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お酒を飲ませての性行為は不同意性交等罪になる?

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お酒を飲むことで気が緩んでしまい、性行為に及んでしまったというケースは、多く見られます。

お酒を飲ませた後に性行為をした場合、性犯罪として問われてしまうのか気になる方は多いでしょう。

そこで今回は、お酒を飲ませた後の性行為は犯罪なのか、どのような罪に問われるのかなどを詳しく解説していきます。

証拠がない?相手方の同意なしでの性行為は不同意性交等罪に

 

1 お酒を飲ませての性行為は犯罪になるのか?

故意にお酒を飲ませてから性行為に及んだ場合、性犯罪として認められるケースがあります。

これを定めているのが、不同意性交等罪(刑法177条1項、176条1項3号)です。

具体的な条文は以下の通りです。

177条1項

前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣ちつ若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。

176条1項3号

アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。

 

つまり、お酒を飲ませると、この「アルコールを摂取させる」に該当します。

また、相手がお酒を自発的に飲んでいても、「アルコールの影響がある」に該当します。

ただし、お酒を飲んで性交渉をしただけでは、不同意性交等罪は成立しません。

ここでもう一つ大切な要件があります。

それが、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」という要件です。

これは、性交等に対して、「嫌と思うこと」「嫌と伝えること」「嫌と貫くこと」が「困難な状態にさせ」るか、「困難な状態にあることに乗じ」る必要があるというものです。

ここで、どれほどの状態が「困難な状態」なのかが大切です。

例えば、お酒を1杯しか飲んでおらず、ちゃんと自身の意思を持つことも伝えることも貫くこともできるなら、「困難な状態」にさせてもいなしい、「困難な状態に乗じ」てもいない、ということになるでしょう。

しかし、1杯であっても、非常に度数が高くて1杯飲むだけでも、「嫌と思うこと」「嫌と伝えること」「嫌と貫くこと」が「困難な状態にさせ」るか、「困難な状態にあることに乗じ」るということになるなら、この要件を満たす可能性もあると考えられます。

このようにお酒を飲む量、飲んだお酒の種類やアルコール度数、性交渉に及ぶ前後のやりとりや、性交渉の場所、時間なども問題になるでしょう。

 

2 不同意性交等罪や不同意わいせつ罪が新設される前は、どのような罪に問われていたのか?

では、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪が新設される前は、どのような罪に問われていたのかでしょうか?

順に説明していきます。

 

⑴強制性交等罪

強制性交等罪は、暴行や脅迫をした後に性交などを行った場合に成立します。暴行や脅迫と言っても、相手の反抗を著しく困難にするほどの強度なものが必要です。

例として、相手を殴ったりナイフなどの凶器を用いて脅したりする行為が暴行・脅迫と言われています。

性交などには、肛門性交や口腔性交を含むため、女性のみならず男性も被害者になり得ます。
被害者が13歳以上の場合、暴行や脅迫を用いて性行為をした場合に強制性交等罪が成立するため、暴行や脅迫を用いたと評価されない場合は強制性交等罪が成立しません。

そのため、お酒を飲ませて性行為を及んだだけの場合は強制性交等罪に問われない可能性もありました。

しかし、不同意性交等罪が新設されたため、暴行脅迫の要件が不要となり、お酒を飲ませて性行為に及んだ場合には同罪が成立する可能性があります。

 

⑵準強制性交等罪

準強制性交等罪とは、意識を失う程の酩酊状態にさせたり抵抗能力をなくさせたりした時に性行為に及んだ場合に問われる罪状です。

心神喪失とは、精神的な障害などで性行為に対する判断能力を失った状態を指します。
お酒を飲んで泥酔状態にさせた場合もこれに当たるため、お酒を飲ませて性行為をした場合は準強制性交等罪に当たる可能性がありました。

相手を泥酔状態にしなくとも、抗拒不能の状態にさせて抵抗できなくして性行為に及んだ場合も準強制性交等罪になったのです。

しかし、これも相当な酩酊状態になっていないと適用されませんでした。

ただ、不同意性交等罪が新設されたため、要件が軽くなっているようにも考えられます。

 

⑶強制わいせつ罪

強制わいせつ罪とは、暴行や脅迫を用いてわいせつな行為をした場合に問われる罪状でした。

性交などに至らなくとも、暴行や脅迫を用いてわいせつ行為とみなされることをした場合に成立したのです。

わいせつな行為とは被害者の性的羞恥心を害する行為を言い、合意のないキスや被害者の胸やお尻などに直接触れることです。

わいせつ行為の被害に遭うのは女性が多いですが、男性も被害者の対象となっています。

しかし、不同意わいせつ罪が新設されたため、暴行脅迫の要件が不要となり、お酒を飲ませてわいせつ行為に及んだ場合には同罪が成立する可能性があります。

 

⑷準強制わいせつ罪

準強制わいせつ罪とは、心神喪失や抗拒不能な状態にしてわいせつ行為をした場合に成立する罪状です。
こちらも強制わいせつ罪と同じく、性交などに至らなくとも成立しました。
お酒を飲ませて相手を酩酊状態にした場合や、抵抗不能な状態にして合意なくキスや胸などを直接触った場合です。

しかし、これも相当な酩酊状態になっていないと適用されませんでした。

ただ、不同意わいせつ罪が新設されたため、要件が軽くなっているようにも考えられます。

 

3 刑事裁判になった場合は?

強制性交等罪と強制わいせつ罪などの犯罪は、2017年に改正されたことにより非親告罪となりました。

被害者が加害者の処罰を求める意思表示を捜査機関にしなくとも、検察官が起訴できるようになったのです。

その後、さらに進んで、暴行脅迫の要件がなくとも、抵抗できる状態になければ不同意性交等罪、不同意わいせつ罪で処罰できるようになりました。

そこで、お酒を飲ませて性行為を合意の上でした際に、後から相手側から訴えられたとしたら、どうすれば良いのでしょうか?

その場合には、同意があったと争う、ことが考えられます。

「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」の要件を争うことになるでしょう。

ただし、これらの要件を争うことが客観的に難しい場合もあります。

その場合は、被害者と示談をして量刑を軽くしてもらうことを考えてみましょう。

不同意性交等罪や不同意わいせつ罪は、法定刑が拘禁刑のみで罰金刑がありません。

そのため、有罪判決が出されると刑務所に入らなければならないのです。

刑務所に入ることを避けるには、起訴後であっても被害者と示談をすることが重要となります。

被害者と示談が成立していることは、示談金の支払いによって被害が回復し、被害者の処罰感情が減少または失われたものとして、加害者に有利な状況として考えられます。

性犯罪に関しては被害者が加害者と会うことを拒絶することが多いため、友人や家族などで示談を成立させるのは非常に困難です。

もし示談交渉をする場合は、弁護士に相談してみると良いでしょう。

 

4 無罪になることはあるのか?

お酒を飲んで酩酊状態にした後に、性行為に及んだ場合は不同意性交等罪として問われる可能性がありますが、過去の判例で性行為を及んだ際でも無罪になったケースがあります。

これは強制性交等罪や準強制性交等罪の時代のものですが、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪でも同様であると考えられます。

ここでは、無罪になるケースをご紹介します。

 

⑴合意の上で性行為に及んだ

被害者が13歳以上で、お互い合意の上で性行為に及んでいた場合は強制性交等罪や準強制性交等罪は成立しません。

合意の上といっても被害者の内心の問題なので、明確に裏付けられる証拠は存在しないと言っても良いでしょう。

しかし、少なくても裏付けられる証拠がある場合は裁判所に提出してみると良いかもしれません。

例えば相手から誘われた場合は、誘われた際のメモ書きを証拠として用意しておいたり合意をした時の音声を証拠として用意したりすると良いでしょう。

 

⑵相手が抵抗できなくとも合意していると誤信するような状態だった

被害者との合意がなくても、加害者側が「合意があった」と誤信していた場合も成立しません。

例えば、ラブホテルに行き、相手が性行為について積極的な拒否の意思を示さずに抵抗しなかった場合は、裁判所では許容していると誤信してしまうこともあります。

そのため、お酒を飲ませて性行為をしたという内容が裁判になった場合は、被害者の合意の有無を争うことになります。

 

5 まとめ

お酒を飲ませた後の性行為は、不同意性交等罪という罪に問われる可能性は高くなります。
もし刑事事件化した場合には、必ず弁護士に被害者との合意の有無やその状況を報告してアドバイスを得ましょう。

無罪を勝ち取りたい場合は、その行為に及ぶ前の物的証拠や口頭の証拠が必要になります。

ただし、一番大切なのは、事前にお酒を飲ませて安易に性交渉に及ばないように注意していただくことです。

このコラムの監修者

  • 田中今日太弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

    田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録

    弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。

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