前科一犯になると…将来や生活・仕事にはどう影響する?その後の人生終わるのか?
「前科一犯」という言葉は、法律に詳しくない人でも聞いたことがある言葉だと思います。
しかし、前科一犯になると、自分の将来や生活、仕事にどのような影響が出るかをご存じですか?今回は、前科一犯の定義や、前科が人生に及ぼす影響について解説します。
1 前科一犯とはどういう状態を指すのか?
前科一犯は、簡単に言うと過去に罪を犯して有罪判決をうけ、何らかの刑罰を受けた経験がある状態を指します。前科一犯は文字通り、過去に一度の有罪判決を受けている状態ですね。また、「前科者」とも呼びます。
当然のことですが、前科一犯(前科者)であっても、刑罰を受けて罪を償っていれば犯罪者ではありません。しかし、検察庁が管理している「前科調書」には、生涯にわたって前科が記録されます。
この前科調書は、一般の人間はアクセスできません。たとえば、民間の興信所や探偵も前科調書は照会できないのです。弁護士は照会が可能ですが、それは「前科の有無が重要な争点になっているとき」などに限定されます。
そのため、ごく普通に生活している限り、前科があることを知られることはないでしょう。ただし、前科一犯のデメリットはゼロではないのです。
2 前科一犯のデメリットは?
前科一犯のデメリットは、大きく3つに分類されます。
1.将来、別の犯罪に巻き込まれたとき、前科調書を調べられて検察や裁判官の心証が悪化する可能性 2.一定期間、特定の職業(医師、公務員、教職員、公認会計士など)の欠格事由になり、資格を得ることができない 3.親族の就職などに悪影響がでる可能性 |
ここで注目したいのは、2です。特定の職業では前科に対して非常に厳しい規定があり、就職や資格の取得が不可能になっています。
特に、「禁固以上の刑罰」を受けた場合は、注意が必要です。下記のような職業で制限を受けるからです。
・社会福祉士、介護福祉士…禁錮以上の刑をうけ、刑罰を受け終わってから2年間は資格を取得できない ・検察官や裁判官、弁護士、弁理士、教員など一部の国家資格…生涯、就くことができない ・金融業…明確に前科者を排除していないが、前科者には非常にシビアな傾向がある |
2以外はあくまでも可能性ですが、全く起こらないとも言い切れません。また、一般的に就職活動で使用する履歴書には「賞罰」を記載することがあります。最近では省略することも多いですが、企業によっては記載するよう指示されるかもしれません。このとき、「前科なし」と記載すると虚偽記載になるため、判断が難しいところです。
さらに、過去に重い罪を犯した経歴を隠して結婚すると、離婚の理由になることもあります。例えば、懲役刑のみが刑罰として設定されている強盗や殺人などです。
このように前科一犯は、普通の社会生活にはそれほど大きな影響がないものの、本人の目指す道や生き方を一部制限することは確かなのです。
3 犯罪者にならないように、その後の人生のために前科を回避しよう
すでに前科がついてしまっているのなら、仕方ありません。自分の過去を素直に受け入れ、それに従った人生を歩むしかありません。しかし、これから前科がつくかどうか…という瀬戸際であれば、迷わず回避するほうに動くべきでしょう。
勘違いしている人が多いのですが、「逮捕された=前科一犯」ではないのです。逮捕はあくまでも、罪が確定していない段階で、前科が付く状態ではありません。前科はあくまでも、「起訴され、有罪判決が確定した」段階で付くものです。
そのため、示談や反省文などによって起訴猶予処分(不起訴)を勝ち取れば、前科一犯は回避できます。
ただし、これは本人の努力だけでは非常に難しく、勾留中にさまざまな活動を代行してくれる弁護士の力があってこそ、成し得るもの。前科が付く可能性があるならば、ぜひとも弁護士にサポートを依頼し、前科一犯を回避しましょう。
その後の人生にとって、必ずや大きなプラスになるはずです。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。