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児童買春で逮捕された場合

 

[児童ポルノ法]

(児童をめぐる性犯罪)

児童買春については、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(以下、「児童ポルノ法」といいます)によって規制されています。
従来から指摘されてきた日本人成人による海外児童買春ツアーだけではなく、我が国においても、昨今の通信システムの発達を背景にした性犯罪の多様化、被害者の低年齢化が大きな問題となってきていることから、平成11年から児童ポルノ法が制定され、平成26年に法改正も行われました。
この法律の目的は、児童の権利を擁護することにあります。
そのため、児童ポルノ法では、処罰規定だけでなく、児童買春、児童ポルノに係る行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置なども規定しています。
この法律における「児童」とは、18歳未満の者をいいます。

では、以下、児童買春、これに関連する青少年健全育成条例、強制わいせつ罪、強制性交罪について、事例と通して解説していきます。

事例①
30歳の男性Aは、16歳の女子高生Bに対し、Aの下半身を触ってくれれば、好きなカバンを買ってあげると約束して、自身の下半身を触らせた。

(児童買春)

「児童買春」とは、児童、児童に対する性行為等の周旋をした者、児童の保護者又は児童をその支配下においている者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、以下の行為をすることをいいます。

  • 性交もしくは性交類似行為をする
  • 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門、乳首)を触る
  • 児童に自己の性器等を触らせる

児童買春では、対価の約束をしていないこと、性行等が未遂であった場合には、犯罪は成立しません。
法定刑は、5年以下の懲役、または300万円以下の罰金です。

上記事例①において、Aは、16歳のBに対し、カバンを買ってあげる約束をして、Aの性器を触らせているから、児童に対し、性行為の対償の供与の約束をして、児童に自己の性器等を触らせたといえ、児童買春にあたります。

事例②
大阪在住の30歳男性Cは、SNS条で知り合った17歳の女子高生Dと真剣に交際するようになり、2人の間では、Dの高校卒業後に結婚しようとも話していた。
ところが、深夜2人がラブホテルから出てきたところを警察に見つかり事情聴取を受けた。事情を知るに至ったDの両親が非常に立腹しており、CとしてはDとの将来はもちろん、自らの刑事処罰の可能性が気になるところだ。

[青少年健全育成条例]

たとえ、金銭等の対価を支払わなかったとしても、各都道府県の青少年健全育成条例違反となる可能性もあります。
たとえば、大阪府の青少年健全育成条例第39条第2項は、「淫らな性行為」、つまり、専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて、当該青少年に対し性行為またはわいせつな行為を行った場合、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられます。

事例②において、真剣な交際における性行為が「淫らな」性行為に当たるのかが問題となります。
判例によりますと、「淫行」とは、誘惑や威迫、欺罔、困惑させるなど、青少年の心身の未成熟に乗じた不当な手段によって行う性交または性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない性交、または、性交類似行為をいいます。
この定義からすれば、結婚を前提にした真剣な交際は、相手が未成年者であっても「淫行」にはあたらないと考えられます。
しかし、単に「真剣だ」との一点張りでは、警察が納得するとは到底考えられません。性交渉に至る経緯や、両者間の付合いの態様等の諸事情を丁寧に説明していく必要があります。
具体的には交際期間、メールのやりとりの内容、性行為以外の交際状況、さらに重要なのが未成年者の保護者の同意についての資料を提出します。
事例②では、2人の交際についてDの保護者の同意はなかったものと考えられ、条例違反として有罪になるおそれがあります。
このような場合に有効なのが示談です。
示談の成立により被害届が取り下げられると、不起訴処分となる可能性があります。

事例③
Eは、常日頃かわいがっている近所の13歳の中学生Fの同意のもと、Fにキスをした。
また、ある日、Eは、公園で遊んでいる12歳のGをトイレに連れこみGの同意のもとキスをした。
別の日には、繁華街で知り合った自称15歳のHと、その同意のもとキスをした。しかし、実際にはHは12歳だった。

[強制わいせつ罪・強制性交罪]

「強制わいせつ」とは、暴行や脅迫といった手段を用いて、相手の抵抗が著しく困難な状況のもとで、わいせつな行為(無理やり抱き着いたり、キスをする行為)を行うことをいいます。
法定刑は、6か月以上10年未満の懲役刑です(刑法176条)。

「強制性交」とは、暴行や脅迫といった手段を用いて、相手の抵抗が著しく困難な状況のもとで、性行為等(性器を相手の性器・肛門・口腔に挿入する行為)を行うことをいいます。
法定刑は、5年以上20年以下の懲役刑です(刑法177条)。

13歳未満の児童を相手にわいせつ行為や性行為を行った場合には、手段として暴行や脅迫を用いなくても、強制わいせつ罪、強制性交罪ともに成立します。
また、たとえ相手の同意を得ていたとしても、13歳未満の場合はその同意に意味はなく、両罪はそれぞれ成立します。

事例⑤において、Eは、13歳のFの同意のもとキスをしていますので、Fに対しては、強制わいせつ罪は成立しません。
これに対して、Gに対しては、同意を得ていてもGは13歳未満なので、この同意は意味がなく、同罪が成立します。
さらに、強制わいせつ罪は故意犯です。
この「故意」とは確定的である必要はなく、未必的なものでよく、「13歳未満かもしれない」という認識で足ります。
故意の有無は客観的状況から推認されますので、当時の状況から疑いなくHを13歳以上と信じたのであれば、強制わいせつの故意はなく、犯罪は成立しません。

1.【捜査の開始】

一般的には、児童と一緒にホテルを出たところでの職務質問はもちろん、児童の親が被害届提出したときや児童が補導された際に、児童の携帯電話が調べられて、発覚し捜査が開始します。
最近ではインターネット、SNSでの情報掲載をきっかけに警察による「おとり補導」「サイバー補導」が行われ、捜査が開始される場合もあります。特に児童ポルノを販売・公開している業者が摘発された場合には、その顧客リストから芋づる式に発覚することが多く、犯行直後ではなく、半年後や1年以上経過した後に、突如検挙されることがあります。

2.【逮捕から送検まで】

逮捕された後、警察にて最長48時間、その後検察に事件が送致されて最大21日間にわたり身柄拘束された状態で検察官による取調べを受けます。
この勾留期間中に、検察は起訴あるいは不起訴するかの判断をします。
不起訴となった場合には、事件は検察限りで終了し、身柄は解放されます。不起訴処分は前科ではありませんが、捜査対象になったという前歴は残ります。

3.【起訴・裁判・判決】

起訴には略式起訴と公判請求があります。
「略式起訴」は、100万円以下の罰金・科料に相当する軽微な犯罪であること、被疑者に異議がないことが要件です。
略式起訴された場合は、検察庁で罰金を納付すれば、即時に釈放されます。
なお、略式手続きは前科として記録されます。

「公判請求」された場合は、保釈制度により身柄拘束から解放されることもありますが、そのためには保証金が必要です。
その後、公判手続きを経て判決の言い渡しがなされます。日本の刑事手続では起訴されると99,9%有罪となります。

4.【弁護士の役割】

[犯罪の成立を争う場合]

逮捕されたが、実際には児童売春等の事実がない等の場合、まず、早期の身柄解放を目指します。
また、取り調べについては、黙秘権の行使及びその効果、実際に身柄拘束中であれば頻繁に接見し、精神的なサポートを行うだけではなく、違法・不当な取り調べがなされていないか監視します。

[犯罪を認める場合]

逮捕から長期間身柄拘束されると、罪状が家族はもちろん会社や地域にまで知れわたり、その結果、失業や、引っ越し、さらには離婚にまでいたる可能性があります。実名報道されれば、社会的不利益は計り知れません。
このような不利益を少しでも軽減するには、できるだけ早期の身柄解放が実現できるかが重要となってきます。

(自首)

「自首」とは、捜査機関などに発覚する前に、自ら犯罪事実を申告することです。
自首が成立すると、刑法42条1項により、刑が減軽されることがあります。
また、自首によって、自ら反省し刑事処分に従うものと理解されれば、罪証隠滅や逃亡のおそれがないとして、逮捕・勾留を、さらには、反省の情や更生に向けた意欲が認められれば、不起訴処分や執行猶予処分を獲得できる可能性も高まります。
もっとも、容疑がすでにかけられている場合には、自ら進んで出頭しても自首にはなりません。
自首が成立するかどうかも含めて、弁護士に相談されるとよいでしょう。

(示談)

一般に、被害者との示談成立により被害者がもはや処罰を必要としないのであれば、不起訴処分の可能性が高まります。
しかし、児童買春等、未成年者が被害者となる性犯罪では、保護者の処罰感情は非常に強く、話し合いに応じてもらうことすら困難です。
そこで、第三者的立場にある弁護士が示談交渉にあたります。
また、児童ポルノ法の目的は、「児童の権利の擁護」であり、その内容は、個々の児童の性的自由のみならず、児童をとりまく健全な性的秩序も保護の対象としていると考えられます。
このため、被害者の被害が弁償されれば済むというわけにはいかず、他の犯罪と同様の示談成立の効果が得られない可能性もあります。
しかし、示談成立により、法が守ろうとしている利益は一部回復されたこと、示談を通じて被疑者が悔悛の情をもっていること等を、弁護士が、説得的に検察官や裁判官に働きかけていきます。

このコラムの監修者

  • 田中今日太弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

    田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)

    大阪府大阪狭山市出身。弁護士事務所ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。これまで3500人以上の法律相談に対応した豊富な経験をもとに迅速かつ適切な弁護活動を行う。

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