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自転車でひき逃げしてしまった!問われる罪とベストな対処法

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自転車でひき逃げしてしまった!問われる罪とベストな対処法

 

 

携帯電話を片手に,自転車で走っていると歩行者にぶつかってしまいました。歩行者は転び,すぐに立ち上がることが出来ない様子でした。逮捕されるのではないかと怖くなって,すぐに逃げてしまいましたが,落ち着いて考えると罪悪感に苛まれています。今後どんな罪に問われるのか不安で仕方がないです。どうすればいいのでしょうか。

今回のコラムでは,自転車でひき逃げをしてしまった時に成立する可能性のある犯罪と,逮捕の可能性について解説します。

 

 

1 自転車でひき逃げしてしまうとどんな罪に問われるのか

(1)ひき逃げした時の刑法上の犯罪とは?

そもそも,法律上,自転車はどのような位置づけにあるのでしょうか?

自動車や,原動機付自転車と同じ扱いになるのでしょうか?

道路交通法は以下の様に定めています。

第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(省略)

八 車両 自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスをいう。

九 自動車 原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転し、又は特定自動運行を行う車であつて、原動機付自転車、軽車両、移動用小型車、身体障害者用の車及び遠隔操作型小型車並びに歩行補助車、乳母車その他の歩きながら用いる小型の車で政令で定めるもの(以下「歩行補助車等」という。)以外のものをいう。

十 原動機付自転車 原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車であつて次に掲げるもののうち、軽車両、移動用小型車、身体障害者用の車、遠隔操作型小型車及び歩行補助車等以外のものをいう。

イ 内閣府令で定める大きさ以下の総排気量又は定格出力を有する原動機を用いる車(ロに該当するものを除く。)

ロ 車体の大きさ及び構造が自転車道における他の車両の通行を妨げるおそれのないものであり、かつ、その運転に関し高い技能を要しないものである車として内閣府令で定める基準に該当するもの

十一 軽車両 次に掲げるものであつて、移動用小型車、身体障害者用の車及び歩行補助車等以外のもの(遠隔操作(車から離れた場所から当該車に電気通信技術を用いて指令を与えることにより当該車の操作をすること(当該操作をする車に備えられた衝突を防止するために自動的に当該車の通行を制御する装置を使用する場合を含む。)をいう。以下同じ。)により通行させることができるものを除く。)をいう。

イ 自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽けん引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含み、小児用の車(小児が用いる小型の車であつて、歩きながら用いるもの以外のものをいう。次号及び第三項第一号において同じ。)を除く。)

ロ 原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車であつて、車体の大きさ及び構造を勘案してイに準ずるものとして内閣府令で定めるもの

十一の二 自転車 ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する二輪以上の車(レールにより運転する車を除く。)であつて、身体障害者用の車、小児用の車及び歩行補助車等以外のもの(原動機を用いるものにあつては、人の力を補うため原動機を用いるものであつて内閣府令で定める基準に該当するものを含み、移動用小型車及び遠隔操作により通行させることができるものを除く。)をいう。

 

まとめると,自転車は,自動車,原動機付自転車とは異なりますが,車両・軽車両には含まれます。

電動アシスト自転車は,道路交通法上,自転車と同様に,車両・軽車両にあたります。

 

①過失致死傷罪(刑法209条1項 刑法210条)

(過失傷害)

第二百九条 過失により人を傷害した者は、三十万円以下の罰金又は科料に処する。

2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

(過失致死)

第二百十条 過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。

 

自転車のひき逃げとは,自転車による人身事故を起こしたにもかかわらず,逃げることを言います。

人身事故によって,被害者がけがをしたり,死亡したりすると,上記の犯罪が成立する可能性があります。

ここで,注意するべきは,人身事故はあくまで一方の注意義務違反(過失)によって引き起こされた,すなわち故意がない事故であることが前提です。

自転車で走行中,歩行者を見つけて,「自転車でぶつかって怪我をさせてやろう,殺してやろう」という気持ちで,歩行者に怪我をさせたり死亡させたりすれば,傷害罪(204条),殺人罪(199条)が成立します。

また,先述のように自転車は,道路交通法が規定する「自動車」とは異なりますから,自動車による人身事故の際に成立する,自動車運転過失致死傷罪等は,成立しません。

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律

(定義)

第一条 この法律において「自動車」とは、道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第二条第一項第九号に規定する自動車及び同項第十号に規定する原動機付自転車をいう。

 

過失とは,事故が起きるかもしれないという,予見回避可能性がありながら,その結果発生を回避するために必要とされた措置を講じなかったことです。

例えば,携帯を見る等のよそ見をすれば,過失があったと言われるでしょう。

過失致傷罪は,三十万円以下の罰金又は科料,過失致死罪は,五十万円以下の罰金が科されます。

 

②重過失致死傷罪(刑法211条後段)

(業務上過失致死傷等)

第二百十一条 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

 

自転車で走行中,重大な過失によって,人身事故を起こしてしまったら,重過失致死傷罪が成立する可能性があります。

重過失とは,わずかな注意をしさえすれば簡単に結果を予測できたにも関わらず、怠慢により注意を怠った過失を言います。

例えば,飲酒運転,信号無視,猛スピードでの走行が挙げられます。

重過失致死傷罪が成立すると,五年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金が科されます。

過失致死傷罪に比べると,かなり重い刑です。

 

③業務上過失致死傷罪(刑法211条前段)

業務上過失致死とは,業務それ自体が人の生命や身体に危険を及ぼす恐れがあるにもかかわらず,過失によって人を負傷させてしまったケースで成立する犯罪です。

医療現場や,建設現場などで事故が起きたときに成立する可能性があります。

 

では,自転車での配達を業務として行っている場合,自転車での走行は,人の身体や生命に影響を及ぼす恐れがあるといえるでしょうか?

令和 4年 2月18日の判例では,雨が降っていたこと,夜にも関わらず,前照灯の装備がなかったこと,眼鏡に雨粒が付着しており前後左右が見えにくい状況であったこと,、高速走行可能なロードバイク型の自転車であったことを理由に,業務上過失致傷を認め,被告人を禁錮1年6月,執行猶予3年に処することを決定しました。

自転車での配達業による人身事故が,業務上過失致死罪で起訴されることは極めて稀と言われていましたが,最近の自転車は性能が良くかなりのスピードが出ることや,自転車での配達業が浸透していることから,今後自転車事故が業務上過失致傷罪に問われることは,増えていくと思われます。

【令和 4年 2月18日 東京地裁(刑わ)3052号】

被告人は、ロードバイク型の自転車による有償の食品配達業を営み、走行速度を上げて歩合制の配達報酬等を効率的に得ようとしていた者であるが…時速約20ないし25キロメートルで進行中、同所先の交通整理の行われていない丁字路交差点入口に設けられた横断歩道に差し掛かった際、自車には前照灯の装備がない上、折からの降雨により眼鏡に雨滴が付着するなどし、前方左右が見えにくい状態になっていたのであるから、適宜減速した上、一層前方左右を注視し、同横断歩道による横断歩行者の有無及びその安全を確認しながら進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、減速することなく、かつ、前方左右を注視せず、同横断歩道による横断歩行者の有無及びその安全を確認しないまま漫然前記速度で進行した過失により、折から左方から右方に横断歩行中のA(当時78歳)を左前方約4.5メートルの地点に認め、急制動の措置を講じたが間に合わず、同人に自車を衝突させて同人を路上に転倒させ、よって、同人に外傷性頭蓋内損傷の傷害を負わせ、同月19日午後8時28分頃、東京都荒川区[以下省略]所在の病院において、同人を前記傷害により死亡させた。

 

(量刑の理由)

1 本件は、判示の食品配達業を営んでいた被告人が、自転車を運転中、交通整理の行われていない丁字路交差点入り口の横断歩道に差し掛かった際、速度調節及び前方左右注視の業務上の注意義務を怠り、折から同横断歩道を歩行中の被害者に自車を衝突させて死亡させた事案である。

2 被告人は、夜間降雨があった中、前照灯の装備がなく、眼鏡に雨滴が付着して前方左右が見えにくい状態にあったにもかかわらず、時速約20ないし25キロメートルという自転車としては相応に高速度のまま、横断歩道による横断歩行者の有無及びその安全を確認しないままに走行したために本件を惹起した。被告人は、高速走行可能なロードバイク型の自転車を運転するなどして、走行速度を上げて歩合制の配達報酬等を継続的に効率よく得ようと食品配達業に従事しており、そのような業務者の負う基本的な注意義務に違反したものであって、その過失は重い。

本件により被害者のかけがえのない生命が失われたという結果は誠に重大である。何の落ち度もないにもかかわらず、突然その未来を奪われた被害者の無念さ、残された遺族らの心痛は察するに余りある。

3 他方、被告人が事実を認めた上で、被害者及びその遺族に対して取り返しのつかないことをしてしまい、本当に申し訳ないことをした旨謝罪の言葉を述べるとともに、後悔の念と反省の情を示していること、被告人の母が出廷して監督を誓約するなど更生への助力が期待できること、被告人には複数の交通違反歴はあるものの前科はないこと、配達業務の委託会社が付していた保険により被害者の遺族に対して一定の損害賠償がなされることが見込まれることなど、被告人に対して有利に考慮すべき事情も認められる。

4 以上をもとに検討するに、本件における量刑は、犯情の悪質さ、とりわけ、被害結果が誠に重大であることや、被告人の過失が重いことが中心的な事情となる。このことに、上記3の被告人に有利な諸事情を併せ考慮するとともに、自転車による重過失致死事犯の量刑傾向や、自動車運転過失致死事犯との均衡等も踏まえ、被告人に対しては、相応の期間の自由刑を主刑とした上で、その執行については猶予することが相当であると判断した。

(求刑 禁錮2年)

東京地方裁判所刑事第8部

(裁判官 鏡味薫)

参照:ひき逃げをした時の罪責

 

(2)ひき逃げした時の道路交通法違反

道路交通法は,人身事故を起こしてしまった人に対して,次のような義務を設けています。

この義務は「車両の運転者」に課されるものです。自転車は,車両に含まれますから,自転車で事故を起こした場合には,以下の義務が課されます。

第七十二条 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。同項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置(第七十五条の二十三第一項及び第三項において「交通事故発生日時等」という。)を報告しなければならない。

(略)

第百十七条 車両等(軽車両を除く。以下この項において同じ。)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があつた場合において、第七十二条(交通事故の場合の措置)第一項前段の規定に違反したときは、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

2 前項の場合において、同項の人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、十年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

(略)

第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

(略)

十七 第七十二条(交通事故の場合の措置)第一項後段に規定する報告をしなかつた者

 

①救護措置義務違反

交通事故を起こした場合,車両の運転者やその乗務員は,直ちに車両の運転を停止して,負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じる義務が生じます。

仮に車両と被害者が接触せず,相手が急ブレーキをかけた勢いで転んだケースであっても,救護義務が発生するので気を付けてください。また,相手が「大丈夫」と言ったからといって,その後に被害者が交通事故による症状を訴えて病院を受診すれば,救護義務違反となります。さらに,被害者が信号無視をしたような,相手の過失が大きい場合でも,救護義務は発生します。

ひき逃げは,救護措置義務違反を怠ったとして,五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金が科されます。

さらに,交通事故において,運転者の運転が原因で相手がけがをしたり,亡くなった場合,さらに十年以下の懲役又は百万円以下の罰金が科されます。

 

②報告義務違反

交通事故が発生したことを警察に報告することを怠ると,報告義務違反となります。

報告は,その場ですぐに行う必要があり,急いでいるからあとで!とその場を立ち去ってしまうと,報告義務違反になります。

 

2 自転車でひき逃げした後、逮捕される可能性はあるか

自転車での人身事故を起こしてしまって,怖くなって逃げてしまったら,後日逮捕される可能性はあるのでしょうか?

結論から言えば,ひき逃げ事件は逮捕される可能性がかなり高いです。

なぜなら,逮捕するかしないかは逮捕の必要性から判断され,逮捕の必要性とは,逃亡の可能性や証拠隠滅の可能性を考慮します。

一度現場から逃亡したひき逃げ犯は,逮捕の必要性が高いとして,身柄を拘束されてしまうのです。

今日,街中にはいたるところに監視カメラがありますし,目撃者の証言などから,犯人が特定されるのは時間の問題でしょう。

 

逮捕された後は,48時間以内に,警察が検察官に送致するかどうかを決めます。

検察官に送致されたら,そこから24時間以内に,勾留請求を行うか否か判断されます。

それまでの捜査への協力の姿勢や,反省の態度,被害者との示談の有無,逃亡可能性などが考慮されます。

裁判官が検察官の勾留請求を許可すると,そこから10日間,最大で20日間もの間身を拘束されてしまいます。

合計で,最長23日間も拘束されてしまうことになります。

 

3 自転車でひき逃げしたらどうすべきか

(1)しっかりと罪に向き合って警察に自首又は出頭する

では,自転車で引き逃げ事件を起こしてしまったら,どうするべきでしょうか。

いつか捕まるのではないかとおびえて過ごすよりも,しっかりと罪に向き合って,警察に自首又は出頭することをお勧めします。

捜査機関に発覚されていない事件について警察や検察に犯行を告げることを「自首」というのに対し、捜査機関がすでに事件を把握している段階になってから処分を求めることを「出頭」といいます。

 

ひき逃げによる人身事故は,被害者や目撃者者が通報している可能性が高いので,「私が事故を起こしました」と言って警察に処分を求めることは,出頭になります。

出頭することで,必ず有利に働くとは限りませんが,逃亡の可能性や証拠隠滅の可能性が低いと判断され,比較的早期に身柄を解放してもらえるかもしれません。

 

(2)弁護士に自首同行を依頼する

警察に一人で出頭する勇気が出ない方や,その後が不安だという方は,弁護士に同行を依頼るするという方法があります。

精神的負担が軽くなるというメリットの他にも,出頭の時点から弁護士が就くことで,その後の取り調べをどのように受けるかについてアドバイスをもらうことが出来ますし,被害者との示談活動もすぐに取り掛かることが出来ます。

参考:自首に同行してほしい

 

4 悩んだらすぐに弁護士にご相談を!

今回のコラムでは,自転車でのひき逃げ事件を起こした場合,どんな罪に問われるのか?どうすればいいのか?について解説しました。

ひき逃げ事故を起こしてしまったら,いつ捕まるか不安におびえる日々を過ごすより、真摯に罪と向き合い,きちんと反省して今後の人生を過ごしましょう。

まずは、一人で悩まずに刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

法律事務所ロイヤーズハイは,各種の刑事事件に積極的に取り組んでおり、弁護活動実績も高いです。

さらに,難波・堺・岸和田という大阪の主要地に法律事務所を構えており,土日祝日に関係なく,夜間の対応もできます。

路上痴漢をしてしまった方,またそのご家族の方は,ぜひ法律事務所ロイヤーズハイにご相談ください。

このコラムの監修者

  • 田中今日太弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

    田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録

    弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。

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