大麻所持と覚醒剤所持、法定刑の違いはなぜ? | 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

大麻所持と覚醒剤所持、法定刑の違いはなぜ?

大麻所持と覚醒剤所持は、どちらも同じようなものだと思う人は少なくありません。確かに似ている部分はありますが、この2つの罪は別物として扱われています。

しかし、どうして別物として扱われるのか分からないという人もいるでしょう。

そこで今回は、大麻所持取締法違反と覚醒剤所持取締法違反について、法定刑に違いがある理由について解説していきます。大麻所持や覚醒剤所持の刑罰について知りたいと思っている人は、ぜひ目を通してみて下さい。

 

大麻取締法違反について

まずは、大麻取締法違反について詳しく解説してきます。

大麻取締法違反の定義

大麻取締法は、大麻の所持や譲渡、譲受、栽培を行うことを禁止した法律です。
つまり、大麻取締法違反で逮捕された場合、この禁止行為を行ったと言えます。
大麻取締法における大麻は、大麻草もしくは大麻草を使った製品を指します。
ただし、大麻草の成熟した茎や茎を使った製品(樹脂以外)、大麻草の種や種を使った製品は含まれていません。
大麻の所持は、薬物として使う大麻を持っていたり、保管したりしていることを示しています。
ほんの微量であれば処罰されないケースもありますが、基本的には処罰の対象になってしまいます。
大麻の栽培は、大麻栽培キットの購入履歴や非常に高額な光熱費から判明するケースが多いです。
栽培している大麻の量が多ければ多いほど、罪は重くなります。

大麻取締法違反の刑期

大麻取締法違反の刑期は、個人で使用するための栽培や輸出入を行った場合は7年以下の懲役、個人で使用するために所持や譲渡、譲受を行った場合は5年以下の懲役となっています。
大麻取締法違反が初版だった場合、懲役6ヶ月に執行猶予3年が言い渡されるケースが多いです。
これはあくまでも営利目的ではなく個人で使用する場合の刑期なので、利益を得ることが目的だった場合はもう少し刑罰が重くなったり、初犯でも懲役実刑になったりする可能性が高まります。
ただし、所持していた大麻がごく微量だった場合、不起訴になるケースもあります。
不起訴になれば、刑事裁判にもなりませんし、前科も付きません。

大麻取締法違反の時効

大麻取締法違反の時効は、公訴時効と呼ばれています。
公訴時効というのは、検察官が公訴できる権限を消滅させる時効です。
つまり、公訴時効が成立すると、検察官は事件を起訴できなくなってしまうのです。
大麻取締法違反では、個人で使用するための栽培や輸出入を行った場合、個人で使用するために所持や譲渡、譲受を行った場合のどちらであっても、公訴時効は5年となっています。

 

覚醒剤所持取締法違反について

続いては、覚醒剤所持取締法違反について詳しく解説していきましょう。

覚醒剤所持取締法違反の定義

覚醒剤所持取締法は、覚せい剤の所持や使用、譲渡、譲受、製造、輸入、輸出を禁止するための法律です。
覚醒剤を乱用することで保健衛生上の危害を防止する目的で定められています。
個人での利用でなく営利目的の利用だった場合、さらに重い刑罰になります。
覚醒剤の所持は、使用せずに売買目的で手元にある、家に保管してあるといった場合も当てはまるので、自分が使わなければ罪に問われないというわけではありません。
刑事事件では示談することで処分を軽減できるケースも多いですが、覚醒剤取締法違反は被害者がいるわけではないので示談交渉自体ができません。
注射器や吸入器と言った物的証拠が見つかった場合は、かなり高い確率で拘留されるでしょう。

覚醒剤取締法違反の刑期

覚醒剤取締法違反の刑期は、個人目的と営利目的で刑期が異なります。
それぞれの刑期について見ていきましょう。

覚醒剤の所持

覚醒剤を所持していた場合は、個人目的だと10年以下の懲役、営利目的だと1年以上の有期懲役と情状によって500万円以下の罰金が併科されます。

覚醒剤の使用

覚醒剤を使用していた場合は、個人目的だと10年以下の懲役、営利目的だと1年以上20年以下の有期懲役と情状によって500万円以下の罰金が併科されます。

覚醒剤の譲渡や譲受

覚醒剤の譲渡や譲受を行った場合は、覚醒剤の使用と同じ刑罰になります。
覚醒剤の譲渡や譲受の周旋をした人物は、3年以下の懲役が科せられます。
取引の場に仲立ちしただけでも罪に問われるリスクがあるため、気を付けなければなりません。

覚醒剤の輸入や輸出

覚醒剤の輸入や輸出を行った場合の罪はとても重いです。
非営利だと1年以上20年以下の懲役、営利だと無期もしくは3年以上20年以下の懲役、実情によって1,000万円以下の罰金が科せられます。

覚醒剤所持取締法の時効

覚醒剤所持取締法の時効は、大麻取締法違反の時効と同じく公訴時効です。
覚醒剤所持取締法の場合は、7年が公訴時効となっています。

 

なぜ法定刑に違いがあるのか?

日本では覚醒剤を使用することが禁止されており、麻薬や向精神薬取締法では免許を持つ麻薬研究者以外は使うことができないと定められています。
また、あへん法ではあへんの吸引行為が禁止されているので、大麻も同じように禁止されているのではないかと思われがちです。
しかし実際は、一般的に大麻の使用を禁止する法律は定められていません。
免許を持っている大麻栽培者や研究者が目的以外の使用をすることは禁止されていますが、一般的な使用に関しての規定は法律に盛り込まれていないのです。

その理由について見ていきましょう。
大麻草の成熟した茎や茎を使った製品(樹脂以外)、大麻草の種や種を使った製品に関する刑罰がないのは、大麻草全体に有害な物質が含まれているわけではないためです。
大麻に含まれているテトラヒドロカンナノビールが中枢神経に作用し、抗精神作用をもたらします。
この成分によって、妄想や幻覚、恐怖状態、錯乱状態などを引き起こします。
人体に悪影響を及ぼす成分ですが、成熟した茎や種にはテトラヒドロカンナノビールはほとんど含まれていません。
日本の在来種である麻も大麻の1種で、茎は麻縄や麻織物に使われてきましたし、種は七味唐辛子に使用されています。
このような背景があるため、大麻草の成熟した茎や茎を使った製品(樹脂以外)、大麻草の種や種を使った製品に関する刑罰がないと考えられます。

それに対して覚醒剤は、そのような歴史がないだけではなく、どれを使っても人体に有害な影響を及ぼすと考えられています。
そのため、大麻取締違反と覚醒剤取締り違反には法定刑に違いがあると言えるでしょう。
歴史的な側面や含まれている成分、人体へ影響を及ぼす範囲など、トータルで考えた結果が法定刑に現れているということになります。

 

まとめ

大麻と覚醒剤は、どちらも使用することで罪と問われます。所持に関しては、大麻草の成熟した茎や茎を使った製品(樹脂以外)、大麻草の種や種を使った製品は刑罰の対象にならないため、なぜそのような違いがあるのか気になっていた人も多いはずです。

その背景には、大麻草全体に有害な物質が含まれているわけではないこと、日本では古くから麻縄や麻織物を作っていたことが挙げられます。

しかし、大麻所持や覚醒剤所持を身近な人が行っている場合は、自分だけでは対処しきれないでしょう。そのような場合は、弁護士への相談がおすすめです。

家族や友人、知人、もしくはあなた自身が大麻所持取締法違反や覚醒剤所持取締法違反に当事者だった場合、的確なアドバイスを専門家からもらうべきです。

無料で相談を受けてくれる弁護士もいるので、そのような場合は弁護士への相談を検討してみましょう。

このコラムの監修者

  • 田中今日太弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

    田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)
    弁護士ドットコム登録

    弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。
    大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。
    お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。

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