児童買春罪で逮捕される前に自首するべき?
18歳未満の児童であっても簡単にSNSやインターネットに触れる機会がある今日では、児童が犯罪の被害者となる危険が高まっています。
お小遣いを渡してわいせつな行為を行った相手が、18歳未満だった!
この場合、逮捕されてしまうのでしょうか?
どんな罪が成立するのか、罪を軽くすることはできないかについて、この記事で詳しく紹介します。
目次
1 児童買春するとどんな罪に問われるのか
対価として金銭や物品を提供し、性行為それに準ずる行為を行うことは、「売春」にあたります。
この売春の相手が18歳未満だった場合、児童買春にあたり、以下のような犯罪が成立する可能性があります。
(1) 児童買春罪(児童ポルノ禁止法)
(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)
第二条 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。 第四条 児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。 |
執行猶予がつくには、処罰が、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しであることが必要です。(刑法二五条)
児童買春の罪が五年以下の懲役または三百万円以下の罰金であることを考えると、執行猶予がつかず、実刑判決が下されてしまうことも十分あり得ます。
出来るだけ減軽を受けられるように、情状が大切になってきます。
(2) 強制わいせつ罪(刑法176条)・強制性交等罪(刑法177条)
(刑法) 第百七十六条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。 第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。 |
被害者が13歳未満であれば、たとえ同意のうえでも強制わいせつ罪が成立します。18歳だと思って性行為に及んだとしても、この罪が成立してしまいます。
また、援助交際のつもりでお金を渡したのに児童が嫌がったため、脅したり暴力をふるって性交したような場合、強性交罪が成立します。
強制わいせつ罪は6カ月以上10年以下の懲役、強制性交罪は3年以上20年以下の懲役が罰です。
こちらも量刑の重さから、実行判決が十分考えられます。
(3) 出会い系サイト規制法違反
第六条 何人も、インターネット異性紹介事業を利用して、次に掲げる行為をしてはならない。 一 児童を性交等の相手方となるように誘引すること。 二 人(児童を除く。第五号において同じ。)を児童との性交等の相手方となるように誘引すること。 三 対償を供与することを示して、児童を異性交際(性交等を除く。次号において同じ。)の相手方となるように誘引すること。 四 対償を受けることを示して、人を児童との異性交際の相手方となるように誘引すること。 五 前各号に掲げるもののほか、児童を異性交際の相手方となるように誘引し、又は人を児童との異性交際の相手方となるように誘引すること。 第三十三条 第六条(第五号を除く。)の規定に違反した者は、百万円以下の罰金に処する。 |
三項にある通り、出会い系サイトで18歳未満の児童に対し、援助交際をもちかけるような投稿を行った段階で違法です。
100万円以下の罰金刑のみの犯罪ではありますが、性行為を行わなくても、書き込んだだけで犯罪が成立してしまうので、注意が必要です。
2 児童買春で突然の逮捕
児童買春は、秘密裏に行われることが多いので、捜査も難しく、摘発に繋がらないのではなかと考えるかもしれません。
しかし、児童買春が簡単に行えてしまう現在では、児童買春は社会問題となっています。その結果、取り締まりやネットパトロールが強化されているので、SNSやウェブサイトでのログから児童買春が明るみにでることもあり得ます。
また被害者である児童が周囲の大人に相談したり、補導されたりした際に、犯罪事実が発覚し、逮捕へとつながりかねません。
突然自宅へ警察が来れば、家族や周囲の人に逮捕がバレてしまいますし、身柄拘束されることになれば職場にも伝わってしまいます。
3 自首するとどうなる?
自首とは、捜査機関に対して、犯罪の発覚前に自己の犯罪事実を申告し、その処分を委ねることを言います。
自首することで次のようなメリットが得られます。
(1)逃亡の恐れが少ないとして、在宅捜査や起訴後の釈放を得られやすくなる。 (2)被害者家族に反省の意が伝わりやすく、示談が成功する可能性が上がる。 (3)自首が認められると、任意的に減軽することができると法律で定められている(刑法42条1項)。 (4)加害者が反省しており、また被害者との示談の結果によっては不起訴を得られることがある。 |
繰返しになりますが、児童買春は初犯で実行判決がなされてもおかしくない重い犯罪です。更に、示談の相手方は被害者の家族ですから、処罰感情が強く示談が難航する可能性も高いでしょう。
このような犯罪の場合、反省の気持ちが捜査機関や被害者側に伝わることがとても大切です。自首は、その手段としてとても有効です。
4 弁護士の自首同行
自首をしたいが勇気が出ないから、弁護士についてきて欲しい。
取調べで何を話せばいいか分からない。
いざ自首を決意しても、一人で警察署へ行き、自首する旨を伝えるのは大変勇気が必要なことです。
また、児童買春は、その被害者の年齢、行為に至るまでの被害者とのやりとり、行為の態様によって、成立する罪が変わってきます。
自分が行った犯罪事実を正確に捜査官に伝え、その通りの供述調書を作成してもらうことはとても難しいです。
そこで、弁護士に自首したい旨を伝えて頂ければ、犯罪事実について整理をし、何を話すべきかを事前に打ち合わせすることが出来ます。
この打ち合わせの中で、自首後の取調べのアドバイスも行うことができます。
さらに、自首当日に事件の管轄のある警察署に自首を行うことを伝え、本人に同行します。
家族や職場にバレることがないように、身柄拘束の必要性がないことを主張できますし、今後の連絡について弁護士を通すようにお願いすることもできます。
示談に関しても、被害者の連絡先は、報復防止と個人情報保護の観点から、加害者にはまず教えてもらえません。
ですので、被害者の方と示談をすることができるのは、弁護士だけなのです。
自首に同行することで、比較的早期に示談交渉を開始することができます。
5 おわりに
自首は、犯罪事実が発覚する前でないと成立しません。児童買春の事実が明るみに出て、犯人が誰かまで捜査が進んだ段階で捜査機関に名乗り出ても、自首したことにはなりません。
したがって、出来るだけ早く名乗り出ることが大切です。
児童買春の罪で一番重い強制わいせつ罪の公訴時効は、7年です。
逮捕されてしまうのではないかと怯えて日々を過ごすより、自首を選択して、更生への一歩を踏み出すことをおすすめします。
弊所では児童買春事件をはじめとして、刑事事件を多く取り扱っており、刑事事件に関する交渉、裁判について経験及び知識の豊富な弁護士が多数在籍しております。
児童買春事件の自首でお悩みの方は、大阪市・難波(なんば)・堺市の法律事務所ロイヤーズ・ハイにぜひともご相談くださいませ。
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このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。