【実例】コンビニコーヒーの押し間違えで逮捕!詐欺罪・窃盗罪に当たる場合を弁護士解説
最近コンビニエンスストアでも気軽に淹れたてのコーヒーを楽しむことが出来るようになりました。
大手のコンビニでは,客がカップを購入し,その後自ら購入したメニューをコーヒーメーカーで選択して,コーヒーを受け取るという仕組みになっています。
例えば,本来購入したコーヒーではなく,より高価なカフェオレを選択してしまったら,罪に問われるのでしょうか?今回は,コーヒーメーカーの押し間違が犯罪になるのか?実際に逮捕されたケースを解説していきます。
目次
1 コンビニコーヒーの押し間違い、故意なら詐欺罪・窃盗罪等の恐れ
⑴ 注文と異なるコーヒーを意図的に選択したケース
① カップを購入する時点で既に異なるコーヒーを選択するつもりだったケース:詐欺罪
(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。 (略) |
詐欺罪とは,人を騙して,騙された人の意思で財物を処分させることで成立します。
①人を欺くこと
②相手が嘘を信じること ③相手が,嘘を信じた結果,自分の意志で財物を交付・処分すること |
以上の三つが要件です。
注文とは異なる高価なコーヒーを手に入れるつもりで,安価なコーヒーを注文した時,店員に対し「安価なコーヒーを購入します」と嘘をついて欺いていることになります。店員は,注文者の言葉を信じて会計を行い,コーヒーメーカーの使用を許しているので,高価なコーヒーという財物を交付していることになります。
①②③のすべてを満たすので,詐欺罪が成立する可能性があります。
② カップを購入する時点では同じコーヒーを選択するつもりだったケース:窃盗罪
(窃盗)
第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する |
カップを購入する時点では,同じメニューを選択するつもりであったのなら,店員に嘘をついていないので,詐欺罪は成立しません。
しかし,安価なコーヒーを購入したにもかかわらず,高価なコーヒーを得ることは,店員の意に反する占有移転にあたり,窃取に該当します。
したがって,コーヒーメーカーでのメニュー選択の時点で,わざと間違えて高価なコーヒーを得ようと思ったのなら,窃盗罪が成立します。
⑵ 注文と異なるメニューを誤って選択したケース
① 誤りに気づいたがそのまま持ち帰ったケース:遺失物横領罪
(遺失物等横領)
第二百五十四条 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。 |
異なるメニューを選択してしまい,その時点で誤ったことに気が付いたが,何も言わずそのままコンビニを出てきてしまったのなら,遺失物横領罪が成立する可能性があります。
本来の占有者であるコンビニから,客へとコーヒーの占有が移った時点で,「このまま手に入れてしまおう」と思ったのなら,他人の占有を離れた他人の物をそのまま横領したことになるので注意しましょう。
その場で申告し,差額を支払うのが良いでしょう。
② 誤りに気付かなかったケース:犯罪なし
故意に高価なコーヒーを手に入れようとしたのではなく,誤って選択し,そのまま気が付かなかったのなら,犯罪は成立しません。詐欺罪や窃盗罪は,過失によって成立する罪は存在しないからです。もちろん,お店側が代金を請求する権利がなくなるわけではありませんから,民事上の責任は負います。
2 コンビニコーヒーのメニューを間違えて注いだことを店員に指摘されたら?
コンビニによっては,客がコーヒーメーカーのどのメニューを選択したか,把握することが出来るようです。
では,コーヒーメーカーのメニューの選択を誤っていることを店員に指摘され,逮捕されるかもしれないと思って暴行・脅迫を行った場合,どのような罪が成立するのでしょうか。
⑴ カップを購入する時点で既に異なるコーヒーを選択するつもりだったケース:詐欺罪
詐欺罪が成立するケースで,「間違えていますよ」と指摘され,差額を支払いたくないと思って暴行・脅迫を行った場合,二項強盗罪が成立する可能性があります。 この時,店員に対して,暴行・脅迫を行うことで,コンビニのコーヒーの差額を支払わないという財産上の不法の利益を得ています。
(強盗)
第二百三十六条 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。 2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする |
詐欺罪と,二項強盗の関係は,包括一罪になるという判例(代表的なものに,最高裁決定昭和61年11月18日)がありますから,このケースでも同様に処罰されると思われます。包括一罪とは,複数の罪名に該当する行為を一つの罪で扱うと言うものです。
⑵ カップを購入する時点では同じコーヒーを選択するつもりだったケース:窃盗罪
窃盗罪が,成立するケースで,「間違えていますよ」と指摘され,逮捕されたくないと思って暴行・脅迫を行った場合,窃盗罪ではなく,事後強盗罪が成立する可能性があります。
(事後強盗)
第二百三十八条 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。 |
事後強盗罪は,暴行・脅迫の相手が店員に限らず,他の客に向けて行った場合にも成立します。
⑶ 誤って違うコーヒーを選択したケース
誤って違うコーヒーを選択し,そのことを店員に指摘され,逆行して暴行・脅迫を行えば,二項強盗罪が成立する可能性があります。間違えているはずがないと思い込んで,「私を盗人呼ばわりするのか!訴えるぞ!!!」などという脅迫を店員にしてしまったら,犯罪に当たる可能性があります。
3 コンビニコーヒーのメニューを間違えて注いだら逮捕される?
⑴ 実際に逮捕されたケース
兵庫県高砂市の中学校の校長がコンビニのコーヒーを購入したメニューより多く注ぐ不正を働いたとして懲戒免職となった。庫県教育委員会によると、校長は去年12月、昼休みにコンビニでセルフ式のレギュラーサイズのコーヒーを購入したにもかかわらず、ラージサイズの量を注いでいたことが発覚。校長は県内のコンビニ2店舗で、去年6月から12月にかけて同様の行為を7回繰り返していたという。 |
福岡県内のコンビニでコーヒー(110円)を注文した客が、カフェラテ(190円)を注いだとして、万引きの疑いで逮捕されたと報じられた。九州朝日放送の報道によれば、これまでも「コーヒーを購入後にカフェラテのボタンを押していたのを店員が目撃」したことが複数回あり、店側が警戒する中での犯行だったという。(Yahooニュースより) |
⑵ どんな時に逮捕される可能性があるのか?
実際に逮捕されたケースのほとんどは,コーヒーメーカーの不正を短期間に複数回繰り返しているケースです。先述の通り,犯罪には故意が必要です。一度間違えただけであれば,ただの過失であると判断され見逃されるかもしれませんが,複数回繰り返すのであれば,間違いではなく意図的に不正をしていると考えられます。
もっとも,一度きりであっても間違いを指摘した店員に暴行・脅迫をおこなうような悪質なケースでは,その場で警察を呼ばれ,逮捕されることも十分にあり得ます。
今のコンビニは,監視カメラが付いていることがほとんどです。身元はすぐにばれると考えるべきでしょう。
⑶ コーヒーメーカーの不正で逮捕されたら弁護士に相談しましょう
① 取調べのアドバイスを受けられる
コーヒーメーカーの取調べで逮捕されたら,取調べは長引いてしまうかもしれません。
複数回繰り返していたような場合には,いつどこで不正を行ったのか全て調べる必要があるからです。また,ほかのコンビニでも同様の行為がなかったか,当然に疑われるでしょう。
また,先述した通り,どのような犯罪が該当するかは,どの時点で罪を犯そうと考えたのか,つまり主観が問題になります。捜査機関側は故意があった証拠を探そうと,厳しい取り調べを行うかもしれません。なんども同じ趣旨の質問をされ続け,何を言ったか自分でもわからなくなり,矛盾するような供述,不利になるような供述を行ってしまう可能性があります。
弁護士に依頼をすることで,取り調べで何を話すべきかをアドバイスを受けましょう。
② 被害者(コンビニオーナー)と示談活動を行う
示談とは,犯罪の被害者に対し,示談金を支払う等の条件を合意し,被害届を取り下げてもらう形で解決を図ることを言います。
被害者はコンビニオーナーですから,第三者である弁護士に依頼をして,円滑に示談を成立させましょう。
被害額が少なく,前科もなければ,示談成立によって不起訴になる可能性は十分にあります。
4 まとめ
今回のコラムでは,コーヒーメーカーの押し間違いは犯罪に問われる可能性があるのか?逮捕されるのかについて,解説しました。
被害額が少ないからと言っても,犯罪は犯罪です。一度きりならやってもいいと言うわけではありません。うっかり間違えてしまったら,その場で申告するべきでしょう。
もし,コーヒーメーカーの不正で逮捕されてしまったり,まだ逮捕はされていないが複数回繰り返してしまっているなら,すぐに弁護士に相談しましょう。
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このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。