親告罪(しんこくざい)とは?
みなさまは「親告罪」という言葉をご存知でしょうか?
これは、被害者が刑事告訴をしないと、犯人を起訴できない犯罪のことです。
親告罪の被害者になった場合、犯人を刑事告訴すべきかしないのか、重大な決断を迫られることとなります。
今回は、犯罪の中でも「親告罪」について、刑事事件に専門的な取り組みを進める弁護士が解説します。
1 親告罪とは
親告罪とは、犯人を起訴するために、被害者による刑事告訴が必要な犯罪です。
親告罪の場合、刑事告訴がないと、警察は捜査を開始しませんし、検察官が起訴することもありません。
ただし、起訴前に刑事告訴があっていったん起訴されて刑事裁判となった場合には、起訴後に刑事告訴の取り下げがあっても裁判が終わることはありません。
刑事告訴は、あくまで「起訴するための要件」であり、いったん起訴されてしまったら、刑事告訴がなくても犯人は処罰されます。
2 告訴できる人
刑事告訴できるのは、基本的には被害者本人や法定代理人です。
被害者が死亡した場合には、被害者の配偶者や直系親族(親や子どもなど)、兄弟姉妹も告訴権を取得します。
死者に対する名誉毀損罪の場合には、被害者である死者の親族や子孫に告訴権が認められます。
3 告訴期間
刑事告訴には、6ヶ月の期間制限があるものが多いです。
いつまでも告訴ができるということになると、加害者の立場が不安定になるからです。
そこで、告訴をするならば、基本的に犯罪被害に遭ってから6ヶ月以内にしなければなりません。
4 親告罪の例
親告罪の例としては、以下のようなものがあります。
・評判の低下
・侮辱 ・ストーカー規制法違反 ・過失傷害罪 ・器物損壊罪 ・信書開封・隠匿罪 |
かつて、強制わいせつ罪や強姦罪(現在は強制性交等罪)などの性犯罪は親告罪でしたが、近年法改正されたことによって、これらの罪は非親告罪となっています。
5 相対的親告罪について
また、親族間で行われた場合にのみ親告罪となる犯罪もあります。
たとえば、以下のようなものです。
・盗難
・詐欺罪 ・横領罪 ・恐喝罪 ・不動産侵奪罪 |
親族間でこれらの財産に関する犯罪が行われた場合には、親族間で話合いをすることによって解決した方が妥当であることが多いため、特別な取り計らいが行われています。
他人間で上記の犯罪が行われた場合には、刑事告訴がなくても犯人は起訴されます。
このように、被害者と加害者の関係によって親告罪になるかどうかが変わる犯罪のことを、「相対的親告罪」と言います。
6 刑事告訴するなら、弁護士までご相談下さい
以上のように、親告罪の被害者となった場合、加害者が起訴されるかどうかは被害者の刑事告訴次第となってきます。
しかし、被害者の方は、「刑事告訴すると、加害者に逆恨みされるのではないか」とか、「手続的に大変ではないか」とか、「警察の取り調べを受けることで苦痛を受けるのではないか」など、心配になることが多いでしょう。
そのような場合、弁護士によるサポートがあれば安心です。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。