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「たかが飲み会」から始まる公務員の贈収賄リスク

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「たかが飲み会」から始まる公務員の贈収賄リスク

国および地方公共団体で働く人たちを総称して,公務員といいます。公務員は,市役所,警察,消防署,学校の先生,自衛官等,様々な分野で日本社会を支えています。

このような公務員は,私腹を肥やすために賄賂をもらい,業務において公平さを欠くということはあってはなりません。刑法は,このような行為を犯罪として規定しています。もっとも,どのような行為が賄賂の収受になるのでしょう?今回のコラムでは,公務員と賄賂にまつわる犯罪について解説していきます。

 

 

1 公務員と賄賂に関連する8つの罪とは?定義と刑罰

公務員と賄賂に関連する犯罪は,以下の通りです。

賄賂を受け取ったのはだれか?収賄の際に現役の公務員かどうか?賄賂によって不正な行為をしたか?賄賂は不正な行為の前か後か,で成立する犯罪が異なります。

 

⑴単純収賄罪(刑法197条1項前段)

(収賄、受託収賄及び事前収賄)

第百九十七条 公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。

単純収賄罪は,公務員が,その職務に関して,賄賂を受け取ったり,要求したり,もしくは約束した場合に成立する犯罪を言います。実際に受け取った場合だけでなく,約束しただけで犯罪が成立することに注意しましょう。収賄罪は,賄賂を受け取った公務員にのみ成立します。

量刑は,懲役5年以下です。

 

⑵受託収賄罪(刑法197条1項後段)

この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。

上記の単純収賄の際に,公務員が職務を依頼され,それを承諾して賄賂を受け取った場合には,さらに重い罪になります。こちらも収賄罪ですから,受け取った公務員にのみ成立する犯罪です。

量刑は,7年以下の懲役です。もちろん,受託収賄罪も,要求や約束しただけで成立する可能性があります。

 

⑶事前収賄罪(197条2項)

2 公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、五年以下の懲役に処する。

単純収賄罪と受託収賄罪が,公務員が収賄することの罪である一方で,事前収賄罪は,公務員になろうとする者が収賄した時に成立する犯罪です。

もっとも,賄賂をもらったとしても,その後公務員にならなければ犯罪にはなりません。

量刑は,5年以下です。

 

⑷第三者供賄罪(197条の2)

(第三者供賄)

第百九十七条の二 公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。

賄賂を受け取った相手が,公務員本人ではなくとも,請託を受けて第三者に賄賂を受け取らせたり,要求したり。約束をすれば,第三者供賄罪となります。

この時,公務員本人に犯罪が成立します。

量刑は,5年以下の懲役です。

 

⑸加重収賄罪(197条の3 1項2項)

第百九十七条の三 公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、一年以上の有期懲役に処する。

2 公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。

公務員が,単純収賄罪,受託収賄罪,事前収賄罪,第三者供賄罪を行い,その結果不正な行為をし,又は相当の行為をしなければ,加重収賄罪となります,量刑は,1年以上20年以下の有期懲役というかなり重い罪です。

このとき,事前に不正行為をおこない,その後で対価として収賄した時も犯罪が成立します。

 

⑹事後収賄罪(197条の3 3項)

3 公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。

公務員であったものが,過去に依頼を受けて不正な行為を行い,その対価として,退職後に賄賂を受け取った時は,事後収賄罪となります。量刑は5年以下の懲役です。

 

⑺あっせん収賄罪

(あっせん収賄)

第百九十七条の四 公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。

公務員が,依頼を受けて,他の公務員に不正行為を行うようにあっ旋した見返りとして収賄をすれば,あっせん収賄罪となります。

量刑は5年以下の懲役です。

 

⑻贈賄罪

(贈賄)

第百九十八条 第百九十七条から第百九十七条の四までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、三年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。

⑴~⑺まではあくまで賄賂を受けた公務員の罪でしたが,198条は,公務員に賄賂を贈った者に成立する罪です。

量刑は,3年以下の懲役又は250万円以下の罰金です。

 

2 公務員に飲み代を奢ったら賄賂!?そもそも賄賂とは?

⑴賄賂とは

そもそも賄賂とは, 賄賂は職務行為に関するものであれば足り、個々の職務行為と賄賂との間に対価的関係のあることを必要とするものではありません。( 最高裁判所第三小法廷決定 昭和33年9月30日)

つまり,賄賂はかなり広い意味で捉えられており,その公務員の利益たりうるものは,賄賂にあたる可能性があると考えるべきです。

 

⑵贈賄を疑われる行為とは

具体的に賄賂を疑われる行為は,以下の通りです。

たかが飲み会の代金を支払っただけ,とはいっても,そのお店が単なる飲み会というにはふさわしくなかったり,飲食代が不当に高かったり,コンパニオンを呼んでいたような場合には,社交儀礼の範囲を超えているとして,問題になる可能性があります。

 

①金銭を渡す

代金を肩代わりすることも含まれます。

 

②財物を渡す

接待,商品券や物品を贈る行為は賄賂を疑われます。お世話になっているからと,お歳暮・お中元を贈る行為も,その程度や時期によっては問題になるかもしれません。

 

③地位,職業をあっ旋する

公務員を退職した後の職業をあっせん,裏口入学,ゴルフクラブの会員権も含まれます。

 

④人脈のあっ旋

異性の性的なサービスも含まれます。

 

⑶「職務に関し」とは

単純収賄罪,受託収賄罪,事前収賄罪,第三者収賄罪の条文には,「職務に関し」という文言があります。

職務とは,その公務員の一般的な職務権限に満たしていればよく,具体的な職務権限の範囲外であっても問題はないとされています。

警察官の収賄が問題になった事件で,判例では,被告人の警察官が,担当ではない別の地域の事件の捜査に関与していないにも関わらず,警察官は同庁警察官の犯罪捜査に関する職務権限は,同庁の管轄区域である東京都の全域に及ぶと解されることなどに照らすと,職務に関していると判断しています。(最決平成17年3月11日)

 

3 贈収賄罪は示談ができない!?重すぎる代償とは?

⑴贈収賄罪は,示談の対象外

贈収賄罪は公務員の職務の公正とそれに対する社会一般の信頼が,保護法益であると解されています。

賄賂によって,国民の生活を支える公務の公平性・公正性が歪められる危険が発生してしまうと、国民は国や地方公共団体の機能を信頼できなくなるでしょう。国民の信頼が失われた結果,国の機能を上手く果たすことが出来ず,行政・立法・司法は破綻してしまいます。

贈収賄罪は,示談の対象外であるとされているのは,保護法益が回復が困難であるからです。

示談とは,加害者が被害者に一定の金銭を支払うことで,被害者が告訴を取り下げたり,刑事的処罰を求めないことで合意したりすることを言います。

贈収賄罪は,被害者は国であり国民ですから,示談が不可能であることは明らかです。

 

⑵賄賂は没収され,職も失う可能性が高い

(没収及び追徴)

第百九十七条の五 犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。

また,収賄罪で得た賄賂は,没収又は同等の金額を追徴できる旨を,刑法第197条の5が定めています。

さらに,収賄に関わった公務員は,懲戒免職を受ける可能性があります。

賄賂を贈った会社員も,社会的な批判は免れないでしょう。個人の判断だとしても,会社の信用を損ねる危険性は大いにあります。

参考:公務員が逮捕されたらその後どうなる?会社員との違いも解説

 

4 贈収賄罪でお悩みの方は是非弁護士にご相談ください

会社から接待を受けてしまったが,これが賄賂なのか不安である。

公務員の飲み会代を負担してしまった,贈賄と受け取られるかもしれない…

このような不安をお持ちの方,既に逮捕されている方は,是非弁護士にご相談ください。

贈収賄罪は,実際に賄賂があったのかどうかが非常に重要な争点です。

賄賂だと見なされかねない行為があったとしても,故意があるのかどうかも問題になります。

贈収賄罪を否認するのであれば,これらの争点について取調べでどのように供述するか,弁護士と相談することをお勧めします。

法律事務所ロイヤーズハイは,夜間・休日の対応も可能な法律事務所です。贈収賄罪を含む刑事事件に強い弁護士が在籍しています。

贈収賄罪でお悩みの方は,ぜひ法律事務所ロイヤーズハイにお任せください。

このコラムの監修者

  • 田中今日太弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

    田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録

    弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。

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