魔が差して痴漢(ちかん)してしまった。まずはどうすべき?
1 はじめに
誰誰が電車で痴漢をしたというニュースがしばしば流れます。もし,魔が差して痴漢をしてしまった場合に、どのような犯罪が成立するのでしょうか?また、痴漢で逮捕された場合どのように対処すればいいのでしょうか?
以下では、痴漢により成立する犯罪、痴漢をしてしまった場合の対処法、痴漢冤罪に巻き込まれた場合の対処法について解説していきます。
2 痴漢により成立する犯罪
一般に、痴漢を行った場合には、不同意わいせつ罪または迷惑防止条例違反が成立する可能性があります。
⑴不同意わいせつ罪
不同意わいせつ罪は、刑法176条で、次のように規定しています。
十六歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も同様とする。 |
すなわち、16歳以上の人に対し、同意しない意思を形成したり、表明したり、全うすることが難しい状態でわいせつな行為を行えば、不同意わいせつ罪が成立しますが、16歳未満の人に対しては、たとえ同意があったとしてもわいせつな行為をすれば不同意わいせつ罪が成立します。
不同意わいせつ罪が成立すれば6か月以上10年以下の懲役に処される可能性があります。
⑵迷惑防止条例違反
迷惑防止条例は、各自治体で制定されている条例であり、内容や罰則については各自治体によって異なります。
大阪府の迷惑防止条例、すなわち、大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例は痴漢行為について次のように規定しています。
(卑わいな行為の禁止)
第六条 何人も,次に掲げる行為をしてはならない。 一 人を著しく羞恥させ,又は人に不安を覚えさせるような方法で,公共の場所又は公共の乗物において,衣服等の上から,又は直接人の身体に触れること。 二 人を著しく羞恥させ,又は人に不安を覚えさせるような方法で,公共の場所又は公共の乗物における衣服等で覆われている内側の人の身体又は下着を見、又は撮影すること。 三 みだりに,写真機等を使用して透かして見る方法により,公共の場所又は公共の乗物における衣服等で覆われている人の身体又は下着の映像を見、又は撮影すること。 四 前三号に掲げるもののほか,人に対し,公共の場所又は公共の乗物において,人を著しく羞恥させ,又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること。 |
まず、6条1項1号、4号に違反すると6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される可能性があります。
また、6条1項2号、3号に違反すると1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
このように、痴漢を行った場合には、不同意わいせつ罪や迷惑防止条例違反にあたる可能性があり、不同意わいせつ罪の方が刑自体が重く有罪判決の場合、実刑になる可能性もあります。一般的に衣服の中にまで手を入れたり、衣服の上からであっても行為が執拗であったり悪質である場合には、不同意わいせつ罪の方が成立する可能性があります。
3 痴漢をしてしまった場合の対処法
まず、痴漢をして逮捕をされると最大で23日間の身体拘束がされる可能性があります。その後、起訴された場合、有罪判決がなされれば前科がつくことになります。痴漢で逮捕された場合の対処法として、直ちに当番弁護士制度を利用して、弁護士と接見するようにしましょう。
また、魔が差して痴漢をしてしまった場合には、被害者と示談が成立すれば不起訴になる可能性があります。
不起訴になれば前科はつきません。さらに、初犯であれば示談が成立することにより不起訴の可能性が相当程度あります。もっとも、被害者と直接示談をしようとしても怒られたり、嫌がられたりして応じてもらえない可能性があるので、弁護士を立てて示談をすることをお勧めします。
4 痴漢冤罪に巻き込まれた場合の対処法
痴漢の場合、冤罪の可能性もあります。もっとも、痴漢をしていないことの証明は難しいと一般に言われています。そこで痴漢の疑いをかけられた場合には、速やかに弁護士に連絡することが重要となります。
弁護士に依頼することにより、捜査機関による不当な取り調べに対処することができ、冤罪をでっちあげようとする女性に対し処罰を望むことも可能な場合があります。
5 おわりに
痴漢を行った場合には、迷惑防止条例違反にあたる可能性や、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。そして、魔が差して痴漢をしてしまった場合には、まずは被害者と示談の成立に向けた活動を行う必要があります。もっとも、被害者は直接示談に応じない可能性があるので弁護士に依頼することをお勧めします。
また、痴漢冤罪の場合には、すぐに弁護士に連絡することをお勧めします。法律事務所ロイヤーズ・ハイでは、刑事事件について経験豊富な弁護士が在籍しています。自分自身や身近な人が痴漢をしてしまったり、痴漢冤罪に巻き込まれてしまった場合には、当事務所の弁護士に相談することをお勧めします。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。