犯罪に巻き込まれたとき
犯罪に巻き込まれたら身の安全を確保した上で、警察への通報や証拠の保全を行いましょう。
犯人が逮捕されれば二次被害の恐れも減りますし、示談交渉によって損害賠償や慰謝料などを請求することも可能になるため、できるだけ早めに警察に通報したいところです。
この記事では、犯罪に巻き込まれたときにやるべきことに加えて、犯罪被害者が利用できる相談先や支援制度などについても詳しく解説していきます。
目次
1 犯罪に巻き込まれたらすぐにやるべきこと
犯罪に巻き込まれた直後にやるべきことは、主に次の3点です。
⑴安全を確保する
⑵警察に通報する ⑶証拠を残しておく |
詳しく見ていきましょう。
⑴安全を確保する
大前提として、犯罪に巻き込まれた場合は身の安全を第一に考えましょう。
その場から離れたり、周囲に助けを求めたりして、これ以上被害を被らないようにしてください。
やむをえない事情がない限りは、犯人を取り押さえようとしたり、反撃したりすることはおすすめできません。
正当防衛や緊急避難は絶対に認められるわけではないので、過剰防衛となってしまう恐れもありますし、何より大きな怪我をしてしまえば取り返しがつきません。
⑵警察に通報する
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①緊急時の場合は110番に通報する
身の安全が確保できたら、警察に助けを求めましょう。
110番に通報した際は係員からの質問に冷静に答えるようにすると、スムーズに現場に駆けつけてもらいやすくなるかと思います。
質問される内容は例えば…
・何が起こったのか
・いつ起こったのか ・被害や怪我人の状況 ・犯人の特徴 ・現在の場所 |
特に現在の場所を正確に伝えるのが重要です。
住所や管理番号を伝えるようにしましょう。
管理番号は、標識・信号機・電柱などに記されています。
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②緊急でない場合は#9110に通報
#9110は、警察の相談専用窓口です。
実際に被害は被っていないが不審な出来事があった場合などはこちらに連絡をしましょう。
⑶証拠を残しておく
身の安全を確保できたら、犯罪の証拠を残しましょう。
余裕があれば、犯人の姿を写真に残したり、録音をしたりするといいでしょう。
目撃者がいた場合は連絡先を教えてもらい、のちに証言をしてもらえるようお願いしておくといいかと思います。
また、外傷を負った場合は傷を写真に残しておいたり、医師の診断書を残しておいたりしましょう。
この時に残した証拠が刑事事件化した際や損害賠償請求をする際に活きてくるので、可能な限り証拠は残しておいてください。
2 犯罪に巻き込まれた後の相談先
犯罪被害者の方が利用できる相談先を3つご紹介します。
⑴警察の被害者相談窓口
先ほどご紹介した警察の被害者相談窓口は、犯罪被害に遭った後に困っているような方も相談できます。
加害者の捜索だけではなく、必要に応じて支援制度を活用し、被害者やその家族のサポートを行なっています。
『各都道府県警察の被害相談窓口』から、お住まいの地域の窓口を探してください。
また、別の機関への相談がふさわしいようなケースであれば、法テラスや国民生活センター、児童相談所、女性相談所など別の窓口を紹介してくれます。
「誰に相談するべきかわからない」といった方は連絡をしてみるといいかもしれません。
⑵心療内科
・事件をフラッシュバックしてしまう
・夜眠れなくなってしまった ・感情が麻痺しているような気がする ・これまで通りの生活を送れなくなった |
など、精神的苦痛から抜け出せないような場合は心療内科の受診を検討しましょう。
大きな事件であれば、警察への協力やマスコミへの対応に追われたり、周囲の目に苦しんだりと心が休まらない状況に置かれる恐れもあります。
早い段階からカウンセリングを受けることでうつ病などの二次被害を防ぎやすくなる可能性があります。
⑶弁護士
次のような目的がある場合は、弁護士への相談を検討するといいでしょう。
⑴加害者を告訴したい
⑵損害賠償請求がしたい ⑶刑事裁判に関与したい |
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⑴加害者を告訴したい
事件発生を警察が認知していないようなケースでは、加害者の処罰を期待する旨を警察に伝える必要があり、これを告訴といいます。
告訴をする際は告訴状を作成し警察に提出する必要があります。
告訴自体は被害者本人が行えるのですが、告訴状は出せば必ず受理されるわけではありません。
事件性があり、どうしても警察に捜査をして欲しい、という場合は弁護士に告訴状の作成をお願いしましょう。
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⑵損害賠償請求がしたい
刑事事件にならなかった場合でも、不法行為によって怪我を負っているケース、物を盗まれたり壊されたりしているようなケースでは、民事事件として損害賠償請求ができます。
損害賠償請求をする際は証拠が重要になってくるので、例えば暴行を受けたような場合は、入院・通院などをして診断書を受け取っておきましょう。
また、加害者の身元がわからないような時は請求のしようがないので、先に被害届を提出したり、告訴をしたりして警察に加害者を特定してもらう必要があります。
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⑶刑事事件に関与したい
加害者に厳罰を期待するような時は、被害者参加制度を使うことで刑事訴訟に参加する選択肢がありえます。
刑事裁判にて証人尋問や被告人質問をすることができますが、この場合は弁護士に依頼をするのが普通です。
また、被害者参加制度の対象になる罪は次の通りです。
・故意に人を死傷させた罪
・強制わいせつ・強制性交等の罪 ・逮捕・監禁の罪 ・略奪・誘拐・人身売買の罪 ・2~4を含む犯罪 ・過失運転致死傷などの罪 ・1~6の未遂罪 |
3 犯罪被害者が知っておきたい被害者支援制度
犯罪被害に遭うと肉体的・精神的・金銭的に苦しい立場に立たされることがあります。
そんな方に向けて、警察や検察・地方自治体などが各種支援制度を実施しているので、積極的に利用したいところです。
ここでは、各種制度の中から以下の4つをご紹介します。
⑴被害回復給付金支給制度
⑵民事法律扶助制度 ⑶犯罪被害者法律援助事業 ⑷国選被害者参加弁護士制度 |
⑴被害回復給付金支給制度
詐欺などの財産犯の被害者に給付金を支給する制度です。
組織犯罪処罰法が改正され、組織犯罪によって犯人が得た財産を刑事裁判によって剥奪できるようになりました。
この財産が現金化され、被害者になった人たちに給付金として支給される、といった制度です。
詳細や申請方法については、『被害回復給付金支給制度|検察庁』を参照ください。
⑵民事法律扶助制度
経済的に余裕のない方が法律トラブルに巻き込まれた際に、弁護士費用の立替をしてくれる制度です。
民事訴訟をしようとしているが、弁護士費用をすぐに用意出来ないような時は、法テラスに相談をしてみましょう。
詳細:民事法律扶助業務|法テラス
⑶犯罪被害者法律援助事業
生命、身体、自由または性的自由に対する犯罪(傷害、殺人、強制わいせつなど)
配偶者暴力、ストーカー行為
上記犯罪の被害者になった方やその親族の方が、刑事裁判を希望する際に、弁護士費用を援助する制度です。
制度を利用するためには資力要件を満たした上で、弁護士に依頼する必要性が必要です。
詳細は『犯罪被害者法律援助|法テラス』をご確認ください。
⑷国選被害者参加弁護士制度
経済的に余裕がない人でも被害者参加制度を利用できるようにするために、裁判所が弁護士を選定し、国が弁護士費用を負担する制度です。
資力要件や手続きの流れなどにつきましては、『被害者参加人のための国選弁護制度|法テラス』をご確認ください。
4 まとめ
この記事では、犯罪に巻き込まれたらやるべきことと被害者向けの相談先、支援制度などについてご紹介してきました。
現在の状況や希望に合致した相談先を見つける事が迅速な解決につながります。
当記事が犯罪に巻き込まれ困っている方の参考になれば幸いです。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。