性犯罪を犯したときの示談方法
本人が性犯罪を犯したと認めているなら、被害者との示談交渉は早めに始めることをおすすめします。
示談せずに事件を放置すれば、問題は大きくなっていきます。
性犯罪で示談交渉を行う場合に気を付けるポイントは多く、示談交渉自体が難しいケースもあるので注意が必要です。
今回は、性犯罪ではなぜ示談が大切なのか、示談交渉で失敗しないための注意点や性犯罪の種類ごとの示談方法の例について、詳しくご紹介していきます。
目次
1 性犯罪で示談が大切な理由とは
性犯罪を犯したら、一刻も早く示談交渉を行うべきです。
なぜ、性犯罪では示談が大切なのかは明確な理由があります。
(1) 不起訴を得る可能性があるから
2017年の法改正で,強制わいせつ罪は親告罪ではなくなりました。
つまり、被害者側が警察に告訴をしてもしなくても,罪に問われることに変わりはありません。
しかし,示談が無意味になったという意味ではありません。
性犯罪を行ったことを被疑者が認めている場合,犯罪の嫌疑は十分にあるものの訴追するほどではないという起訴猶予を得ることが出来れば,裁判で罪に問われることはないからです。
起訴をして,罪に問うかどうかを決めるのは検察官です。
起訴猶予にするかどうかは,犯罪の情状や,被疑者の態度など様々な事情を勘案します。
このとき,被害者と示談交渉が済んでいるかが大きく関係してきます。
(2) 裁判にも影響するから
示談が成立しても刑事裁判で罪に問われる可能性はあります。
性犯罪の場合、被害者は当然ながら加害者に対して強い怒りを感じていることが多く、慰謝料と厳罰を望む傾向は高いです。
示談が成立して慰謝料を支払ったから有罪にならないとは言えません。
しかし、示談が成立していれば反省していることが評価されて、裁判に良い影響が出る可能性は高いです。
懲役刑になるところが罰金刑で済んだり、実刑判決になるところが執行猶予付きになったりするなど、示談の事実が裁判に影響することは十分に考えられます。
2 性犯罪の示談交渉で失敗しないために
性犯罪を犯してしまい、何とか示談で解決したいなら気を付けるポイントがあります。
示談交渉の注意点を把握しておきましょう。
(1) しっかり反省する
犯罪を起こした以上、犯した罪を償い反省することは人として当然です。
示談を成立させるために反省することは重要とは言え、示談を有利に進めたいから反省するのではありません。
自分の罪を軽くしたい、告訴を取り下げてほしい、示談金を安く抑えたいという気持ちが透けて見えれば、示談交渉は上手くいかないと肝に銘じましょう。
被害者に対する心からの謝罪の念を込めて反省してください。
(2) 相手の話を聞く
示談は相手との交渉なので、一方的に謝罪し、許しを請うことで自分の要求を通す場ではありません。
被害者の言い分、要求をしっかりと受け止めましょう。
(3) 事前の準備は重要
目安となる示談金の事例なども存在するとは言え、実際には交渉によって示談内容が決まります。
事前に示談金の相場を確認するだけでなく、自分が払える限界の金額や被害者の考えていること、示談成立後のことなどを想定して戦略を練る必要があります。
高額な示談金を支払えば示談の成功の可能性が上がりますが,今後の人生を踏まえて考えるべきです。
金銭的に余裕がないあまりに,再び罪を犯すことの無いようにしましょう。
無策のまま、相手の言いなりになって示談交渉を行うことは避けてください。
また,示談の成立は,きちんと書面に残しましょう。
(4) 弁護士のサポートを受ける
そもそも,加害者が被害者を知ることは,非常に困難です。
性犯罪の被害者は,加害者に連絡先を知られたくないと考えるのが自然です。捜査機関も,許可なく被害者の連絡先を加害者に教えることは絶対にありません。
もっとも,法律の専門家である弁護士は,被害者の連絡先を知ることが出来ます。
連絡手段がない以上,示談を提案することもできませんから,弁護士に依頼を行いましょう。
仮に連絡先をしていたとしても,当事者同士での示談交渉はおすすめしません。
特に、性犯罪の示談交渉では被害者の怒りは強く、許せないという感情から交渉がまとまらない事例が多いです。
示談交渉では相手側の情報をもとに戦略を立てることが大切なのに、加害者が被害者を知ることが難しい点からも、当事者同士の示談交渉は難しいと言えるでしょう。
どこに交渉の余地があるのかを把握して、適切な示談交渉を行っていくためにも必ず弁護士のサポートを受けてください。
性犯罪の加害者になったら、示談交渉は弁護士に依頼して確実に交渉をしましょう。
(5) 示談が困難な場合もある
性被害の被害者が複数いる場合などは示談交渉が難しくなります。
複数の相手と示談交渉を進めるには、時間も労力も必要です。
また、性犯罪のように被害者を心身ともに大きく傷つける犯罪の場合は、示談金の額は高額となるため、トラブルに発展しやすい傾向があります。
100万円以上の示談金交渉を性犯罪の当事者間で行うことは難しいでしょう。
示談が失敗してから他の手を打っていると後手にまわってしまい、状況が悪化しかねません。
もし、示談が困難なら、スピードを重視しながら示談以外の方法も同時進行で進めないとならないでしょう。
3 痴漢の性犯罪を犯してしまった場合の示談方法
性犯罪の事例として、満員電車の中や暗い夜道など、痴漢をしてしまったケースの示談方法がどうなっているかを見ていきます。
(1) 痴漢の示談金相場50万円〜100万円
基本的に示談の金額は加害者と被害者の交渉で決まるため、明確な金額は決まっていません。
目安としては、不同意わいせつ(旧強制わいせつ)罪に該当する痴漢行為で50~150万円が示談金の相場となっています。
(2) 痴漢の示談タイミングは?
痴漢行為が明るみになっているなら、可能な限り早く示談交渉を行いましょう。
しかし、示談の最初のステップでは、被害者と連絡を取り面談して示談交渉を始めなければなりません。
警察などの捜査機関は加害者に対して被害者の情報を明かすことはなく、連絡を取りたくても連絡先が分からないというケースは多いです。
そのため、一刻も早く示談交渉を始めるためにも、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
示談交渉のプロである弁護士にサポートを依頼すれば、被害者との交渉も示談書の作成もスムーズに進めてくれるので安心です。
4 盗撮の示談方法
自転車置き場や階段、エスカレーターや電車の車内などで盗撮をしてしまった場合の示談についても確認してみましょう。
(1) 盗撮の示談金相場は?
盗撮の慰謝料は基本的には10~50万円が相場です。
被害者が10代以下など低年齢のケースや、被害の大きさ,同じ被害者につきまとったケースなどでは示談金が高額になりやすいです。
また、加害者の社会的地位が高い場合や収入・資産の額が高い場合なども慰謝料は高額になる傾向です。
適正な額の慰謝料で示談を成立させたい場合は、性犯罪に詳しい実績がある弁護士のサポートを受けましょう。
2023年7月13日、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(性的姿態撮影等処罰法)」が施行されました。
この法律は,今まで主に迷惑防止法条例で規制されていた盗撮を,撮影罪として規定し,全国一律に取り締まる目的で制定されたものです。
この法律の制定を受けて,各地域の迷惑防止条例が改正されるなど,厳罰化の動きがあるので,従来の示談金よりも高額になる可能性があります。
適正な額の慰謝料で示談を成立させたい場合は、性犯罪に詳しい実績がある弁護士のサポートを受けましょう。
参考:盗撮など迷惑防止条例違反や撮影罪に関する相談なら弁護士へ
(2) 告訴前の示談を目指す
盗撮したことが発覚すると、被害者は警察に被害届を出したり、罪に問いたい場合は告訴をしたりするでしょう。
告訴され、警察が捜査を始めれば逮捕される可能性は高いです。
可能な限り早く、被害者が警察に被害届や告訴状を提出する前に示談交渉をスタートすることをおすすめします。
きちんと謝罪し、慰謝料を支払うことで被害届や告訴状を出さない約束もできます。
(3) 起訴までに示談が成立させる
被害届や告訴状を被害者が提出するまでに示談交渉が間に合わなかった場合も、起訴までの示談成立を目指してください。
逮捕後は警察の捜査が進み、起訴や処罰が必要かどうかの判断が行われます。
起訴されれば刑事裁判となり、刑事裁判になれば有罪になる確率は高いです。
そのため、逮捕された後でも起訴される前に示談が成立するように動きましょう。
示談が成立していると、検察側が処罰は不要と判断して不起訴処分になる可能性もあります。
ぜひ、示談交渉の際は被害者から処罰を望みませんという意見書を貰っておきましょう。
ちなみに、盗撮で逮捕されれば身柄は当然ながら警察の留置所にて拘束されます。
しかも、逮捕されている場合は23日以内に和解しないと起訴されて前科がつく可能性が高まります。
だからこそ、逮捕後の示談交渉には弁護士への依頼が不可欠と言えるでしょう。
5 最後に|性犯罪を犯した場合の示談交渉はスピードが重要
性犯罪では被害者との交渉自体が難しく、連絡先を知ることも面会に応じてもらうことも困難となります。
さらに、被害者の感情への配慮、適正な示談金の設定など、解決すべき問題は山積みです。
逮捕されれば和解までのタイムリミットもあり、ますます示談交渉のスピードが重要となっていきます。
だからこそ、性犯罪を犯した場合は示談交渉のプロである弁護士のサポートが必要です。
性犯罪、刑事事件の事案が得意で経験豊富な弁護士に相談し、早期解決を図ってもらいましょう。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。