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自殺は罪?違法?刑法上犯罪となりうるか

自殺を違法とするかどうかについては見解が分かれるポイントですが、今のところ日本において、自殺自体を処罰する法律はありません。

ただし、他人の自殺に関与した場合は自殺教唆などの罪に問われることがあります。この記事では、自殺は罪が問われない理由や他人の自殺への関与が罪に問われる理由、他人の自殺に関与した場合に問われる罪などについて解説します。

なお、当記事は自殺をめぐる法的問題について言及するものであり、自殺の是非について論じるものではありません。

自殺が罪に問われない理由

自殺が罪に問われない理由はいくつかありますが、ここでは以下の3点について詳しくご紹介します。

責任能力がなかったとする説

人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
引用元:刑法199条

上記は殺人罪の条文ですが、自殺は自分という人を殺す行為なので、殺人罪にあたるようにも思えます。しかし、刑法にて人を処罰する際は、責任能力が認められる必要があります。

責任能力がない状態というのは、例えば泥酔や精神障害などによって正常な意思決定ができない状態にあることをいいます。自殺をするときの状態は責任能力のない状態であるため、処罰性は肯定できないという見方があります。

生命の自己決定権との兼ね合いから違法とはされないという説

憲法では、人は個人的事柄については公権力に干渉されることなく、自ら決定できる権利を持つとしています(自己決定権)。自殺を違法とすると、生命の自己決定権を侵害しかねないため、自殺を完全に違法するのは、憲法の考え方と一致しません。

この点に関しても、自殺は自己決定に基づいた行為であるため、違法性は減少されるという見方と、完全に適法であるとする見方があります。

自己決定により、法益性・違法性が減少するという説

刑法の世界では、違法性の根拠を法益性に求める考え方があります。

法益とは、法律によって守るべき利益のことをいい、ここでは自殺者の命のことを指します。人が自分の意思決定により自殺を図る場合、自殺者の命を法律で守る必要性(法益性)は減少すると考えられます。

法益性が違法性の根拠であるとすると、法益性が減少すれば違法性も減少することになるため、自己決定により自殺をした場合は、違法性が減少すると考えられます。

自殺は罪に問われないが、他人の自殺に関与すると罪に問われる理由

自殺は罪に問われないのに、他人の自殺を手助けしたら罪に問われるというのは、違和感のあるポイントかもしれません。

自己決定権の観点から、自殺自体は違法ではないと上記でお伝えしました。

一方、他人の自殺に関与することは違法であり、その理由として2種類の見解があります。

1つ目は、自殺自体が違法であるため、自殺のサポートは共犯にあたるとする見方です。

2つ目は、自殺は違法ではないものの、他人の意思決定に関与し、生命を奪う行為は違法であるという見方です。

他人の自殺をサポートするうえで現在合法なのは、延命治療を拒む尊厳死だけです。尊厳死が認められるためには、本人の余命が短く苦痛が甚だしい状態でなければいけません。健常者の安楽死を補助することは日本では違法となります。

自殺に関与した際に場合に問われる罪

人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。
引用:刑法202条

他人の自殺を促したり手伝ったりした場合は自殺幇助罪や自殺教唆罪に、自殺をしたがっている人の合意のもとにその人を殺害した場合は嘱託殺人罪や承諾殺人罪に問われます。罰則はいずれの罪も6ヶ月以上7年以下の懲役または禁錮です。

・自殺幇助罪

幇助とは、手助けをするという意味です。自殺をしようとしている人に対して、自殺の援助をした場合は自殺幇助罪に問われることがあります。

・自殺教唆罪

教唆とは、そそのかすことをいいます。他人に自殺する気持ちを抱かせたうえで、その人が自分の意思に基づいて自殺をした場合は、自殺教唆罪に問われます。

・嘱託殺人罪

人から依頼を受けて、その人を殺害した場合は嘱託殺人罪が成立します。被害者が自殺を望んでおり、尚且つ自殺の意思が明示していたことが証明されなければ、殺人罪が適用されることがあります。なお、安楽死や心中もこれに当たります。

・承諾殺人罪

本人の承諾を得て殺人に至った場合は、承諾殺人罪(同意殺人罪)になります。

西洋と日本の自殺への見解の違い

キリスト教の文化圏である西洋では、自殺は神への冒涜であり、自殺を法律で厳しく処罰していました。一方日本では、自殺は名誉な行為にあたる場合もありました。ここでは、自殺が歴史的にどのように捉えられてきたのかについて、西洋と日本の違いをそれぞれご説明します。

キリスト教の文化圏では、自殺は明確な罪ととらえられてきた

キリスト教の文化圏において、自殺は大罪であると考えられてきました。特にカトリック教では、生命は神によって人間に与えられるものであって、生命を終わらせる権利は神にのみあると考えられてきました。そのため、自殺をすることは神に対して罪を犯すことになります。

中世ヨーロッパでは、自殺をすると埋葬拒否や自殺者の財産没収など、厳しい罪が科されていました。なお、イギリスでは1961年まで、自殺法により自殺が犯罪であるとされていました。

日本では自殺に対する批判的な見解は少なかった

ヨーロッパと比較すると、日本において自殺は社会的に容認されている傾向があり、場合によっては称賛されることすらありました。その具体例としては切腹や殉死などが挙げられます。

切腹は武士のみに許された名誉な死に方であり、複雑な作法や手順が存在しました。殉死についても、家臣が主君に対して忠義を示すという意味合いがあり、名誉なことであると考えられてきました。

自殺によって生じうる民事責任

自殺によって刑事罰が下されることはないものの、自殺によって他人の権利を不法に侵害した場合は、遺族に対して損害賠償請求がなされることがあります。

例えば、アパートで自殺をしたとします。自殺物件は借主が見つかりにくくなったり、家賃を下げたりしなければならず、資産としての価値が大きく毀損されます。

この場合、貸主が遺族に対して損害賠償請求をすることが考えられます。内訳は、家賃の損害賠償、物件の改修費用、家主や隣人への慰謝料などで、総額が数百万円になることも珍しくはありません。

自殺をする以上、本人にとってはどうしようもない事情があったのではないかと思います。しかし、自殺をすると遺族に対して深い悲しみを与えるだけではなく、上記のような金銭的な負担も強いることになりかねません。

まとめ

この記事では、自殺が違法ではない理由や、他人の自殺に関与した際に問われる罪、自殺による民事的責任などについて解説してきました。違法ではないとはいえ、自殺は周囲の人に対して精神的・金銭的負担を強いることになるため、決して推奨されません。

このコラムの監修者

  • 田中今日太弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

    田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)
    弁護士ドットコム登録

    弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。
    大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。
    お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。

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