被疑者ノートの効果的な活用法
1 はじめに
当事務所に寄せられたご質問にお答えしています。
テレビのドキュメンタリー番組で「被疑者ノート」というものがあることを知りました。
被疑者ノートとは何ですか?どのようにして使うものなのでしょうか? |
逮捕・勾留された被疑者が弁護士を雇ったとき、弁護士から「被疑者ノート」という書き込み式のノートが渡されます。
これは弁護士が、被疑者の弁護活動を行う上で大変重要な資料となります。
ここでは、身柄を拘束された被疑者が使用する被疑者ノートについて詳しく説明します。
2 被疑者ノートとは
日本弁護士連合会が発行している被疑者ノートは、逮捕・勾留された被疑者が取調べの様子を詳しく書き込めるノートです。
警察や検察による違法・不当な取調べをけん制し、えん罪を生まれないためにつくられましたが、
被害者の記憶を整理し、弁護士が弁護活動をする上で資料として活用するといった役割も果たします。
被疑者ノートを通じて警察や検察の取調べの状況を詳しく把握できるので、
暴行されたり脅迫を受けたりといった不当な取調べを受けた場合は、弁護士を通じて警察署長や検察官に抗議できます。
3 どんなことが書いてあるか
被疑者ノートには、刑事手続きの流れや、取調べの心構えや、ノートへの書き込み方などが書かれています。
特に、取調べの心構えでは「取調官の作文を許さない」あるいは「間違っている供述調書を訂正してもらえる」など、
警察が教えてくれない取調べでの被疑者の権利を詳しく説明しています。被疑者ノートをよく読んで、取調べに応じる際は慎重になることです。
また、被疑者が書き込むページには日付、取調べの時間、取調官の名前、取調べの時に受けた質問や取調官の態度や、
自分自身の健康状態まで、取調べの内容を細かく記録できます。すべての項目にもれなく記入する必要はありませんが、わかる範囲でできるだけ正確に記入しておきます。
4 被疑者ノートをうまく活用する方法
初めて警察に身柄を拘束された人は、頭が混乱していて今の自分の状況を客観的に把握するのは難しいものです。
被疑者ノートはそのような方のために、今後の刑事手続きや流れについて平易な言葉で説明しています。
もし警察に身柄を拘束されたときは、まずは取調べに応じるための「心の準備」として、被疑者ノートをよく読むことです。
警察や検察による取調べが続き、精神的に疲弊していても被疑者ノートの「取調べの心得」を読むだけで「自分には弁護士がついている」という安心感をえられるはずです。
被疑者が書き込みをするページには、起訴された際の公判に備えて記録に残してほしい内容があらかじめ整理されています。
アンケートに答える気持ちでありのままを書き込みます。取調べが終わった後、すみやかに被疑者ノートに記入し、あまり時間を空けないようにすることが大切です。
被疑者ノートは後日、弁護士に返却し、弁護活動の際に役立ててもらいます。どのような記述内容が裁判で役に立つかわからないので、
覚えていることや思い出したこと、弁護士に知ってほしいことなど、些細なことでもかまわないので記入しておきます。
なお、被疑者ノートの入手方法は、接見に来た弁護士に差し入れてもらうだけです。
なお、逮捕されなくても、被疑者ノートの原本はインターネット上で誰でも閲覧可能で、PDFでダウンロードもできます。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。