前科と前歴はどう違う?生活や将来への影響も解説!
テレビや映画の刑事ものなどでよく、「前科一犯」という言葉を耳にするかと思います。この前科とは、「逮捕されて有罪判決を受けたことがある」ということです。しかし、前科とよく似た言葉に「前歴」があります。こちらはそれほどメジャーではないものの、トラブルに巻き込まれた方にとっては重要な言葉です。では、前科と前歴はどう違うのでしょうか。普段の生活や将来への影響も含めて解説します。
1 前科と前歴の違いとは?
この2つの違いを端的に述べると、以下のようになります。
・前科…なんらかの罪を犯して逮捕され、さらに起訴されたのちに刑事裁判で有罪判決(罰金刑を含む)を受けた場合 ・前歴…逮捕されたものの起訴されずに済んだ場合 |
逮捕されたという事実は同じですが、「起訴⇒有罪判決」という過程を経ているかどうかで違いがあります。例えば万引きなどで逮捕されたとしても、初犯ならば「微罪処分」として起訴されないことがよくあります。この場合は起訴も刑事裁判での有罪判決も受けていませんから、「前歴」になるわけですね。
もう少し前歴について解説していきましょう。以下のような場合は、前科とはならず前歴で済みます。
1.起訴猶予 何らかの罪を犯したことは認められるが、その内容が軽微であり、本人(罪を犯したもの)が反省しているとき2.嫌疑不十分 罪を犯した可能性があるものの、それを証明する証拠が乏しいとき 3.嫌疑なし |
いずれの場合も逮捕されているものの、起訴や刑事裁判より前の段階で問題が解決していることが特徴です。
2 前科・前歴が生活や将来に与える影響は?
では次に、これら2つが本人の人生にどういった影響を与えるか、という点を解説します。
⑴前科がある場合
まず前科です。前科があると、少なからず人生に影響が出てしまうことは避けられないでしょう。具体的には、
・親族の就職などに悪影響がでる可能性がある ・別の犯罪に巻き込まれたとき、前科調書から検察や裁判官の心証が悪化する可能性がある ・いくつかの職業で欠格事由に該当するため、特定の職業(医師、公務員、教職員、公認会計士など)の資格を得ることができない ・履歴書に前科を記入する必要はないものの、確認されたときに「前科が無い」と答えると経歴詐称に該当する |
このように、主に就職についての影響が大きいといえます。特に公的な資格やお金に関する資格、セキュリティに関する仕事では、前科に対して非常に厳しいチェックがあり、資格取得や就職自体ができません。また、「禁固以上の刑罰」を受けた場合は、下記のような職業で制限を受けます。
・検察官や裁判官、弁護士、弁理士、教員など一部の国家資格に「生涯」就くことができない ・金融業では明確に前科者を排除していない。しかし実際には前科者が就職できない領域がある ・社会福祉士、介護福祉士は禁錮以上の刑をうけた場合、刑罰を受け終わってから2年間は資格取得が不可能である |
さらに、過去に重罪を犯し、結婚後にそれが発覚した場合は、離婚の理由になる可能性もあります。就職や結婚についてはあくまでも自己申告の面が強いですが、発覚したときのダメージは大きいでしょう。
⑵前歴がある場合
次に前歴です。前歴は前科とは違い、明確に有罪判決を受けていません。「逮捕された」という記録が残っているのみと考えて良いでしょう。したがって、前科のように就職を制限されることは、基本的にありません。前科とは異なり、前歴を一般の民間人が調査する方法は無いからです。
3 前科は可能な限り回避すべき!
このように「逮捕された」という事実は同じであっても、前科と前歴には大きな差があります。繰り返すようですが、この2つを隔てているのは「起訴・有罪判決」というステップです。また、日本の刑事裁判は、起訴されると99%が有罪になってしまいます。つまり、「いかに起訴を回避するか」が前科を付けないためのポイントなのです。
では、前科を付けないためには何をすべきなのでしょうか。結論から言うと、刑事事件に強い弁護士の力を借りることです。刑事事件で逮捕されると、最大で23日間の身柄拘束が発生します。この間に示談を行ったり、謝罪したりといった対策を実行すれば、起訴を回避できる可能性が高まるのです。しかし、当の本人は拘束されていますから、当然これらは不可能ですよね。つまり、本人に代わって弁護士が様々な活動を行うのです。
刑事事件は専門のノウハウを持った弁護士が対応することで、起訴の可能性が変わります。起訴される可能性があるのなら、一刻も早く弁護士へ連絡しましょう。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。