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体液をかける行為は何罪に問われる?前科はつく?弁護士が解説!

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体液をかける行為は何罪に問われる?前科はつく?弁護士が解説!

電車内や公道で,被害者が体液をかけられたというニュースを目にしたことがある人もいるでしょう。いたずらの目的のものあれば,ストーカーや性的な意図をもって行われることもあります。

今回のコラムでは,体液をかける行為がどんな罪に当たるのか?について解説します。

1 体液をかける行為で逮捕されるケースと問われる刑事罰は?

⑴器物損壊罪

(器物損壊等)

第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

「損壊」とは,物の効用を害する一切の行為を言います。さらに,心理的に効用を害することも含まれます。

体液をかけられた服や持ち物は,たとえ故障せず,クリーニングによってきれいになっても「もう二度と使いたくない」という気持ちになるのが自然です。

よって,物に体液をかける行為は損壊に当たります。

量刑は,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料です。

科料とは1,000円以上10,000円未満の罰金刑を言います。

参考:器物損壊(他人の物を損壊・傷害)の場合、初犯、示談交渉については弁護士に相談

 

⑵暴行罪

(暴行)

第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

暴行とは,人に向けた有形力の行使を言います。怪我をさせる程度や,人を畏怖させる程度でなくとも,暴行罪は成立します。

過去の判例では,人に塩を振り返る行為が暴行罪に当たると判断されています。

よって,人に体液をかける行為は,暴行罪が成立する可能性があります。

量刑は,2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料びあたります。

拘留とは,一日以上三十日未満,刑事施設に収容される自由刑です。

 

⑶不同意わいせつ罪

(不同意わいせつ)

第百七十六条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。

一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。

二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。

三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。

四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。

五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。

六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。

七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。

八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。

3 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

 

①不同意とは

令和5年に改正刑法が施行され,強制わいせつ罪が,不同意わいせつ罪に変更されました。

強制わいせつ罪は,その要件に「暴行,脅迫による犯行抑圧」が規定されていたために,突然体液をかける行為が同罪に問われることはありませんでした。

もっとも,不同意わいせつ罪は,以下のような状況で同意しない意思を形成することが出来ない状況に乗じたわいせつ行為を規定しています。

・同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。

・予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。

電車などで突然体液をかけられた被害者は,意思形成のいとまがなかったと言えますし,突然のことにフリーズすることは自然な反応です。よって,不同意性の要件を満たすといえるでしょう。

 

②「わいせつとは」

では,体液をかける行為は「わいせつな行為」といえるでしょうか。

昭和45年の最高裁の判例は,わいせつな行為と言えるためには,その行為がその行為が犯人の性欲を刺戟興奮させまたは満足させるという性的意図のもとに行なわれることを要すると判断しました。

この判例に基づけば,体液をかけるという行為が,犯人の性的な意図に基づかなければ,わいせつな行為とは言えないとも思います。

しかし,そののちの平成29年11月29日 大法廷判決は,次のように判示しました。

もっとも,刑法176条にいうわいせつな行為と評価されるべき行為の中には,強姦罪に連なる行為のように,行為そのものが持つ性的性質が明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等如何にかかわらず当然に性的な意味があると認められるため,直ちにわいせつな行為と評価できる行為がある一方,行為そのものが持つ性的性質が不明確で,当該行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ当該行為に性的な意味があるかどうかが評価し難いような行為もある。その上,同条の法定刑の重さに照らすと,性的な意味を帯びているとみられる行為の全てが同条にいうわいせつな行為として処罰に値すると評価すべきものではない。そ して,いかなる行為に性的な意味があり,同条による処罰に値する行為とみるべきかは,規範的評価として,その時代の性的な被害に係る犯罪に対する社会の一般的な受け止め方を考慮しつつ客観的に判断されるべき事柄であると考えられる。そうすると,刑法176条にいうわいせつな行為に当たるか否かの判断を行うためには,行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で,事案によっては,当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し,社会通念に照らし,その行為に性的な意味があるといえるか否かや,その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ないことになる。したがって,そのような個別具体的な事情の一つとして,行為者の目的等の主観的事情を判断要素として考慮すべき場合があり得ることは否定し難い。しかし,そのような場合があるとしても,故意以外の行為者の性的意図を一律に強制わいせつ罪の成立要件とすることは相当でなく,昭和45年判例の解釈は変更されるべきである。

つまり裁判所は,体液をかける行為がわいせつな行為と言えるかどうか,様々な事情を考慮して判断します。

仮に,いたずら目的であっても,異性に精液をかけるなどの性的な意味合いが強いとされる行為であれば,わいせつな行為と判断される可能性があります。

 

③量刑

量刑は,六月以上十年以下の拘禁刑と非常に重いです。

拘禁とは,懲役刑と禁錮刑を統合した新しい自由刑です。更生を重視するという点で,過去の自由刑とは異なります。2025年6月に導入される予定です。

 

⑷公然わいせつ罪

(公然わいせつ)

第百七十四条 公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

体液をかける際に性器を露出したケースでは,公然わいせつ罪の罪に問われる可能性があります。

量刑は,六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料です。

参考:公然わいせつ

 

2 体液をかけ逮捕された後はどうなる?前科はつくのか?

⑴刑事事件の流れ

体液をかけた被疑者は,痴漢のようにその場で現行犯逮捕されるか,被害届が出されて後日逮捕されることもあり得るでしょう。

一般的に刑事事件は,逮捕されてから48時間以内に捜査官が検察官に送致します。その後24時間以内に,検察官が勾留請求を行うかどうかを決めます。津陽と判断されれば,裁判所に勾留の請求が行われ,その後の身体拘束が最長20日間続くことになります。

もし,逮捕されることなく取調べのあとに自宅に帰されたとしても,在宅事件として捜査が進み,数ヶ月後に突然検察官に呼び出され,起訴される可能性もあります。

 

⑵前科はつくのか?

検察官が起訴をして,刑事裁判で有罪判決が下されれば,前科が付きます。

刑事裁判は99,9%有罪になると言われています。

また,執行猶予がついて実刑判決を免れたとしても,前科が付くことに変わりはありません。

よって,前科を付けたくないのであれば,不起訴処分を目指しましょう。

参考:前科をつけたくない

 

3 体液をかける行為で逮捕されたら弁護士に依頼した方が良い理由

⑴示談の成功率を上げるため

刑事弁護活動の中で,示談は非常に重要な意味を持ちます。

示談とは,被害者に金銭を支払い,話し合いの結果刑事告訴を取り下げたり,謝罪を受け入れることを合意する手続きです。

しかし,捜査機関は被害者の連絡先を漏らすことはないので,加害者が被害者に直接コンタクトを取ることは,原則として不可能です。仮に直接話し合いをしたとしても,当事者同士では感情的になってしまったり,被害者に言われるがまま不当な請求を受け入れる可能性もあります。

そこで,弁護士が間に入ることで,冷静な話し合いを実現し,示談を成立させます。

 

⑵取調べのアドバイスを行うため

逮捕されて捜査機関に連行されたら,そのまま取調べが行われます。

この取調べをもとに供述調書が作成され,裁判で証拠として扱われます。よって,反省していないと受け取られるような供述をしたり,黙秘を続けたりすれば,後々不利な証拠となってしまいます。

そこで,弁護士が,取調べに対するアドバイスを行います。

通常,逮捕直後は接見禁止措置が取られ,家族であっても面会が禁じられますが,弁護士と話すことは被疑者の人権として守られています。

 

⑶不起訴を獲得するため

起訴するかどうかを判断するのは検察官ですが,不起訴にも種類があります。

犯罪の嫌疑がなかった,嫌疑はあるが立証が不十分だった,嫌疑があり立証も可能だが他の事情から訴追は不要であると判断した,以上三つのケースが挙げられます。

弁護士は,仮に被疑者が罪を認めていたとしても,情状面で有利な点を主張し,訴追の必要がないことを主張します。

 

4 まとめ

今回のコラムでは,体液をかける行為がどんな罪に当たるのか?について解説を行いました。

仮にいたずらの目的であったとしても,犯罪であることに他なりません。有罪となれば,前科が付くことになります。

体液をかけて逮捕されてしまった方や,その家族の方は,いち早く弁護士に相談しましょう。

法律事務所ロイヤーズ・ハイは,刑事事件の実績のある弁護士が在籍しています。また,夜間・休日の対応も可能です。

法律事務所ロイヤーズ・ハイにぜひご相談ください。

このコラムの監修者

  • 田中今日太弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

    田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録

    弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。

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