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性犯罪を繰り返さないためには

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性犯罪は、被害者への身体的かつ精神的影響は計り知れず、許されない犯罪です。
刑期を終え出所しても再犯してしまうケースが多く、最近では被害者のケアだけでなく加害者の治療の必要性が問われています。

性犯罪を繰り返したくない、もうしないという思いで出所しても自分を抑えきれずに再犯を繰り返してしまう背景にはどのような加害者心理があるのでしょうか?

今回は性犯罪を繰り返してしまう加害者心理や病気について、さらに加害者が依存症を抱えていた際の判決事例を併せてご紹介します。

関連コラム:性犯罪で逮捕された場合

 

1 性犯罪はなぜ繰り返されるのか?

性犯罪は、電車での痴漢行為から撮影、不同意わいせつ、不同意性交等罪などの犯罪です。
被害者からすれば許される行為ではありませんし、罪を犯したからこそ更生し二度と繰り返さないようにしてほしいと考えるでしょう。

しかし、性犯罪は出所後も繰り返され再逮捕となるケースが非常に多くなっています。刑務所で更生するための支援を受けていても、出所してしまえば支援はなくなり、自分をコントロールできなくなってしまうためです。

性犯罪が繰り返されてしまうのは、単に加害者の性欲だけでは説明できないものがあります。性犯罪の加害者は、性依存症もしくは性嗜好障害という依存症や障害を抱えているのではないかと言われ始めてきています。

自身の意思だけではコントロールできない、アルコール依存症などと同様の病気であるともされているのです。性犯罪の加害者の多くは、一度反省したり、自分の性嗜好なのだから仕方ないと絶望したりすると言います。

再犯する前もやりたいという思いとやりたくないという思いがあるそうですが、結局コントロールすることができず再犯してしまう結果となっているようです。性犯罪は頭ではやってはいけないことだと理解しつつも、衝動を抑えきれずに再犯してしまうことも一つの特徴として挙げられます。

被害者を救う、出さないためには、まず加害者の治療が不可欠であると言えるでしょう。

 

2 繰り返さないために必要なことは?

性犯罪をした加害者に罰を与え、更生させるために刑務所へ入れますが、性犯罪の再犯は繰り返されています。繰り返さないためには何が必要なのでしょうか?
やはり、性犯罪を繰り返さないためには適切な治療が必要となります。

性犯罪を繰り返す人は、多くの場合性依存症や性嗜好障害といった病気を抱えています。
社会の中で適切な治療をすることで、繰り返す性犯罪にストップをかけられるのです。

社会的に見ても、性犯罪の加害者への治療が必要とはどういうことだと憤る人も多く、再犯の可能性がある加害者に治療を受けさせずに野放しにしてしまっている現状があります。

性犯罪の被害者団体などからも、被害者のケアより加害者の治療を優先するのかといった声や、被害者感情を考えていないといった声もあるほどです。

性犯罪をなくし被害者を少しでも減らすためには、性依存症を抱えている加害者へしっかりとした治療を行い、更生させることが必要となるのです。性依存症はれっきとした病気であること、また治療をすれば自身をコントロールできることを社会が正しく認識していく必要があるでしょう。

社会的には、まだそのような認識が進んでいないことから、今後も被害者の心をケア・サポートしながら依存症についての理解を広めていかなければなりません。

 

3 性依存症の治療にはどんな方法があるのか?

性犯罪者の加害者は、その多くが性依存症などの病気を抱えていると前述しました。
いまだに性依存症などの病気への理解がされにくいという背景から、治療をしているクリニックや病院はそこまで多くはありません。

しかし、性依存症はしっかりと治療することで自分自身をコントロールできるようになります。性依存症の治療とはどのような方法があるのでしょうか?

 

⑴認知行動療法

認知行動療法とは、自身の持つ「認知の歪み」を自覚・認識すると同時に、性犯罪行為に至るまでの行動や思考を遡りつつ考え、性欲をコントロールしていく方法です。
治療の流れとしては、まず過去にした犯罪を思い出し、その時どのような感情だったのか、どのような思考だったのかを振り返ってもらいます。

次に、被害者の立場に立ってもらうことで、自身の思考が歪んでいたことを認知します。
最後に、犯罪のきっかけとなった行動を抑えるため、具体的な方法を自身で考え行動に移してもらいます。

例としては、盗撮を繰り返してしまう場合であればスマホのカメラを壊す、もしくはガムテープなどでレンズを覆って写真を撮れない状態にしておく、電車内での痴漢行為を繰り返してしまう場合であれば電車を使わない生活をする(自転車や車、バイクなどを使う)ことが認知行動療法となります。

 

⑵条件反射制御法

条件反射制御法は、性犯罪自体への渇望感を自ら断っていく治療方法です。
性的な衝動が起こった際に、自身のキーワードとなるアクションを決めておきます。
例えば、胸に手を当てながら「自分は痴漢できない」などを繰り返し唱えます。
これを何回も何回も繰り返し行いながら、自身の性的な衝動をコントロールしていくのです。

 

⑶薬物療法

性依存症の薬物療法は大きく2つに分けられます。
1つは、抗うつ薬であるSSRIという薬を用いた治療、もう1つは男性ホルモンを抑制するための薬を用いた治療です。
繰り返し性犯罪をしてしまう人は、どうしてもそのような思考に陥ってしまう固着傾向があります。
SSRIを用いることで、この固着傾向を緩和することができるでしょう。
また、男性ホルモンを抑制する薬を用いることで、性的欲求が減退します。
性的欲求が減退すれば、性的な衝動も起きません。
その結果、性犯罪の再犯は治まるとされています。
薬物療法の場合、認知行動療法を並行して行いながら治療を進めていきます。

 

4 性犯罪加害者が依存症を抱えていた際の判決事例

性犯罪は性依存症が原因となっているケースが多くあります。
そのため、起訴されてしまった場合でも執行猶予を獲得した事例も実際に出てきています。
中には、旧強制わいせつ致傷、強盗容疑で逮捕され、その後も女性の邸宅侵入、暴行、窃盗容疑で逮捕された事件において、弁護士が早期に2つの事件に介入し、被害者家族と複数回にわたり誠実に対応したことで示談が成立した事例もあります。

裁判の際には、被告人は性依存症であり専門的な治療を医療機関で行う必要があることを立証、それに対しての家族のサポートなどがあることを訴えた結果、求刑が懲役6年となっていたところ、判決では懲役3年、執行猶予5年(保護観察付)となりました。

結果としては、執行猶予がついたので刑務所に収容されることなく性依存症の治療を進めていける状態となりました。この事例では、加害者が性犯罪を繰り返し行っていたため、性依存症の治療が必要だと認識されたのです。

 

5 まとめ

性犯罪を繰り返さないためには、専門の機関に相談し早期に治療を始めることが大切です。
また、社会全体でも性犯罪被害者のケア・サポートをしつつ、性犯罪を繰り返さないよう加害者への適切な治療を進めていく必要があります。
罪を犯してしまった場合でも、刑事事件や性犯罪に精通している弁護士に相談すれば、適切な治療が受けられるよう裁判でも大きな力になってくれるでしょう。

参照:性犯罪で逮捕されたときに弁護士に依頼するメリット

参照:性犯罪における弁護活動

このコラムの監修者

  • 田中今日太弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

    田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録

    弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。

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