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イヤホンを付けて自転車を運転すると罰金?問われる刑事罰と事故を起こした場合の対処法

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イヤホンを付けて自転車を運転すると罰金?問われる刑事罰と事故を起こした場合の対処法

 

 

スマホで音楽や動画を楽しむことが日常の一部になりました。ワイヤレスのイヤホンも普及し,両手を使わずいつでも音楽を聴くことが可能です。そのせいか,自転車を走行中にもイヤホンをして音楽を聴いている人もいます。イヤホンを付けて自転車を運転することは,犯罪にはならないのでしょうか?もし自分の子どもがイヤホンを装着して自転車を走行しているときに事故を起こしてしまったら,どうすればいいのでしょうか?

 

 

1 自転車でイヤホンを付けて運転すると問われる刑事罰

 

そもそも,自転車でイヤホンを付けて運転することは犯罪なのでしょうか?

刑法には,イヤホンを装着して自転車を運転することを罰する規定はありません。

では,道路交通法はどうでしょう。自転車は車両等に含まれますから,道路交通法が適用されます。

道路交通法にも,一見してイヤホンを付けての自転車走行に関する規定がないようにも思います。

しかし,道路交通法には,以下のような規定があります。

第七十条 車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。

第七十一条 車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。

(略)

六 前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項

 

⑴安全配慮義務違反

イヤホンを付けながら自転車を運転することは,70条が規定する安全配慮義務に違反している可能性があります。イヤホンを装着し音楽を聴いている状態は,両手は自由に使うことが出来るとしても,周囲の音がほとんど聞こえていないことが多いです。仮に他の自転車が存在をベルで知らせていたとしても,気付かずに衝突してしまうかもしえません。

このような状態は,当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しているとは言えません。

 

⑵各都道府県の条例違反

71条第1項6号によると,自転車の運転者は,道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項に従う必要があります。

大阪府は,大阪府道路交通規則にて,以下のように規定しています。

(運転者の遵守事項)

第13条 法第71条第6号の規定により車両等の運転者が遵守しなければならない事項は、次に掲げるとおりとする。

(5) 警音器、緊急自動車のサイレン、警察官の指示等安全な運転に必要な交通に関する音又は声を聞くことができないような音量で、カーオーディオ、ヘッドホンステレオ等を使用して音楽等を聴きながら車両を運転しないこと。

 

つまり,大阪府では,イヤホンを付けて自転車を運転することは,規則違反となります。

もっとも,大阪府に限らず,他の自治体でも,イヤホンを付けての自転車の運転を規制しています。

一度,お住まいの自治体の道路交通規則を確認してみてください。

 

2 「骨伝導イヤホン」を付けて自転車を運転するのは問題なし?片耳は?

 

大阪府の道路交通規制では,「警音器、緊急自動車のサイレン、警察官の指示等安全な運転に必要な交通に関する音又は声を聞くことができないような音量で、カーオーディオ、ヘッドホンステレオ等を使用」が規制されていました。

では,片耳のみイヤホンを付けていたり,耳を塞がない骨伝導(解放型)のイヤホンであれば,問題ないようにも思われます。

埼玉県のHPをご覧ください。

イヤホン・ヘッドホンについて

周りの音が聞こえない状態で運転してはいけません。(埼玉県道路交通法施行細則第10条第7号。罰則:5万円以下の罰金)

 

イヤホン・ヘッドホン使用の危険

耳をふさぐので、周りの音が聞こえにくくなり危険です。

音量が大きい場合、周りの音が聞こえなくなるので危険です。

音楽に気を取られ、安全運転に集中できなくなるので危険です。

 

密閉型・解放型について

イヤホンやヘッドホンには、密閉型と解放型があります。名前の印象から「密閉型は周りの音が聞こえないが、解放型は周りの音が聞こえる」という誤解がありますが、メーカーや製品によって性能は様々ですし、耳の形や聴力にも個人差がありますので一概には言えません。単純に「解放型だから大丈夫」ということにはなりません。

 

片耳での使用について

片耳での使用なら、もう片方の耳で周りの音を聞くことができそうです。しかし、音量が大きい場合、周りの音が聞こえにくくなりますし、音楽に気を取られて安全運転に集中できなければ危険なことに変わりはありません。単純に「片耳だから大丈夫」ということにはなりません。

 

やはり,解放型のイヤホンや,片耳のみの使用であっても,危険性には変わりがないようです。

音量はともかく,音楽を聴くことで注意力が散漫する可能性は非常に高く,注意して運転していれば防げたはずの事故も,音楽を聴いていたことが原因で発生しかねません。

そのような事故を防ぐためにも,イヤホンで音楽を聴きながら運転することはやめましょう。

 

3 イヤホンを付けて自転車を運転すると、どの程度の罰金が科せられる?

道路交通法

第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

(略)

十四 第七十条(安全運転の義務)の規定に違反した者

 

先述した道路交通法や大阪府道路交通規則に違反すると,三カ月の懲役または五万円の罰金が科されます。

自転車でイヤホンを使っただけで,懲役刑の可能性があります。

 

4 子どもがイヤホンを付けて自転車を運転中に事故を起こしたらどうすればいい?

 

自分はイヤホンを付けて自転車を運転しないよう気をつけていたとしても、自分の子どもがイヤホンを付けて自転車を運転し,事故を起こしてしまうこともあるかもしれません。自分の子どもから人身事故を起こしてしまったと連絡が来た時,どのように対処すれば良いのでしょうか。

 

⑴道路交通法上の義務

道路交通法

第七十二条 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。同項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置(第七十五条の二十三第一項及び第三項において「交通事故発生日時等」という。)を報告しなければならない。

(略)

第百十七条 車両等(軽車両を除く。以下この項において同じ。)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があつた場合において、第七十二条(交通事故の場合の措置)第一項前段の規定に違反したときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

2 前項の場合において、同項の人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

(略)

第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

(略)

十七 第七十二条(交通事故の場合の措置)第一項後段に規定する報告をしなかつた者

 

自転車は車両ですから,事故を起こしてしまったら,救護義務と報告義務が生じます。

これらの義務に違反してしまったら,自転車によるひき逃げ事故という扱いになってしまいます。

自転車が接触せず,被害者の方が避けようとして転んだ場合や,被害者が「大丈夫です」と言った場合でも,救護義務違反になる可能性があります。

ひき逃げは,救護措置義務違反を怠ったとして,五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金が科されます。

 

さらに,交通事故において,運転者の運転が原因で相手がけがをしたり,亡くなった場合,さらに十年以下の懲役又は百万円以下の罰金が科されます。

また,交通事故が発生したことを警察に報告することを怠ると,報告義務違反となります。

報告は,その場ですぐに行う必要がありますので,事故を起こしてしまったと子どもから連絡があったら,その場ですぐに警察に報告をしましょう。

参考:ひき逃げ

 

⑵刑法

刑法

(過失傷害)

第二百九条 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。

2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

(過失致死)

第二百十条 過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。

(業務上過失致死傷等)

第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

 

自転車事故によって成立する可能性のある犯罪は,過失致死傷罪又は,重過失致死傷罪です。

重過失致死傷罪の場合,罰金刑だけではなく,懲役刑が成立する可能性があります。

では,過失と重過失の違いは何でしょうか。

 

過失とは,事故が起きるかもしれないという,予見回避可能性がありながら,その結果発生を回避するために必要とされた措置を講じなかったことです。

一方で,重過失とは,一般的にわずかな注意をしさえすれば簡単に結果を予測できたにも関わらず、怠慢により注意を怠った過失を言います。

イヤホンを付けたまま自転車を走らせて事故を起こしてしまった場合,どの程度の過失になるかは,状況によって変わります。しかし,民事事件において,一方がイヤホンを付けたまま自転車を走行していたという事実は,過失割合が不利になる要因となります。民事事件と刑事事件の過失の考え方は必ずしも同じとは言えませんが,刑事事件であってもイヤホンを付けたままの運転は不利に働くでしょう。

実際に,イヤホンを付けたまま自転車に乗っていて事故を起こし,重過失致死罪が成立した事例には,次のようなものがあります。

【平成30年 8月27日横浜地裁川崎支部 平30(わ)166号】

被告人が、自転車の通行が禁止されている歩行者専用道路上を、少なくとも33秒間、左耳にイヤホンを付けて音楽を再生し、飲料の容器を持った右手でハンドルを握り、左手でスマートフォンを持って操作してメッセージの送受信をするなどしながら電動アシスト自転車で進行した末、前方を歩行中の被害者に気付かず、メッセージ送受信を終えてスマートフォンをズボン左ポケットにしまう動作に気を取られて前方を注視しないままペダルを踏んで自転車を更に進行させた結果、自車を被害者に衝突させて被害者を脳挫傷等の傷害により死亡させた。

 

⑶事故を起こしたのが未成年の子どもだったら?

未成年の子どもが,イヤホンをしたまま自転車を運転し,人を傷つけてしまったら,刑事事件の流れはどうなるのでしょうか。

未成年は,成人と違って,少年法が適用されますから,14歳未満であれば,刑事責任を問うことが出来ないので,児童相談所に送られます。

少年(14歳以上の未成年者)である場合,刑事罰を科せられることはありませんが,更生に向けた援助を受けることになります。どのような処分がふさわしいか,勾留・勾留に代わる観護措置ののち,家庭裁判所の調査官による調査が行われます。その後,少年審判によって,裁判官は,調査官からの調査結果と処分についての意見をもとに,審判内容を決定します。

重大な事件であれば,成人事件と同じように刑事罰を科すために,逆送事件になることもありますが,自転車による人身事故の場合には,よほど悪質性がない限りは,可能性が低いでしょう。

また,少年事件は,少年の本名や容貌が分かるような推知報道は禁止されています。

参考:息子・娘が逮捕されてしまった!家族がすべきこと

参考:18歳の息子が逮捕された!「特定少年」の扱われ方と弁護士の役割

 

5 イヤホンを付けて自転車事故を起こしてしまったら弁護士にご相談ください!

今回は,イヤホンを装着しながら自転車を運転することは,犯罪になるか?もし自分の子どもがイヤホンを装着して自転車を走行しているときに事故を起こしてしまったら,どうすればいいのか?について解説しました。

自転車による人身事故は,誰でも加害者になる可能性のある身近な交通事故です。

近年では,アシスト付きの自転車も普及しており,相当なスピードが出ますから,自転車であっても深刻な事態に発展してしまう可能性があります。

イヤホンを装着して自転車を運転し,事故を起こしてしまったら,すぐに弁護士に相談して,被害者の方と示談を行うことをお勧めします。

被害者との示談を早期に成立させることで,警察に身柄を拘束される可能性が低くなり,寛大な処分が下る可能性が出てきます。

スムーズに示談交渉を進めるためにも,一人で悩まずに,刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

 

法律事務所ロイヤーズ・ハイは,各種の刑事事件に積極的に取り組んでおり、弁護活動実績も高いです。

さらに,難波・堺・岸和田という大阪の主要地に法律事務所を構えており,土日祝日に関係なく,事前にご相談いただければ夜間の対応も可能です。

ご自身やご家族の方が自転車事故を起こしてしまったら,まずは法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

このコラムの監修者

  • 田中今日太弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

    田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録

    弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。

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