国選弁護人と私選弁護人の違い
目次
1.はじめに
お客様から寄せられた質問にお答えいたします。
逮捕された被疑者が弁護士を雇うとき「国選弁護人を雇える」という話を聞いたことがあります。
では、自分で弁護士を選ぶことはできないのでしょうか?
2.国選弁護人と私選弁護人の違い
「国選弁護人」というキーワードはニュースやドキュメンタリーなどでよく耳にします。
ですが、国選弁護人を雇うには一定の条件があることや、
被疑者自ら弁護士を選べる「私選弁護人」の存在はあまり知られていないかもしれません。
ここでは「国選弁護人」と「私選弁護人」の違いについて詳しくご紹介します。
3.「当番弁護士制度」を利用して法律のプロに弁護を依頼しよう
警察も検察も、刑事事件に関しては知識が豊富でプロフェッショナルなのに対し、
逮捕された被疑者は、たいていの場合、法律については素人です。
刑事事件のプロを相手に自ら有利に手続きが進むようにするのは限界があります。
そこで被疑者は、「当番弁護士制度」を利用して弁護士に弁護を依頼することになります。
当番弁護士は、「当番弁護士を呼んでください」と言えば、
24時間以内を目安に当番弁護士として登録した弁護士が被疑者のもとに駆けつけてくれます。
初回だけ無料ですが、2回目以降は相談料や出張料がかかります。
4.弁護人を国が決める「国選弁護人」
国選弁護人とは、国によって選ばれた弁護士が被疑者に変わって弁護を行ってくれることです。
原則として預貯金や不動産、自動車などをはじめとした売却可能資産の合計が50万円以下の被疑者が国選弁護人を雇うことができます
(例外として、資産が50万円以上保有している人でも、私選弁護人に受任を拒否された場合は国選弁護人への依頼が認められています)。
なお、国選弁護人に依頼すると伝えた場合、その場で可処分資産を自己申告する必要がありますが、
これは自己申告であり、正式な書面などで証明する必要はありません。
ただし、後に50万円を超える資産があると判明したときに罰金を支払わなければならなかったり、
国選弁護人費用の返還請求をされたりする可能性もあるので、保有資産は正直に話した方がいいでしょう。
5.弁護人を自分で選べる「私選弁護人」
「私選弁護人」は、逮捕された被疑者が自費で雇う弁護士のことです。
雇い方はさまざまで、親戚や知人の弁護士に依頼する方法、
あるいは弁護士に知り合いがいない人は当番弁護士と正式に契約して弁護を依頼することもできます。
どうしても当番弁護士と合わない、あるいは弁護士費用が高額で雇えないなどの場合、
日弁連を経由して弁護士を紹介してもらう方法もあります。
ただし、自分で弁護士を選べるからと言って、あまりえり好みもできません。
というのも、弁護士を選定している間に警察や検察の捜査や手続きは着々と進んでいるからです。
それに、違う弁護士を呼んでもらうたびに相談料や出張料がかかります。
私選弁護人選びはスピードを持って選びたいものです。
6.資産のある人は私選弁護人を選ぶのがおすすめ
このように、同じ弁護人でも国選弁護人と私選弁護人は依頼するシステム、
雇い方に大きな違いがあります。国選弁護人の場合、国が弁護士を選ぶので、
刑事事件に強い弁護士なら幸運かもしれませんが、能力のない弁護士にあたる可能性もあります。
自分とは性格が合わないからと言って国選弁護人の解任や変更は認められません。
弁護士を雇うだけの資力がある人は腕の立つ弁護士を自分で選んだ方が賢明でしょう。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。