容疑を否認し続けると、どうなる? - 刑事事件に強い大阪の弁護士法人ロイヤーズハイ

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容疑を否認し続けると、どうなる?

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容疑を否認し続けた場合、その後被疑者にはどのような結果が待っているのでしょうか。
この記事では、容疑を否認し続けた場合に想定されることを、犯行が事実の場合と、犯行が事実でない場合にわけてそれぞれ解説します。
また、取り調べへの対応方法についてもご説明しますので、合わせて参考にしてみてください。

 

1 容疑を否認し続けるとどうなるのか?

 

⑴犯行が事実の場合

結論からお伝えすると、犯行が事実であり証拠がある程度出揃っている場合は容疑を否認し続けて状況が良くなることはありません。

具体的には、次の3つのデメリットが想定されます。

①身柄拘束が長引く

②情状が悪くなる

③示談交渉が遅れることも

 

①身柄拘束が長引く

具体的な証拠が揃っているにもかかわらず被疑者が容疑を否認する場合、被疑者が反省をしていないと判断される可能性があります。被疑者が反省をしていない場合、証拠隠滅や逃亡の恐れがあるため、さらに身柄を拘束しておくために勾留請求がされる可能性があります。

 

勾留申請が認められた場合は、原則10日間(最大20日間)の身柄拘束がなされます。事件にもよりますが、仮に容疑を認めていた場合は身柄拘束を伴わない在宅事件に切り替えられたり、手続きが簡易である略式起訴扱いになったりすることが考えられます。
在宅事件や略式起訴の場合は勾留された場合よりも身柄拘束の期間が短くなるため、身柄拘束による日常生活への影響を小さくできます。

 

②情状が悪くなる

犯行が事実であるにも関わらず容疑を否認すると、反省していないと判断されます。刑事罰を下す目的は加害者に反省を促したり、再犯を防止したりすることでもあります。反省をしていないことは加害者にとって悪い情状になり得るでしょう。

反省をしていなければ検察が起訴をする可能性が高まりますし、裁判になった際も悪質と判断されれば罪が重くなることも考えられます。

 

③示談交渉が遅れることも

被害者と示談交渉をして許しを得ることで、犯罪の程度にもよりますが不起訴を得やすくなります。そのため、刑事事件では被害者との示談交渉をすぐに行うべきなのですが、加害者が容疑を否認している場合は被害者の許しを得るのは難しくなります。

 

上記でお伝えしたように、犯罪を犯した事実があり、なおかつ証拠がある程度で揃っている場合は、容疑を否認し続けると身柄拘束が長引く上、示談交渉も始められないためデメリットが多くなります。

関連記事:刑事事件で容疑を否認し続けるとどうなる?または黙秘を続けるとどうなる

 

⑵犯行が事実でない場合

一方で、犯罪を犯していない場合は容疑を否認し続けるのが正しい対応になります。身柄拘束が長期化するリスクはあるものの、虚偽の自白をしてしまえば何もしていないのに前科がついてしまう恐れがあります。

 

①犯行が事実でないなら一貫して否認を続けるべき

取り調べでの証言内容は供述調書にまとめられ、後の裁判などで証拠として使用されます。そのため、不利な証拠を残さないためにも犯罪を犯していないのであれば一貫して容疑を否認するべきです。

 

②「認めれば楽になれる」に騙されない

取り調べの際に、捜査員から次のようなことを言われる場合があります。

「今罪を認めたら軽い罪で済む」

「罪を認めたら釈放される」

「略式起訴で済む」

 

確かに容疑を認めれば在宅事件になり、苦しい取り調べから解放される可能性があります。釈放されれば学校や職場にも戻れますし、家族にも会えます。苦しい取り調べに心が折れてしまった結果、本当はやっていないけれど自白をしようと考えるのは無理もないことかもしれません。

 

しかし、罪を認めて自白し、略式起訴で罰金刑になった場合はその後前科者として生きていくことになります。確かに取り調べで被疑者が受ける苦痛や不安は軽いものではありませんが、それでも目先の誘惑に屈してしまえば一生前科がつきまとうことになります。否認事件の場合は、取り調べに屈することなく気力を保てるかどうかが重要になってきます。

 

2 取り調べへの対応方法

ここでは、取り調べへの対応方法について、犯行が事実である場合とそうでない場合についてそれぞれ解説します。なお、実際に事件が起きている場合は弁護士と接見をした上で取り調べへの対応を検討するべきです。事件の状況によって正しい対応の仕方が変わるためです。以下はあくまで一般論とお考えください。

 

⑴犯行が事実である場合の取り調べへの対応方法

 

①証拠が揃っている場合は容疑を否認し続けない

上でお伝えしたように、犯行の事実があり証拠が揃っている場合は容疑を否認し続けるメリットがないので、やったことに関しては素直に自白するのがベターです。

 

②証拠が揃っていない場合は弁護士に対応方法を相談する

犯行の事実があるものの証拠が不十分な場合は慎重に対応を検討するべきです。捜査をはじめた段階では十分な証拠が出揃っていないケースもあり、このまま証拠が出てこなければ嫌疑不十分で不起訴になることも考えられます。

 

ただし証拠が見つかるかどうかは事件によって様々ですので、証拠が見つかることが予想される場合に容疑を否認してしまうと、後々不利な情状になりかねません。このような場合は特に弁護士に取り調べへの対応を相談するのが賢明です。

 

③やっていないことは認めない

自白をする際は、実際にやったことだけを認めましょう。似たような手口の事件が起きていた場合など、警察に余罪を追及されることがあります。必要以上に重い刑罰が下されないよう、やっていないことは認めないようにしましょう。

 

④嘘をつかない

実際に犯罪を認めながら、取り調べに対して嘘をついたとしても、何らかの罪に問われることはありません。
刑法104条証拠偽造罪や刑法169条偽証罪は、容疑者が取調べ中に嘘をついた場合について規定しているものではありません。

 

しかし、当然に不利益を被ります。取り調べの際に、取調官は被疑者の供述内容を元に供述調書を作成します。
供述調書の内容を確認し、問題がない場合は署名押印を求められます。

取調べ中に嘘をつき、その内容を記載した供述調書が作成され、署名押印をした場合、後でその嘘を覆す証拠が提出されれば、その供述調書をもとに、「嘘をついていた被告人は信用できない」との主張を検察側にされてしまう恐れがあります。

引用:刑事訴訟法 328条

 

⑵犯行が事実でない場合の取り調べへの対応方法

 

①黙秘権を行使しつつ弁護士に刑事弁護を依頼する

被疑者には黙秘権が認められており、不本意な供述を避けることが可能です。しかし、黙秘をしているだけでは問題は解決しません。
黙秘をしつつも、弁護士に取り調べへの対応について助言をもらったり、刑事弁護を依頼したりすることによって初めて事件の解決を目指せます。

 

②自白調書を作らせない

否認事件で特に重要なのは、自白調書を作らせないということです。取り調べの際に、取調官は被疑者の供述内容を元に供述調書を作成します。供述調書の内容を確認し、問題がない場合は署名押印を求められます。

署名押印をしてしまうと供述調書は証拠として有効になるため、必ず内容を確認し、事実と異なる記載があった場合は何度でも修正を求める必要があります。

 

③取り調べの証拠を残す

犯行の証拠を得るために、違法または不当な捜査がなされることがあります。違法な捜査によって得られた証拠は証拠としての力を持たないため、刑事弁護をする際は捜査の違法性を指摘することがあります。

 

取り調べで自白を得るために、暴言や脅しなどを受けた際は被疑者ノートにその証拠を残しておきましょう。
被疑者ノートとは、被疑者が取り調べの内容などを記録するためのノートです。
しかし、身柄拘束をされている被疑者が被疑者ノートを手に入れる術はありません。
日弁連のページから『被疑者ノート』を印刷し、被疑者に差し入れる必要があります。

 

関連記事:被疑者ノートの効果的な活用法

関連記事:取り調べの実態とコツ、有利に進めるための3つのポイント

 

3 まとめ

基本的に、否認事件の場合や証拠が不十分な認め事件の場合は容疑を否認し続けるのが有効なケースがあります。とはいえ、単純に否認や黙秘を続けていても被疑者にとって有利な情状が得られるわけではありません。ご家族が逮捕された場合などは、すぐに弁護士に刑事弁護を依頼しましょう。

 

関連記事:刑事事件で容疑を否認し続けるとどうなる?または黙秘を続けるとどうなる

このコラムの監修者

  • 田中今日太弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

    田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録

    弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。

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