あおり運転の罰則 | 大阪難波(なんば)・堺の刑事事件に強い弁護士|弁護士法人法律事務所ロイヤーズハイ

あおり運転の罰則

あおり運転は何罪で逮捕される?罪の重さと厳罰化の流れ

2019年夏。あおり運転をした上に、停車させた相手に怒鳴り込んできて暴力を加える事件が起き、連日ニュースで報道がありました。それによってあおり運転の恐怖を知った方も多いでしょう。

さらに以前には、2017年6月の東名高速夫婦死亡事故も起きており、警察庁を挙げてあおり運転に対する厳しい見られ方がされています。
今回は、あおり運転で逮捕されるとどのような罰則を受けることになるのかをご説明します。

1.あおり運転とは?あおり行為の種類と逮捕時の罰則

早速、あおり運転にはどのような行為があり、あおり運転に対してどのような罰則が用意されているのかからご説明します。

あおり運転の種類

そもそもあおり運転とは、危険で悪質な自動車やバイクなどの運転によって、他のドライバーにプレッシャーを与える行為です。あおり運転を受けたドライバーは、運転に支障をきたして結果的に事故の危険性が高まってしまいます。後で実際のニュースもご紹介しますが、死亡事故が起きることもある非常に悪質な行為です。

あおり運転代表的な行為としては以下の行為があり、どの行為も後述する道路交通法に違反した行為になり得ると考えられます。

車間距離を詰める

あおり運転の代表的な行為として、走行中の車両に車間を詰める行為があります。車間距離を詰められた方は相当なプレッシャーを受けますが、適切な車間距離を保たない行為は道路交通法違反になります。

幅寄せ

同じく、他車に異常に近寄る行為もあおり運転となります。

蛇行運転

左右にフラフラと走行する蛇行運転もあおり運転として行われている場合があります。前後を走る車両にとっては、運転の妨げになるに違いありません。

飲酒運転や高齢者の運転によって蛇行運転になっているケースも考えられますが、特定の車両の前だけで蛇行運転を繰り返すようであれば、あおり運転をしていると考えられます。

執拗にクラクションを鳴らす

本来、クラクションは危険を知らせるなどの場合にのみ使われるものです。あおり運転では、執拗にクラクションを鳴らして周囲の車両にプレッシャーを与えます。
無意味にクラクションを鳴らし続ける行為も道路交通法違反に該当すると考えられます。

執拗なパッシングやハイビーム走行

後方でわざとハイビームを続けて前方車両の視界を妨げる行為もあおり運転です。単にロービームに切り替えることを忘れているケースもありますが、パッシング(ライトを点灯させる)があったり、意図的にハイビームに切り替えられるようなケースでは、あおり運転も考えられます。

以上があおり運転の例ですが、他にも当てはまる行為はいくつもあるでしょう。いずれにしても、他車の運転を邪魔するいたずら心だったり、自分の運転技術をこれ見よがしに見せつけるような稚拙な目的で行っていることが多いです。

そのように本人は「ちょっとしたいたずら」程度だと思っているかもしれませんが、あおり運転にはきちんとした罰則も設けられており、近年では警察庁が厳しく罰する動きも見られます。
以下では、あおり運転に対する罰則についてまとめました。

2.あおり運転で逮捕された場合の罰則

このようなあおり運転の行為ですが、多くのケースで道路交通法に違反していることが考えられます。まず、あおり運転の行為そのものが道路交通法違反での罰則の対象です。

また、あおり運転が関係して事故が起きたり、悪質なあおり運転では他の刑事罰にも問われることが考えられます。あおり運転で該当し得る罰則についてご説明します。

道路交通法違反

繰り返しますが、あおり運転の行為では多くが道路交通法違反になると考えられます。道路交通法違反の種類として以下のものがあります。

車間距離保持義務違反
高速道路
3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金
その他道路
5万円以下の罰金

あおり運転の代表的な行為である、車間距離を詰めて運転する行為は『車間距離保持義務違反』になると考えられます。罰則は高速道路とそれ以外の道路とで違い、高速道路での違反では懲役刑もあり得ます。

適切な車間距離の目安は、走行速度から15を引いた距離(m)となります。例えば、40㎞/hなら25m、60㎞/hなら45m、といった考え方です。これ以内の極端に車間距離を詰めた走行では、車間距離保持義務違反に当てはまってくるでしょう。

ただし、速くなればそれだけ停車しにくくなるので、高速道路では走行中の速度の数字と同じ車間距離を取ることが最適です(80㎞/hなら80m)。また、雨などによる道路状況にもよるので、一概には言えません。最低でも上の車間距離を保つことが良いでしょう。

急ブレーキ禁止違反

3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金
不必要な急ブレーキは、事故を誘発する恐れがあります。あおり運転として、不要にブレーキを踏む行為もあると考えられ、その場合には上記の罰則が当てはまります。

進路変更禁止違反

5万円以下の罰金
無理に割り込んだり車線変更をするような行為は、進路変更禁止違反が当てはまると考えられます。

また、進路変更禁止違反は車線変更だけではなく、同じ車線の左端から右端に移るケースでも進路変更になり得ます。つまり、上記でご紹介した左右にフラフラする蛇行運転も進路変更禁止違反になり得ると言えます。

追い越し方法違反

3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金
追い越しは右車線から行うことがルールですが、左車線から追い越すなど、場合によっては追い越し方法違反に該当することがあります。

安全運転義務違反

3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金
道路交通法では、安全運転について以下の記述があります。

『車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。』

そもそも、あおり運転は他人に危害を及ぼすような運転方法ですので、安全運転義務違反になり得ると考えられます。

減光等義務違反

5万円以下の罰金
周囲に他の車両があるにもかかわらずライトをハイビームにして走行を続けていれば、減光等義務違反に該当すると考えられます。

警音器使用制限違反

5万円以下の罰金
むやみにクラクションを鳴らす行為も警音器使用制限違反として、罰則を受ける可能性があります。

人身事故が起きた場合の罰則

ここまでご紹介した罰則は、あおり運転そのものに対しての罰則でしたが、人身事故が起きた場合、以下の罪に問われる可能性も出てきます。あおり運転をされた運転手は、プレッシャーを受けて正常な運転に支障をきたしますので、交通事故も起きやすくなるでしょう。
ちなみに、以下の罪はあおり運転にかかわらず人身事故が起きた場合に過失があった運転手に対して適用される罪です。

しかし、あおり運転を起因とする人身事故の場合、あおり運転があったという経緯によって、より厳しい刑罰や逮捕による身柄拘束を受ける可能性が高くなると言えます。

過失運転致死傷罪

7年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金
過失運転致死傷罪は、過失による運転で交通事故を起こし、人を死傷させた場合に適用される罪です。

一般的に交通事故によって人を死傷させた場合には、こちらの過失運転致死傷罪が適用されることが多いですが、警察庁を挙げてあおり運転の厳罰化に取り組んでいますので、以下の危険運転致死傷罪が適用されることも十分に考えられるでしょう。

罰則も、懲役/罰金ともに上記の道路交通法違反よりかなり重いものとなってきます。

危険運転致死傷罪
  • 負傷…15年以下の懲役
  • 死亡…1年以上の有期懲役

危険な運転によって事故を起こし人を死傷させたと判断された場合、危険運転致死傷罪が適用されることがあります。

悪質なあおり行為は十分な危険運転ととらえられますし、警察庁があおり運転に対して厳しく対処することを言及していますので、こちらの危険運転致死傷罪に当てはまって刑事手続きを受けることも考えられます。

危険運転致死傷罪で逮捕/捜査された場合、刑事罰も懲役刑しかない非常に重いものになってきます。

暴行罪や強要罪など

あおり運転に対する罰則は、ここまでお伝えした道路交通法違反か人身事故が起きた場合の過失(危険)運転致死傷罪しかありませんでした。

後からご紹介する『東名高速夫婦死亡事故』を受けて、「いわゆる「あおり運転」等の悪質・危険な運転」に対して、「道路交通法違反のみならず、危険運転致死傷罪(妨害目的運転)、暴行罪等あらゆる法令を駆使して、厳正な捜査の徹底を行う」と警察庁も発言しています。
これによって、今後あおり運転でも暴行罪や脅迫罪などの罪に問われる可能性も出てくると考えられるでしょう(もしくは法定が変わるか)。

現に後述するあおり運転で起きた事故では、殺人罪が適用されたり、停車中の事故でも危険運転致死傷罪を適用すべきだと論争が行われています。
参考:「あおり運転の対応に関する質問主意書|衆議院」

3.あおり運転で逮捕されたニュースと適用された罪名

こちらでは、実際に起きたあおり運転を3つご紹介します。上記でお伝えしたように、厳罰化も考えられています。逮捕され、どのような罪に問われるのかも注目しながらご覧ください。

常磐道あおり運転|ドラレコの映像がニュースで報道され話題となった事件

あおり運転と聞いて、こちらの事件を思い起こした方も多いでしょう。2019年夏に後続車をあおり運転しながら無理やり停車させた上に、運転手に殴り込んできて怪我を負わせた事件です。

犯人の男は傷害罪と強要罪で起訴を受けており、殴って怪我をさせた行為に対しては傷害罪、あおり運転として無理やり停車させた行為については強要罪が適用されています(あおり運転での強要罪適用は初)。

また、以前にもあおり運転を原因として事故を起こしており、危険運転致死傷罪としての捜査も受けています。
参考:「茨城・常磐道あおり運転で男を起訴|Yahoo!ニュース」

東名高速夫婦死亡事故|あおり運転の厳罰化を求められるきっかけになった事件

警察庁があおり運転に対して厳罰化の言及をするきっかけにもなった事件です。

パーキングエリアで注意されたことに腹を立て、注意した男性を高速道路で追走、さらには追い越し車線上で停車させ、後続を走ってきたトラックが追突し、あおり運転を受けた夫婦が死亡した事故です。

あおり運転を行った被告に対しては、いったん判決によって危険運転致死傷罪で懲役刑18年が言い渡されましたが、その後弁護人の「停車中では危険運転致死傷罪は成立しない」という主張をもとに、差し戻し判決(裁判のやり直し)が行われました。

現在も危険運転致死傷罪の成立があり得ることを前提に審理が行われている最中です。
参考:「ハンドル握ると攻撃的になる“人格変貌”男の犯行か 東名高速夫婦死亡事故|産経ニュース」

堺あおり運転死亡事故|殺人罪が認められた事件

あおり運転を行った末に、前方を走るバイクに追突し、バイク運転手を死亡させた事故です。あおり運転を行った犯人には殺人罪が適用され、懲役16年の判決を受けています。

追突の直前には、クラクションやパッシングを繰り返したり、「はい、終わりー」と発言しており、相手を死亡させても構わない気持ちがあったと判断され、殺人罪が適用されました。
参考:「堺・あおり運転、二審も懲役16年 殺人罪を認定|朝日新聞」

4.まとめ

あおり運転での行為は、道路交通法違反に該当することがほとんどで、逮捕されて罰則を受ける可能性も十分にあり得ます。
さらに、近年では警察を挙げてあおり運転を厳しく罰する傾向にあります。基本的には道路交通法違反と人身事故を起こした場合の過失(危険)運転致死傷罪のみが適用できる罪ですが、それ以外の罪に問われる可能性もあり得ると言えるでしょう。

このコラムの監修者

  • 田中今日太弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

    田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)
    弁護士ドットコム登録

    弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。
    大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。
    お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。

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