息子・娘が逮捕されてしまった!家族がすべきこと
突然,警察から「あなたのお子さんを逮捕しました。」と電話が来たら,誰であっても困惑するはずです。
子供はどうなるのか?学校は?職場は?今すぐ会いに行けるのか?
刑事事件の知識に精通している方ではない限り,まず何から手を付けるべきか悩むでしょう。
この記事では,息子・娘が警察に逮捕されてしまった場合に家族ができることを解説します。
目次
1 息子・娘が逮捕された後の流れは?
息子・娘が未成年かどうかによって,刑事事件で逮捕された後の流れが変わってきます。
20歳に満たない者のことを,少年法では「少年」と呼びます。
性別に関係はありませんので,少女が逮捕されたとしても少年法が適用されます。
少年法は,未成年の処罰について,その目的を「非行少年の更生」に置いています。
成人事件のように,再犯防止のための処罰が目的ではありません。
(1)成人の場合
20歳以上の息子・娘が罪を犯したのであれば,逮捕後の流れは以下の通りになります。
まず,逮捕されてから48時間以内に,警察は検察官に送致するかどうかを決めます。
検察官に送致されたら,そこから24時間以内に,勾留請求を行うか否か判断されます。
それまでの捜査への協力の姿勢や,反省の態度,被害者との示談の有無,逃亡可能性などが考慮されます。
裁判官が検察官の勾留請求を許可すると,そこから10日間,最大で20日間もの間身を拘束されてしまいます。
勾留期間までの捜査結果をもって,検察官は被疑者を起訴するかどうか決めます。
起訴されたら,日本の刑事裁判は99%以上が有罪判決を下されます。
初犯や,量刑が軽い罪であれば,裁判官から刑を言い渡される際に,執行猶予がつくこともあります。
ただし,これらは前科です。
ご家族の意向として,息子様・娘様に前科をつけたくないという方もおられるでしょう。
そこで,起訴される前に,示談活動などの弁護活動を行って,不起訴を得たり,早期の釈放を求めていく活動をすることが大切になります。
(2)未成年の場合
16歳以上20歳未満の息子・娘が罪を犯したのであれば,刑事責任が発生し,少年法が適用されるので,成人事件と逮捕後の流れが変わってきます。
ちなみに,16歳未満の息子・娘には刑事責任が問われません。
① 逮捕
少年(14歳以上の未成年者)である場合,刑事責任が発生しますので,成人と同じように警察官に逮捕されます。
14歳未満であれば,刑事責任を問うことが出来ないので,児童相談所に送られます。
少年を逮捕した場合、警察は逮捕後48時間以内に検察官宛に少年の身柄を送致します。
② 勾留・勾留に代わる観護措置
検察官に送致された後に,24時間以内に勾留か,勾留に変わる観護措置か,という決定があります。
勾留は,成人事件と変わるものではありません。
原則として10日,最大で20日間行われます。
少年法43条3項は,少年の勾留をやむを得ない場合に限るとしていますが,実際は,勾留請求が認められることが多いです。
勾留に代わる観護措置とは、少年鑑別所で少年の身柄を拘束することを言います。
この観護措置の期間は10日間に限られ,延長されることはありません。
③ 家庭裁判所送致
少年事件では,今後の処遇を決めるために家裁調査員による調査が必要になるので,「全件送致主義」が採られています。
勾留・拘留に代わる観護措置の期間が終了すると,すべての少年は,家庭裁判所に送られます。
④ 調査官調査
家裁送致後は、家庭裁判所の「調査官」が少年に関してさまざまな調査を行います。
具体的には,医学や心理学などの専門家によるテスト,行動観察,反省しているかを確認したり、保護者に話を聞いたりして、少年にどのような処分をするのが相当か,家庭調査官が検討します。
調査官は,調査結果に併せて,少年の処分に関する意見も調査報告書にまとめて,裁判官に提出します。
⑤ 少年審判
審判開始が決定されると,成年事件とは異なり非公開で行われます。
もっとも,少年以外に,両親や弁護士も出席することができます。
裁判官は,調査官からの調査結果と処分についての意見をもとに,審判内容を決定します。
このとき、決定される可能性のある審判内容は、以下の通りです。
ア 不処分
少年が犯罪行為を行っていない,あるいは,今後の再犯可能性がないと判断されると,処分されることなく釈放されます。
イ 保護観察
保護観察とは,普通の社会生活を送りながら,保護観察官や保護司の支援の下更生を図る制度を言います。
保護観察期間は,原則として,成人になるまでですが,保護観察の必要性が無くなったと判断されれば,保護観察処分が解除されます。
保護観察期間中は,少年は学校や職場へ行くことができますが,非行を繰り返すような場合には,保護処分では更生できないと判断され,少年院送致となる可能性もあります。
ウ 少年院送致
保護観察では更生が難しいと判断された少年は,少年院へと送致されます。
少年院は,刑務所ではありませんが,刑務所と同じように定められた期間内は身柄を拘束されます。
ここでは,生活指導や,職業補導等によって少年の更生を目指して教育が行われます。
エ 児童支援自立施設等送致
児童自立支援施設は,非行性が高くない少年が送致されます。
他にも,虐待されている等の事情から,家庭環境上保護を必要とする少年は,児童養護施設で養護されます。
オ 検察官送致(逆送)
事件の重大性や悪質性から,刑事処分が相当であると裁判官が判断した場合には,少年事件であっても検察官へと送致されます。
検察官送致となった少年は,成人と同様に刑事裁判を受けることになります。
(3)少年法の改正により,18歳・19歳は「特別少年」として扱われます
成年年齢を18歳とする民法の改正と併せて,令和3年5月21日,少年法等の一部を改正する法律が成立し,令和4年4月1日から施行されます。
選挙権年齢や成年年齢が引き下げられたことにより,責任ある主体として,社会で期待される役割が大きくなったとして,18歳・19歳は「特別少年」という扱いを受けることになりました。
具体的な改正点は以下の通りです。
ア 特定少年の原則逆送対象事件の拡大 イ 特定少年が逆送された際,実名報道が解禁された ウ 特定少年の保護処分の期間が明記された エ 特定少年が有罪判決を下された時,成人と変わらない量刑が科される |
このように,従来の少年事件と比べて厳罰化が進んでいると言えます。
2 息子・娘が逮捕されたら家族ができること
(1)事実確認を行いましょう
まずは落ち着いて,警察官に事実確認を行いましょう。
逮捕された,という事実だけでは何も分かりませんから,「息子・娘が,いつ,どこで,何をしたのか」「被害者はいるのか」「共犯者はいるのか」について聞きましょう。
警察官は,たとえ家族であってもすべてを教えてくれるとは限りません。
せめて,罪名だけでも聞き取ることが大切です。
なお,弁護士に依頼されれば,接見に行くことで,罪名を確認することもできますし,警察に連絡をして罪名だけでも確認することができる場合が多いです。
(2)少年事件では,家族のサポートが必要不可欠です
前述したとおり,少年事件ではすべての事件が家庭裁判所に送致されます。
家庭調査官による調査では,保護者との面談も行われます。
家族が子供の犯した罪に向き合い,少年が非行を繰り返さないよう少年自身と周囲の環境を改善すること(環境調整)ができれば,審判が開始されない可能性があります。
審判が開始されたとしても,不処分へとつながりやすいです。
そこで,家族は,息子・娘が家に帰ってきたときにしっかりと監督できる体制を整え,罪を犯す原因となった交友関係を止めさせるなど,息子・娘の犯罪の原因に向き合ってください。
(3)できるだけ早く弁護士に相談しましょう
①成人事件で弁護士ができること
逮捕されてすぐに取り調べが行われますから,今後の流れや取り調べのアドバイスを行うためにも,まずはできるだけ早く面会を行います。
接近禁止命令が出ていれば,家族が面会することはできないので,伝言等があれば弁護士が伝えることが可能です。
弁護活動において非常に重要なのは,被害者との示談です。
加害者やその家族が被害者の連絡先を知ることは難しいですが,弁護士であれば捜査関係者から連絡先を入手し,示談に向けて話し合いを進めることができます。
かりに被害者が知人で会っても,第三者の弁護士を挟むことで,円満な解決を目指すことができます。
②少年事件で弁護士ができること
少年事件において,弁護人は付添人と呼ばれます。
付添人の役割は,法的なサポートに留まらず,精神的なサポートも大きいです。
弁護士が早くから少年の付添人になることは,少年との信頼関係を築くことが容易になります。
刑事事件のプロである弁護士のサポートがつくことで,家族も少年も罪に向き合う余裕が生まれます。
少年事件は,少年の更生を目的としていますから,少年が罪と向き合うことが何よりも大切です。
環境調整においても,少年と家族が今後どのような関係でいるべきか,家族とともに具体的な改善策を一緒に考えていきます。
これらの活動の結果,更生の可能性が高いとして,弁護士が調査官や裁判官に意見書を提出したり,直接面会で説明したりします。
調査官が裁判所に提出する意見報告書は,裁判官が少年の処分を決めるうえで考慮されるので,裁判官だけでなく,調査官に対するアピールも大切です。
③特定少年の場合に弁護士ができること
特定少年の弁護活動は,少年事件の弁護活動に加えて,逆送されないことがとても重要になります。
少年法の改正によって,特定少年が検察官に逆送されてしまえば,実名報道の解禁や,厳罰化など,今後の社会復帰・更生のハードルが高くなってしまうからです。
少年が問われている罪が,そもそも原則逆送対象事件にあたらないのであれば,その旨を主張します。
原則逆送対象事件の対象であったとしても,家庭裁判所の調査官による調査の結果、犯行の動機、態様及び結果、犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない,と少年法に規定されています。
そこで,弁護士は,特定少年が逆送されることのないように,保護処分が相当であるとの意見を裁判官や調査官に積極的に主張します。
3 まとめ
今回の記事では,息子・娘が警察に逮捕された時に家族ができることを解説しました。
子供が逮捕されたと聞けば誰であっても動揺するものですが,落ち着いて対処し,子供と向き合うことがとても大切です。
そのために,刑事事件のスペシャリストである弁護士に早期に依頼することをお勧めします。
刑事事件はいつどこで発生するか分かりません。
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このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。