少年事件と成人(成年)事件の違い
当事務所にお寄せいただいたご質問にお答えします。
知人の15歳の子どもが傷害事件を起こし逮捕されたそうです。親御さんはとても落ち込んでいるようですが、少年犯罪は大人の犯罪とは刑罰などで違いがあるのでしょうか?
少年による犯罪と大人の犯罪では、刑事手続きに大きな違いがあります。例えば、成人の犯罪なら保釈制度がありますし、軽微な犯罪なら不起訴処分になることもありますが、少年事件ではこのような保釈制度も不起訴処分も原則としてありません。この違いは少年事件に対する理念の違いが大きく関係しています。ここでは、少年事件の刑事手続きの流れを詳しくご紹介します。
1 目的の違い
成年事件で刑罰を科すのは、加害者が罪を償い再犯を防止することが目的です。しかし、少年事件はあくまで少年の健全な育成と性格の矯正、立ち直りを目的としています。非行を犯した少年に対しては、刑罰を科すのではなく、教育が必要という考えです。
そのため,少年の更生を妨げるような実名報道は原則として禁止されています。
2 刑事手続きの違い
少年事件は「全件送致主義」といって、少年に犯罪の嫌疑があればすべて家庭裁判所に送致されます。成人事件では軽微な犯罪だったり、被害者と示談が成立していたりすれば不起訴処分となり裁判にかけられることはありません。しかし、少年事件ではたとえ軽微な犯罪で被害者と示談が成立していても、すぐに事件が終了するわけではないのです。
また成人の事件は、保釈請求が認められ保釈金を払えば釈放されますが、少年事件では保釈請求ができません。原則として少年事件の場合、家庭裁判所に身柄を送致された時点で少年鑑別所に収容する「観護措置」が採られます。この観護措置の間に少年の生活や生育環境を調査されることもあります。
3 裁判の違い
成年事件で起訴された場合、管轄の地方裁判所で裁判が行われ、誰でも傍聴することができます。しかし、少年事件では裁判とはいわず、「少年審判」といい、家庭裁判所で非公開で行われます。家庭裁判所で刑事事件が相当であると判断し、検察官に事件を逆送した場合は、例外的に公開して行われることがあります。
4 審理後の処分の違い
成年事件の場合、有罪が確定した被告人は懲役や禁錮など、刑法で定められた処罰を受けます。しかし、少年事件の場合は①保護観察処分②児童支援自立施設③少年院送致のいずれかを決定します。ただし、逆送された場合は再度起訴され、刑事処分が必要と判断された場合は、成人と同様に刑罰を受けることになります。
5 少年事件に「制裁」や「罰則」という概念はない
このように、少年事件と成人事件では手続きだけでなく、処分に対する考え方も明確に違いがあります。少年事件は、生まれ育った環境や人間関係が起因している可能性を視野に入れており、逮捕後は健全な育成と更正を促すことが一番の目的です。成人事件では懲役や禁錮などの罰則が「制裁」であるのに対し、少年事件では施設や少年院に収容されることは制裁ではなく、あくまで「教育」のためなのです。
6 少年法の改正
もっとも,令和4年4月1日から施行された少年法の改正によって,18歳と19歳の少年は,17歳以下の少年とは別に「特定少年」という扱いを受けることになりました。
特定少年は,通常の少年と異なり,社会的に責任が大きいとして,一部では成人事件と変わらない手続を受けることになります。
参考:18歳の息子が逮捕された!「特定少年」の扱われ方と弁護士の役割
7 少年事件でも弁護士に相談するべきか?
成人事件であれば,弁護士は被疑者の取調べのアドバイスを行い,被害者との示談を行うなどして,弁護活動を進めます。では,少年事件においても,弁護士に相談するべきでしょうか?
結論から言えば,少年事件においても弁護士に相談するべきです。少年事件での弁護士の役割は次の通りです。
⑴少年やその家族に今後の手続きの流れや,見通しをアドバイスすることが出来る ⑵社会での更正が見込めることを調査官にアピールし,少年院ではなく,保護観察処分が相当であることを主張する ⑶少年やその家族との話し合いを重ね,今後の家庭環境の改善のアドバイスを行う ⑷検察官に送致されないように弁護活動をおこなう ⑸被害者の方との示談活動を行う |
これらは,少年事件の弁護活動において重要な役割を持ちます。
ご家族やご自身が,少年事件を起こしてしまったら,早期に弁護士に相談しることをお勧めします。
日や夜間でも刑事事件の相談が可能な弁護士事務所に依頼するべきです。
法律事務所ロイヤーズハイは,土日祝・夜間の対応が可能です。速やかに事件を把握し,弁護活動を行うことで保護観察処分の可能性が見えてきます。
刑事事件・少年事件の経験が豊富な弁護士が多数在籍しております。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。