サイバーパトロールの強化、児童ポルノ(児ポ)単純所持、または削除済みデータが見つかっても罪になる?
児童ポルノ単純所持の罰則が2015年に適用され、警察によるサイバーパトロールが強化されるようになりました(参考:児童ポルノ所持、摘発前にサイバーパトロールへ警察庁|朝日新聞デジタル)。
最近では某漫画家も摘発され、「持っているだけなら大丈夫」とは言えない状況になってきました。
この記事では、児童ポルノ関係の刑罰についてご説明したうえで、単純所持での検挙件数の推移や事例、単純所持が発覚するきっかけなどについてお伝えします。
目次
1 児童ポルノに関して罪に問われる行為とその罰則
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護の第7条にて、児童ポルノに関して罪に問われる行為と、その罰則が定められています。
要約すると…
・所持:1年以下の懲役または100万円以下の罰金
・提供:3年以下の懲役または300万円以下の罰金 ・製造:3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
不特定多数への提供・公然陳列5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金。または併科
なお製造は、児童に裸の写真を取らせるなどした場合に、公然陳列はネット上など不特定多数が見られる場所に公開した場合などに成立します。
単純所持が最も軽い罪となっていますが、所持するだけでなく製造や公然陳列までしてしまうと罪がより重くなってしまいます。
2 児童ポルノの検挙件数と、逮捕された事例
児童ポルノで罪に問われる行為について確認したうえで、具体的な検挙件数や、事例について見ていきましょう。
⑴児童ポルノの検挙件数の推移
児童ポルノ事件での検挙は右肩上がりに増えており、平成29年の検挙件数は製造事犯が1,414件、提供・公然陳列事犯が798件、所持等事犯が201件となっています。
一見所持等事犯で検挙される可能性は少なく見えますが、平成30年には393件の検挙件数となっており、取締りがより厳しくなっている様子がうかがえます。
⑵児童ポルノの逮捕事例
①児童ポルノ製造での逮捕事例
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②児童ポルノ提供での逮捕事例
- 兵庫県に住む27歳が児童ポルノ提供で逮捕された事例。
ツイッターで知り合った男性3名に、少女のわいせつ動画を7,500円で提供したとされており、北海道警のサイバーパトロールによって発覚しました。
参照:児童ポルノ提供疑いで逮捕兵庫の男、北海道警|産経新聞
- 兵庫県に住む27歳が児童ポルノ提供で逮捕された事例。
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③児童ポルノ単純所持での逮捕事例
- 児童ポルノ単純所持の疑いで、茨城に住む男性2名が書類送検されました。
両名は、パソコンに18歳未満の児童の裸の画像を3つ保存していたようです。
参照:児童ポルノ単純所持容疑の男2人を書類送検茨城県内初
- 児童ポルノ単純所持の疑いで、茨城に住む男性2名が書類送検されました。
3 児童ポルノ単純所持にあたらないケース
ここでは、児童ポルノの単純所持にあたらないケースについて解説していきます。
⑴児童ポルノを見ただけである
児童ポルノを見ただけで逮捕される、ということはありません。
ネット上などにある児童ポルノをダウンロードすることではじめて所持をしたとみなされます。
また、児童ポルノが添付されたメールを受け取ってしまった、というケースの場合も、所持にはなりません。
ダウンロードした画像を削除した場合、ゴミ箱の中にデータが残っていれば閲覧が可能なので所持をしていることになります。
ゴミ箱にあるデータを削除した場合でも、当該データが復元できるような状態だった場合は、所持をしているとされる恐れもあります。
なお、データを削除する行為が証拠隠滅とみなされれば逮捕の要件を満たすことになるため削除さえすれば安心ということにはなりません。
参考:ケータイ(スマホ)に児童ポルノ画像(児ポ画像)をダウンロード~逮捕されるのか?
⑵性的な目的で所持していたわけではない
児童ポルノの単純所持が成立するためには、自身の性的好奇心を満たそうとする意思が必要です。
例えば父親が入浴する娘を撮影した動画を持っていたとしても、性的な目的でないのであれば、単純所持にはなりません。
ただし、虐待をしていたりわいせつ行為をしていたりした場合などはその限りではなく、家族であれば児童ポルノ所持にならないというわけではありません。
⑶所有していたデータが二次元のものである
児童の画像や動画がアニメやマンガなど、二次元のものだった場合は単純所持にはなりません。
とはいえ、性犯罪は厳罰化する動きが進んでいますので、二次元の児童ポルノに関しても、今後取り締まりをされるようになることもあり得るかもしれません。
4 児童ポルノ単純所持が発覚するきっかけ
では、どのようなきっかけで児童ポルノの所持が発覚するのでしょうか。
ここでは、そのきっかけをいくつかご紹介します。
⑴サイバーパトロール
上でもお伝えしたように、2015年以降児童ポルノのサイバーパトロールが強化されています。
警察がネット上で児童ポルノをやりとりしている形跡を発見した場合、関係者を特定するために捜査を始めることがあります。
参考:サイバーパトロールの強化、児童ポルノ(児ポ)単純所持、または削除済みデータが見つかっても罪になる?
⑵被害者による通報
SNSなどで児童に裸の画像を送らせた場合は児童ポルノ製造の罪に問われる恐れがあります。
児童や不審に思った親が警察に通報することをきっかけに捜査が始まり、身元が特定されることがあります。
⑶違法サイトや児童ポルノ販売者の摘発
違法サイトや販売者が摘発されると、行動ログや顧客のリストを警察が押収します。
これをきっかけに、当該サイトや販売者経由で児童ポルノを入手した人たちが芋づる式に検挙されることがあります(参照:児童ポルノDVD購入の疑い約870人を書類送検)。
⑷別の犯罪や職務質問をきっかけに
援助交際や盗撮など、別の犯罪で検挙されてスマホやパソコンを押収されると、児童ポルノのデータを保存していたことが発覚します。
5 児童ポルノで逮捕されたら、弁護士に刑事弁護を依頼しましょう
児童ポルノで逮捕・書類送検されたら、弁護士への依頼をおすすめします。
近年児童ポルノを厳しく取り締まる動きが進んでいますが、悪質性が低いと判断されれば不起訴や罰金刑などで済む場合もあり得ます。
仮に不起訴を得られて前科がつかなかったとしても、実名報道をされてしまうと『児童ポルノ愛好者』というレッテルを貼られかねません。
そうなってしまうと、社会復帰をするのが困難になるのは目に見えています。
弁護士への依頼後は、迅速に接見を行い早期の釈放や不起訴などを目指します。
長期間の身柄拘束を避けるためにも、できるだけ早めにご相談ください。
6 まとめ
今回は、児童ポルノ関連で罪に問われる行為とその刑罰をお伝えした上で、単純接触による検挙がどの程度増えているのか、どのような経緯で所持が発覚するのか、といったポイントについてお伝えしてきました。
児童ポルノ所持が発覚する経緯には様々なものがありますし、データを消せばいいという問題でもないので、安易に児童ポルノを入手するのは危険です。
児童ポルノは性癖の問題でもあるので、ご自身の性癖があまりにも逸脱しているようであれば、専門のクリニックなどへの通院も検討してみるといいかもしれません。
もし逮捕されてしまった場合は、できるだけすぐに弁護士に刑事弁護を依頼しましょう。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。