刑事事件と民事事件の違い
1 はじめに
当事務所に寄せられたご質問にお答えしています。
刑事事件と民事事件はどう違うのですか?
刑事事件と民事事件、どちらも普段あまり意識せずに聞く言葉ですが、明確に違う点がいくつもあります。
ここでは両者の違いを詳しくご紹介します。
2 刑事事件は「国家が私人を訴える」
刑事事件において裁判に訴えることができるのは、国家資格を持つ検察官だけです。
刑法などの法律に基づいて死刑や懲役などの刑罰を被告人に与えるよう、裁判所に求めることができます。
訴えられる人は罪を犯した人に限定され、
裁判では「被告人」と呼ばれ、弁護士は「弁護人」として被告人の弁護活動を行います。
そして、刑事事件の争点は、主に「本当に犯行があったかどうか」と「どの程度の刑罰を科すべきか」の2点で、民事事件よりも限定的です。
3 民事事件は「私人が私人を訴える」
民事事件は、裁判所に訴えるのも訴えられるのも私人(個人・法人)です。
誰しもが訴えることができますし、訴えられる可能性があります。
民事では、訴える人が「原告」として、訴えられた人を「被告」となります。
刑事事件の「被告人」と、民事事件の「被告」では、呼び方は似ているため、民事裁判で「被告」と呼ばれて犯罪者のような扱いをされるという方もいますが、これは誤解です。
民事事件は、刑事事件のように罰則があるわけではなく、金銭トラブルや離婚、所有権の争い、損害賠償請求など、私人間のさまざまな争いについて審理されます。
また、刑事事件とは異なり、民事事件では裁判員制度は導入されておらず、裁判官だけが判決を下します。
なお、交通事故においては民事と刑事の両方で訴えられるケースもあります。
例えば、飲酒運転で人を死傷させてしまった場合、刑事事件では「危険運転致死傷罪」が適用され、民事では被害者の精神的苦痛を受けたことによる慰謝料を請求される可能性もあります。
4 私人が国を訴える行政事件もある
私人が国や地方自治体を訴える行政事件は、私人対国家の対等な立場で争うため民事事件に該当します。
例えば公共施設や道路の建設を反対する訴訟などがこれに該当します。
5 和解をするのが民事、和解しないのが刑事
民事事件は私人対私人の対等な争いで、たいていの場合は裁判所から「和解」をすすめられます。
そして実際に和解によって解決することの方が圧倒的に多いのが通常です。
和解できなければ最終的に裁判所の判断にゆだねることになります。
刑事事件の場合、被告人が無罪になっても和解することはまずありません。
そして、犯人として証拠が残されているなら、刑法で定める刑罰を受けなければなりません。
刑事事件と民事事件、どちらも裁判所で争うものですが、当事者の性質や争点、解決の方法は全く異なります。
いずれにしても裁判が絡む紛争には弁護士のサポートが不可欠です。経験豊富な弁護士が、紛争解決まで全力でサポートさせていただきますので、お気軽にご相談ください。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。