を行えないようにしたケースでは,威力業務妨害罪が成立する可能性があります。
威力とは,暴行や脅迫に限られず,多人数で店に押しかけたり,大声を出し続けたりすることも含まれます。
量刑は,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
2 落書きで逮捕されるのか?実際の事例は?
⑴逮捕される可能性がある
結論から言えば,落書きで逮捕される可能性はあります。
落書きをしている最中に通報され現行犯逮捕されるだけでなく,監視カメラから身元を特定されて後日逮捕されるかもしれません。
単なる落書きでと思われるかもしれませんが,被害にあった建物が重要文化財・史跡名勝天然記念物であれば,ニュースになるほど社会的に注目が集まります。
重要文化財・史跡名勝天然記念物に限られず,同一地域で起こった他の落書きについても,絵柄や塗料の種類から余罪を疑われ,取調べが長期化するかもしれません。
もっとも,逃亡や,証拠隠滅の恐れがないために,逮捕の必要性がないと判断された場合は,在宅事件となるでしょう。
⑵実際に逮捕された事例
・飲食店の敷地にある壁にスプレーのようなもので落書きをしたとして、22歳の男2人が器物損壊の疑いで逮捕。(Yahoo!ニュース)
・大阪市の重要文化財に落書きした容疑で,20代の男2人を逮捕。(朝日新聞)
3 落書きの行為者が少年と成人で,刑事事件の流れの違いはある?
落書きの行為者が成人か少年かでは,刑事事件の流れが異なります。
⑴成人事件の場合
成人事件であれば,逮捕されれば警察で捜査が開始され48時間以内に検察に送致されます。検察は,その後も捜査を続け,送致されてから24時間以内に勾留請求を行うか決め,裁判官に請求します。
裁判からの勾留の許可が下りれば,延長も含めて最大20日間勾留され,起訴されるかどうかが決まります。
起訴され,裁判で有罪となれば,刑事施設に収容されたり,罰金を支払うことになります。
⑵少年事件の場合(18歳・19歳も含む)
一方,少年事件では,「全件送致主義」が採られています。全件送致主義とは,全ての事件が捜査機関(警察・検察)から家庭裁判所に送られるということです。
少年法の目的は,少年の教育と更正です。そこで,家庭裁判所では「調査官」が少年に関してさまざまな調査を行い,少年の素行や家庭環境の改善点をまとめます。調査官は,調査結果に併せて,少年の処分に関する意見も調査報告書にまとめて,裁判官に提出します。
裁判官は,この調査報告書をもとに,少年に対する処分を決定します。
家庭裁判所の決定には,検察官送致(逆送),少年院送致,保護観察などがあります。
もっとも,事件が重大であれば,検察に逆送され,成人と同様の刑事手続きを受ける場合もあります。
4 落書きで逮捕されたときに弁護士が主にできること
前述の通り,落書きで問われる罪は,種類も量刑も様々です。
建造物損壊罪や,文化財保護法違反となってしまえば,執行猶予の要件である,「懲役3年以下,または50万円以下の罰金」を満たさない可能性があります。実刑判決が出てしまえば,そのまま刑事施設に収容されてしまい,その後の社会復帰のハードルが上がってしまいます。
そこで,落書きで逮捕されたら,弁護士に相談しましょう。
弁護士ができることは,主に以下の通りです。
⑴自首同行
建物の外壁に落書きをしてしまった,監視カメラに写っているかもしれない,自首をしたいが一人では心細い…
このようなお悩みを持つ方のために,弁護士が自首同行を行うことが出来ます。
弁護士は自首に同行するだけでなく,その後に予定されている取調べに対してアドバイスを行うほか,逃亡や証拠隠滅の恐れがないとして,その場で逮捕されないように主張を行います。
スピード勝負の刑事事件において,自首の際に弁護士が付いていることは,その後の弁護活動をより円滑に進めることが可能です。
⑵示談
刑事事件の弁護活動の中で,被害者との示談は非常に重要な意味を持ちます。
器物損壊罪は,親告罪ですから,被害者の告訴がなければ刑事事件化には至らないでしょう。
また,他の犯罪に問われていても,示談が成立しているかどうかは,不起訴や執行猶予,早期の釈放を獲得する上で重要です。
もっとも,当事者だけで示談を行おうとすれば,両者ともに感情的になってしまい,上手くまとまらない可能性が高いです。また,加害者が被害者の言いなりになるケースもあります。加害者が罪を償い,半四肢¥するべきであることはもちろんですが,今後の生活が脅かされてしまえば,再犯の恐れがあります。
そこで,弁護士が,法律の専門家であり第三者として示談活動を円滑に進めます。
5 まとめ
今回のコラムでは,落書きがどのような罪に当たるのか,その量刑について解説しました。
落書きは犯罪です。重要文化財であれば,大きく報道されることも避けられないでしょう。
落書きをしてしまって自首をしたい,息子・娘が落書きで逮捕されたという方は,是非弁護士にご相談ください。
法律事務所ロイヤーズハイは,夜間・休日も対応化可能な法律事務所です。経験豊富な弁護士が,ご自身やご家族をサポートします。ぜひ,法律事務所ロイヤーズハイにご相談ください。
このコラムの監修者
-
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。