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盗撮しようとしたらバレた!未遂でも逮捕されますか?

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盗撮しようとしたらバレた!未遂でも逮捕されますか?

 

 

警察から突然電話で「あなたの旦那さんは今朝逮捕されました」と連絡があったとします。

事情を聞くと,最寄りの駅のエスカレーターで,目の前にミニスカートの女性が立っていて,携帯のカメラを起動して,その女性の下半身を撮ろうとしたところを,その場にいた男性に取り押さえられたそうです。実際に写真を撮ったわけではないのに,逮捕されるのはどうしてでしょうか?

今回のコラムでは,このようなケースでどんな犯罪が成立する可能性があるのか?逮捕されるのか?について,解説します。

 

 

1 盗撮未遂とは何か?

⑴未遂とは

第八章 未遂罪

(未遂減免)

第四十三条 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

(未遂罪)

第四十四条 未遂を罰する場合は、各本条で定める。

 

例えば,人を殺そうとして包丁で刺したが,被害者が逃げ出したので殺せなかったようなケースは殺人未遂罪です。このとき,被害者は逃げた先で出血多量で死んでしまったような場合には,犯罪を最後まで遂げたといえるので,未遂罪は成立しません。

このように,未遂罪とは,犯罪の実行に着手したが最後まで犯罪を遂げなかったことを言います。

実行の着手とは,実行行為の開始のことです。犯罪の計画だけでは,実行行為を開始したといえません。

実行行為の開始とは,具体的に言えば,犯罪の結果を惹起させたタイミングです。ですので,犯罪や状況によって変わります。

 

例えば,電車内でのスリ行為は窃盗罪にあたります。この窃盗罪の実行の着手とは,電車で乗客のポケットの上から財布にふれたときです。しかし,同じ窃盗罪でも,従業員の留守を狙ってお店に侵入する空き巣は,貴重品が入っているであろうレジに近寄ったタイミングで,実行の着手が認められます。

過去の裁判例でも,どのタイミングで各犯罪の実行の着手があったといえるかについては争われています。

 

また,犯罪の中には,そもそも未遂罪が存在しないものもあります。例えば過失致死傷罪には未遂罪が存在しません。

犯罪に未遂が規定されていて,未遂罪が成立すると,その量刑は減刑されることが多いです。

 

また「自己の意思により犯罪を中止した時」は,刑が必ず減刑されます。

この自己の意思とは,犯罪をしている途中で被害者が可哀想になったり,自分の行いを反省して辞めることを言います。被害者に抵抗されたり,誰かが来て見つかりそうだからやめたような,自分の意志とは言えない場合には,自己の意思とは言えません。

 

⑵盗撮未遂とは

(性的姿態等撮影)

第二条 次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。

一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(以下「性的姿態等」という。)のうち、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたもの(以下「対象性的姿態等」という。)を撮影する行為

イ 人の性的な部位(性器若しくは肛こう門若しくはこれらの周辺部、臀でん部又は胸部をいう。以下このイにおいて同じ。)又は人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分

ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十七条第一項に規定する性交等をいう。)がされている間における人の姿態

二 刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為

三 行為の性質が性的なものではないとの誤信をさせ、若しくは特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信をさせ、又はそれらの誤信をしていることに乗じて、人の対象性的姿態等を撮影する行為

四 正当な理由がないのに、十三歳未満の者を対象として、その性的姿態等を撮影し、又は十三歳以上十六歳未満の者を対象として、当該者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が、その性的姿態等を撮影する行為

2 前項の罪の未遂は、罰する。

3 前二項の規定は、刑法第百七十六条及び第百七十九条第一項の規定の適用を妨げない。

 

そもそも,盗撮罪という犯罪はありません。

盗撮については,もともと各都道府県が定めた迷惑防止条例にて規制されていましたが,令和5年に性的姿態等撮影罪(以下,撮影罪)が新設され,全国一律に規制されることになりました。

二条第二項では,撮影罪の未遂は罰すると規定されています。したがって,撮影罪には未遂罪が成立します。

 

では,撮影罪の実行の着手とは,どのタイミングでしょうか。

カメラを起動させただけで撮影罪の未遂が成立するわけではありません。カメラを起動し,性的姿態等を撮ろうとカメラを差し向けたタイミングで,実行の着手が認められます。この時点で,誰かに止められたり,撮影に失敗して何も映っていなかったりすると,撮影罪の未遂となります。

ほかにも,女子トイレを盗撮しようとして,トイレにカメラを設置した時点で実行の着手があります。だれも撮られていない時点で,カメラが見つかったり,本人が反省してカメラを外したりすれば,未遂罪に留まることになります。

参照:【必見】痴漢の自首の6つのメリットと弁護士の自首同行のメリット

 

2 盗撮未遂で逮捕はあるのか?

では,盗撮の未遂の容疑で,逮捕されることはあるのでしょうか?

結論から言えば,逮捕される可能性は十分あります。

 

カメラを向けていたことや,設置したことがバレてその場で現行犯逮捕される可能性もありますし,たとえその場の逮捕は免れたとしても,後日逮捕される可能性があります。

逮捕の必要性とは,証拠隠滅の可能性や,犯人逃亡の恐れがあるかが考慮されます。

「たまたまカメラを起動させただけ」「盗撮を使用としていない」等と容疑を否定したり,その場から逃走しようとすれば,証拠隠滅の可能性や逃亡の恐れがあるとして,逮捕の必要性が高くなります。

 

3 盗撮未遂の刑罰はどうなるのか?

⑴拘禁刑とは

撮影罪の量刑は,3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金です。

未遂罪は,刑が減刑することが出来るので,裁判官の裁量によっては,寛大な処分が下る可能性があります。

拘禁とは,2022年6月13日に可決成立された改正刑法によって新設された刑罰です。

従来の懲役刑と禁錮刑は,刑事施設に拘置することによって執行される自由刑で,懲役刑は所定の作業がある一方で,禁固刑は所定の作業が科せられることがありませんでした。(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律12条2項・13条2項)懲役刑は,所定の作業に時間が割かれ,再犯防止に向けた矯正教育を行うこと

 

そこで,2025年6月1日から施行される改正刑法によって,従来の懲役刑と禁錮刑を廃止し,2つの刑を一本化した拘禁刑が創設されることになりました。

拘禁刑とは,受刑者にとって必要であれば,刑務作業を行わせることが出来るほか,再犯防止に向けて矯正教育を行うことも可能です。

 

⑵撮影罪は余罪があることが多い

余罪とは,発覚している犯罪以外の罪のことを言います。

盗撮行為は,繰り返されることが多く,再犯率がとても高いです。

人生で初めて盗撮したら逮捕された!というケースは非常にまれで,何度も盗撮を繰り返すうちに人目をはばからず大胆な行動に出るようになり,そのうちに逮捕されるというケースがほとんどです。

また,盗撮は,携帯やカメラ,PCにそのデータが残っていることが多く,家宅捜索や携帯の押収によって余罪が発覚することが多いです。

 

撮影罪は,一回の撮影で,一つの犯罪となります。

また,現行犯逮捕されたのが未遂罪であったとしても,性的姿態等を映した写真のデータが発見されてしまえば,犯罪を遂げた(既遂)余罪があるとして扱われます。

通常,身柄拘束は,逮捕・勾留合わせて最長で23日間行われますが,これは一つの犯罪について行われます。余罪が見つかれば,余罪についても捜査が行われるので,身体拘束の長期化の可能性があります。

 

4 盗撮未遂で罪に問われた場合はどうしたらいいのか?

盗撮未遂の容疑で逮捕されたとき,被害者との示談を成立させることが,弁護活動にとっては非常に重要です。

示談活動を成立させることは,加害者が被害者に謝罪し,その謝罪を被害者が受け入れて,金銭的な償いをしたことを意味します。そこで,示談の成立によって,起訴を免れることや,処分が寛大になる可能性があります。

 

もっとも,示談活動は,被害者が特定できている必要があります。

駅やバスなどの公共交通機関での盗撮の場合,過去の盗撮のデータに映っている被害者全てを特定することは,かなり難しいでしょう。

この場合には,贖罪寄付と言って,反省の気持ちを示すために,弁護士会を通じて公的な団体に寄付をするという手段もあります。

参照:盗撮事件における示談活動と示談金の相場

参照:被害弁償、示談交渉は、弁護士に任せましょう

参照:不同意わいせつとは?逮捕された時の対処方法

 

5 盗撮未遂の容疑でお悩みの方は,すぐに弁護士にご相談を!

今回のコラムでは,盗撮未遂とは何なのか?逮捕されてしまうのか?について解説しました。

たとえ未遂であっても,逮捕される可能性は十分にありますし,余罪が発覚すれば,軽い処罰では済まないでしょう。今日性犯罪は厳罰化の流れがありますから,本人・家族が撮影罪の未遂で逮捕されてしまったら,迅速な対応が必要です。

 

刑事事件は,時間との勝負です。また,加害者には,被害者の連絡先を教えてもらえないことが殆どです。

そこで,弁護士が,被害者に連絡を取り,示談活動を円滑に進めるほか,取り調べに対してもアドバイスします。刑事事件に強く,夜間・休日も対応している法律事務所に相談して,弁護士に依頼をしましょう。

法律事務所ロイヤーズハイは,夜間・休日の対応も可能な法律事務所です。

在籍している弁護士は,刑事事件の経験が豊富です。

ぜひ,法律事務所ロイヤーズハイにご相談ください。

このコラムの監修者

  • 田中今日太弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

    田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録

    弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。

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