公務員が逮捕されたらその後どうなる?会社員との違いも解説 | 大阪難波(なんば)・堺の刑事事件に強い弁護士|弁護士法人法律事務所ロイヤーズハイ

公務員が逮捕されたらその後どうなる?会社員との違いも解説

公務員が逮捕されたらその後どうなる?会社員との違いも解説

 

とある駅のホームで30代男性が警察に逮捕されました。女子高生に対し痴漢を行った容疑です。

この男性には妻子がいて,仕事をクビになることだけは免れたいと思っている様子ですが,彼の仕事は市役所の職員でした。

この場合,この男性は懲戒免職処分となってしまうのでしょうか?実名報道を免れることはできないのでしょうか?

今回の記事は,公務員が罪を犯して逮捕された場合,失職するのか,実名報道されてしまうのかを,民間の会社に勤めていた場合と比較して解説します。

 

 

1 公務員が逮捕された場合のその後の流れ

公務員が逮捕された後の流れは,一般的な職業の人と変わりません。

容疑者が逮捕されてから48時間以内に,警察は,取り調べの結果や,容疑者の態度,被害者との示談の状況を鑑みて,容疑者を検察官に送致するかどうかを決めます。

検察官に送致されたら,そこからさらに取り調べが行われ,24時間以内に,裁判官に勾留請求を行うか否か判断されます。

それまでの捜査への協力の姿勢や,反省の態度,被害者との示談の有無,逃亡可能性などが考慮されます。

裁判官が検察官の勾留請求を許可すると,そこから10日間,最大で20日間もの間拘束されてしまいます。

勾留期間までの捜査結果をもって,検察官は被疑者を起訴するかどうか決めます。

起訴されたら,日本の刑事裁判は99%以上が有罪判決を下されます。

初犯や,量刑が軽い罪であれば,裁判官から刑を言い渡される際に,執行猶予がつくこともあります。

参考:執行猶予とは?逮捕されても前科にならない方法について

参考:前科を付けたくない

2 公務員が逮捕された場合、その後受ける処分とは

 では,公務員は,逮捕されたら,必ず懲戒処分を受けるのでしょうか。

(1)国家公務員の場合

国家公務員の資格や人事について定めた国家公務員法は,以下の様に定めています。

欠格条項)

第三十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則で定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。

一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者

二 懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者

三 人事院の人事官又は事務総長の職にあつて、第百九条から第百十二条までに規定する罪を犯し、刑に処せられた者

四 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者

 

(欠格による失職)

第七十六条 職員が第三十八条各号(第二号を除く。)のいずれかに該当するに至つたときは、人事院規則で定める場合を除くほか、当然失職する。

 

(本人の意に反する休職の場合)

第七十九条 職員が、左の各号の一に該当する場合又は人事院規則で定めるその他の場合においては、その意に反して、これを休職することができる。

 心身の故障のため、長期の休養を要する場合

 刑事事件に関し起訴された場合

 

(懲戒の場合)

第八十二条  職員が、次の各号のいずれかに該当する場合においては、これに対し懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。

一  この法律若しくは国家公務員倫理法 又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項 の規定に基づく訓令及び同条第四項 の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合

二  職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合

三  国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

「禁錮以上の刑」とは,禁錮刑 懲役刑 死刑を指します。

「刑事事件に関し起訴」とは,そのままの意味で,検察官が起訴決定を行うことです。

公務員が正式に起訴された場合,判決が確定するまでの間,休職させることを,起訴休職処分といいます。

つまり,国家公務員は,逮捕されただけでは直ちに休職・懲戒免職にあたるわけではなく,少なくとも起訴されないことが重要であることが分かります。

もっとも,第82条は,「国民全体の法人たるものにふさわしくない非行」があった場合に,免職,停職,減給,または戒告の処分を下すことが出来るとしています。

かなり抽象的な文言ですので,判例の判断を見てみましょう。

最高裁判所昭和52年12月20日判決

 

懲公務員に対する懲戒処分は、当該公務員に職務上の義務違反、その他、単なる労使関係の見地においてではなく、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務することをその本質的な内容とする勤務関係の見地において、公務員としてふさわしくない非行がある場合に、その責任を確認し、公務員関係の秩序を維持するため、科される制裁である。ところで、国公法は、同法所定の懲戒事由がある場合に、懲戒権者が、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をするときにいかなる処分を選択すべきかを決するについては、公正であるべきこと(七四条一項)を定め、 平等取扱いの原則(二七条)及び不利益取扱いの禁止(九八条三項)に違反しては ならないことを定めている以外に、具体的な基準を設けていない。したがつて、懲戒権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択すべきか、を決定することができるものと考えられる

 

今回の例に沿って考えると,痴漢行為は「国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務することをその本質的な内容とする勤務関係の見地において、公務員としてふさわしくない非行」に該当することは間違いないでしょう。

では,免職,停職,減給,または戒告の処分のうち,どの処分が下されるかについては,「懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮」とされています。

そこで,痴漢行為をした公務員は,捜査への協力の姿勢を見せることはもちろん,反省をして,被害者との示談交渉を終わらせること,刑事処分をできるだけ軽くすること等が求められます。

ほかにも,贖罪寄付を行うことも,免職を免れるための手段として考えられるでしょう

(2)地方公務員の場合

地方公務員の規定も,国家公務員と概ね変わりはありません。

禁錮以上の刑に処せられると,欠格となります。

また,刑事事件について起訴された職員は,起訴休職処分になります。

さらに,「全体の奉仕者たるにふさわしくない非行があった場合,免職,停職,減給又は戒告の処分が下されます。

(欠格条項)

第十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。

一 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者

二 当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者

三 人事委員会又は公平委員会の委員の職にあつて、第六十条から第六十三条までに規定する罪を犯し、刑に処せられた者

四 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者

 

(降任、免職、休職等)

第二十八条 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。

一 人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくない場合

二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合

三 前二号に規定する場合のほか、その職に必要な適格性を欠く場合

四 職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合

2 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを休職することができる。

一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合

二 刑事事件に関し起訴された場合

3 職員の意に反する降任、免職、休職及び降給の手続及び効果は、法律に特別の定めがある場合を除くほか、条例で定めなければならない。

4 職員は、第十六条各号(第二号を除く。)のいずれかに該当するに至つたときは、条例に特別の定めがある場合を除くほか、その職を失う。

 

(懲戒)

第二十九条 職員が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該職員に対し、懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。

一 この法律若しくは第五十七条に規定する特例を定めた法律又はこれらに基づく条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合

二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合

三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合

(3)国家公務員と地方公務員の実名報道について

公務員が罪を犯したとき,「実名報道されるのではないか」と心配になると思います。

実名報道がされるかどうかは,各報道機関の判断によります。

もっとも,報道機関の方も報道できる時間やスペースも限られていますから,公共性の高いニュースから扱っていくでしょう。

つまり,公共性の高い事件,具体的には,公務員の地位が高い他,事件の重大性,話題性等が考慮されて判断されます。

公務員の中でも,国家公務員や,警察官,消防士,自衛官のような職業であれば,国民の生活により密接に関係する職業であることから,公共性が高いと判断されて,実名報道に至る可能性が高くなります。

3 公務員と会社員との処分の違いについて

会社員の場合も,就業規則の処分理由に「犯罪行為を行った時」との記載があれば,起訴されて有罪の判決が下された場合,会社からの何らかの処分があると思われます。

もちろん,実刑判決であれば会社に出社することが出来ませんから,解雇となるでしょう。

実刑判決は免れたものの,執行猶予付きの懲役刑も,前科がつくことに変わりはありません。

もっとも警察は,逮捕した容疑者の勤め先に連絡する義務があるわけではありません。

捜査や犯人特定の為に,必要であれば連絡をします。

職場で盗撮をした,現行犯逮捕をされそうになったが逃走したようなケースであれば,職場へ連絡がいく可能性があります。

これらのケースでなくとも,実名報道がされるほか,逮捕された後に長期間の身体拘束が続けば,職場は無断欠勤となってしまいますから,理由を説明する必要があります。

そこで,逮捕されてしまったとしても,捜査への協力をアピールし,逃亡や証拠隠滅の恐れなどがないことを主張して釈放してもらうように働きかけましょう。

4 公務員が逮捕された場合の再就職の規定について

有罪判決となってしまい懲戒免職になってしまった場合,公務員の再就職は難しいのでしょうか。

そもそも,前述したように公務員は,禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者は欠格として扱われ,執行猶予期間または実刑判決であればその期間は公務員になることが出来ません。

その期間を終えた者,または罰金刑程度で済んだ者であれば,欠格ではないので公務員の再就職の可能性はあります。

前科の内容によっては,選考に大きく影響することが考えられます。

前科があることを黙って再就職を図る方もいるかもしれません。

実名報道されていれば,たとえ10年前でもインターネットで実名を検索するだけですぐに発覚してしまいます。

そもそも,履歴書には基本的に賞罰を記入する欄がありますから,賞罰欄がある場合には、基本的には記載しないといけません。

もし賞罰欄に記載をせず、後日前科が発覚した場合、再び解雇される可能性もあります。

5 まとめ

今回の記事では,公務員が逮捕された時のその後について解説しました。

公務員が懲戒免職を免れるには,不起訴処分になることが大切です。

不起訴処分を得るためには,早期から弁護活動を行うべきでしょう。

そこで,逮捕された,逮捕されるかもしれない,どちらのケースであっても,早急に弁護士に相談することをお勧めします。

早期から弁護士が対応することで,自首に同行したり,被害者との示談を進めたりすることが可能です。

特に,被害者との示談を行うには,弁護士の存在が必要不可欠であると思われます。

なぜなら,捜査機関は,加害者やその家族に被害者の連絡先を教えてくれるとは限りません。

仮に被害者が顔見知りであったとしても,加害者やその家族から直接コンタクトを取られることは,被害者にとってかなり抵抗があるでしょう。

そこで,弁護士が間に入り,法律の専門家として,被害者の方との示談を円滑に進めます。

刑事事件はいつどこで発生するか分かりません。

そこで,土日祝日の対応も可能で,大阪の主要地,難波・堺・岸和田や神戸にオフィスを構える法律事務所ロイヤーズハイにお任せください。

刑事事件の実績が豊富な弁護士が,できる限りのサポートを行います。

このコラムの監修者

  • 田中今日太弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

    田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)
    弁護士ドットコム登録

    弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。
    大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。
    お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。

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