否認事件の刑事弁護は難しい - 刑事事件に強い大阪の弁護士法人ロイヤーズハイ

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否認事件の刑事弁護は難しい

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刑事事件には、犯行の容疑を認める『自白事件』と、犯行の容疑を否認して無実を主張する『否認事件』の2つがあります。
刑事裁判では推定無罪の原則というものがあり、犯行を犯した証拠がない限りは無罪として被告人を扱わなければなりません。

これは、罪のない人を過って裁かないようにという戒めでもあります。
しかし現実では、否認事件の場合は厳しい取り調べが続いたり、刑事弁護が難航する場合もあったりと『推定無罪』とは言っていられない厳しい状況に立たされることが少なくありません。

 

1 否認事件の刑事弁護が難しいといわれる理由

自白事件と比べた場合に、否認事件が難しいといわれる理由は次のとおりです。

⑴取り調べ厳しくなりやすいから

⑵長期化することを前提に考える必要があるから

⑶被害者との示談による不起訴獲得を目指せないから

⑷証拠集めや調査をする必要があるから

⑸保釈が認められにくいことがあるから

 

⑴取り調べ厳しくなりやすいから

否認事件では、長時間にわたる取り調べが何度も繰り返し長期間にわたって行われることがあります。
「推定無罪にも関わらず、なぜ否認事件では取り調べが厳しくなるのか?」と思う方もいるかもしれませんが、これは被疑者の自白は刑事裁判で有罪判決を下すための有力な証拠になるためです。

警察や検察にとっては、被疑者の自白が欲しいため、高圧的な態度で取り調べを行うことがあります。また中には、違法・不当な取り調べが行われることも。

違法・不当な取り調べとは例えば…

・黙秘権や弁護士を選任できることなどを伝えずに取り調べを行った

・弁護士との接見を制限して取り調べを行った

・「共犯者が自白した」「自白すれば不起訴になる」と嘘をついて自白させた

・徹夜で長時間取り調べを行った

・脅迫や拷問などを行い自白させた

 

上記のような違法・不当な方法で得られた証拠は、本来証拠としての力を持ちません。
刑事弁護を依頼している場合は、違法な捜査があったことを主張して被疑者の身柄解放や不起訴などを求めることができます。
後述する被疑者ノートに取り調べの内容を記録しておけば、違法な捜査が行われたことを弁護士が主張する際に証拠として使えます。

 

⑵長期化することを前提に考える必要があるから

検察が事件についてさらなる捜査が必要であると判断すると、原則10日間(最大20日間)の勾留という身柄拘束がなされます。
被疑者が犯行をしている以上、捜査機関は自白による証拠を得られません。
被疑者が自白をするような認め事件とは違い、証拠を得るために時間が必要になってきます。

そのため、結果的に勾留や勾留延長が行われ、身柄拘束が長期化することになります。
事件が長期化するため、被疑者は身柄拘束をされている間社会生活を送れません。
被疑者やそのご家族の方にとっては、気の休まらない日々が続くことになるでしょう。

 

⑶被害者との示談による不起訴獲得を目指せないから

捜査が終了し、釈放や前科回避を得るためには不起訴になる必要があります。
不起訴になる理由には、次の3つがあります。

・嫌疑なし:捜査の結果、被疑者の疑いが晴れるような場合

・嫌疑不十分:捜査の結果、被疑者の疑いは晴れてはいないものの、裁判で有罪を得るのは難しいような場合

・起訴猶予:証拠は十分だが、犯罪の重さや示談成立の有無などを鑑みて、あえて不起訴にする場合

 

①自白事件の場合は被疑者と和解をすることで不起訴を目指す選択肢がある

自白事件の場合は、③の選択肢を選ぶことが可能です。比較的軽微な事件では、被害者と示談交渉をして和解を得ることで、被害届や告訴を取り下げる旨の示談書を作成することが可能です。被害届や告訴が取り下げられれば、警察や検察による捜査が打ち切られ、不起訴になることが実務上は少なくありません。

 

②否認事件の場合は、嫌疑なしや嫌疑不十分を目指さなければならない

犯行を認めていない(犯していない)以上、被害者と示談交渉をする選択肢はなくなります。示談金は犯罪による損失の補填をするために支払うものなので、犯罪を認めていないのに示談金を支払うという論理は成立しません。

 

⑷証拠集めや調査をする必要があるから

嫌疑なしや嫌疑不十分を得るためには、例えば次のような弁護活動を行うことになります。

・捜査の違法性を主張する(違法な取り調べなど)

・犯罪を犯していない証拠を集める

 

前者については既に触れていますので、ここでは後者について補足します。否認事件の場合は、犯罪を否定するだけではなく、犯罪を犯していない証拠を揃える必要があります。

DNA鑑定、目撃者の証言、監視カメラなどの映像、アリバイの有無など、状況によって多岐にわたる証拠を収集します。

 

⑸保釈が認められにくいことがあるから

逮捕後の身柄拘束の目的は、被疑者が証拠隠滅や逃亡したりすることを防ぐことでもあります。
容疑を否認しているときは、証拠を隠滅しようとしていると裁判官に判断されるリスクがあるため、自白事件で逃亡や証拠隠滅の恐れがないような事案と比べると、保釈が認められにくいといえます。

 

2 否認事件で注意すること

否認事件で被疑者やそのご家族が心がけておきたいことについてお伝えします。

⑴黙秘さえしていればいいと思わない

⑵自白調書を書かせない

⑶違法・不当な取り調べの証拠を残しておく

⑷すぐに弁護士に接見の依頼をすること

 

⑴黙秘さえしていればいいと思わない

「被疑者には黙秘権があるので、取り調べに応じる必要はない」と思う人もいるかもしれません。
確かに、弁護士がくるまで不用意な発言を避けるという意味でこの解釈は正しいかもしれません。
しかし、黙秘をしているだけでは、犯行を否定する証拠を揃えられるわけではありません。
ただ待っているだけでは捜査が長引くだけです。黙秘権の行使は弁護士への依頼とセットで考えましょう。

 

⑵自白調書を書かせない

取り調べの際は、被疑者が供述した内容を聞いた警察や検察が供述調書を書きます。
このとき、真実とは異なる記載がされた場合は、修正をしてもらうように何度も伝える必要があります。
また、上でもお伝えしたように、厳しい取り調べに心が折れて自白をしてしまうと、罪を認めた証拠として調書を使われてしまいます。

 

⑶違法・不当な取り調べの証拠を残しておく

取り調べが違法・不当であった場合は、供述調書に証拠としての力がなくなることがあります。
違法・不当な取り調べをされた証拠として、被疑者ノートに取り調べの様子を記録しておくようにしましょう。

被疑者ノートとは、日本弁護士連合会が取り調べの内容を被疑者が記録できるようにするために作成したノートのことです。

被疑者ノートは以下の日弁連のページからダウンロードできます。

『被疑者ノートをダウンロードする』

関連記事:被疑者ノートの効果的な活用法

 

⑷すぐに弁護士に接見の依頼をすること

否認事件に限りませんが、上記で見てきた通り刑事事件で不起訴を得るのは簡単ではありません。
事態を少しでも良くするためにも、ご家族が逮捕されているのであれば、すぐに弁護士に接見を依頼しましょう。
逮捕後はすぐに取り調べが行われるので、対応が遅れるほど被疑者側にとっての状況は悪くなります。

 

3 まとめ

今回は、否認事件がなぜ難しいのか、被疑者やそのご家族の方は何に注意するべきなのか、といった点について解説してきました。
無実の罪で逮捕された方にとってはなんとも理不尽なことかと思います。
逮捕後はすぐに刑事弁護を依頼し、1日も早い釈放を目指しましょう。

 

このコラムの監修者

  • 田中今日太弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

    田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録

    弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。

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