取り調べの「供述調書」作成の際に気をつけることとは
犯罪の嫌疑をかけられて身柄を拘束されると、警察の留置所内で取り調べを受け「供述調書」を作成することになります。
このとき、適切な対応をとっておかないと、後にさまざまな大きな不利益を受けるおそれが高まるので、注意が必要です。
今回は、取り調べの「供述調書」作成の際に注意すべき点について、弁護士が解説します。
1.供述調書とは
供述調書とは、取り調べの結果を捜査官がまとめ、被疑者(場合によっては被告人)が「間違いありません」と認めて署名指印した書面です。
供述調書に書かれた内容は、被疑者自身が供述したものとして、扱われます。
作成された供述調書は、検察官が起訴不起訴の判断をするときにも参考にされますし、後の裁判でも証拠として使われるため、非常に重要な意味合いを持ちます。
2.不適切な供述調書が作成されるデメリット
ところが、捜査官の不当な誘導などにより、事実とは異なる不適切な供述調書が作成されてしまうケースがあります。その場合、やってもいない罪をやったことにされて、えん罪で刑罰を適用されてしまうおそれが発生します。
また、犯罪を犯していることには変わりないとしても、犯行態様がより悪質になり、重い刑罰が適用されてしまう可能性もあります。
そこで、供述調書を作成するときには、「事実をそのまま適切に記載し、作成してもらうこと」が非常に重要です。
3.正しい対応方法とは
それでは、供述調書作成の際、具体的にはどのように対応するのが良いのでしょうか?
3-1.訂正を求める
まずは、捜査官が作成した供述調書の内容の読み聞かせを受ける際、適当に聞き流さずにきちんと確認することです。
少しでも間違っている箇所や、ニュアンスの異なる箇所があったら、必ず訂正を求めましょう。捜査官が面倒なそぶりを見せても、遠慮する必要はありません。
3-2.署名指印しない
捜査官が訂正に応じない場合や、訂正された内容にも納得できない場合には、供述調書に署名指印をしないことです。
供述調書は、被疑者の署名指印がないと完成せず、ただの紙切れです。後に証拠とされることもありません。
捜査官が署名指印を強要することは違法ですので、弁護人に訴えましょう。
3-3.黙秘する
いったん供述をして捜査官によって供述調書を作成されてしまうと、「署名指印を拒絶できない」という方や、「どこをどう訂正して良いのかわからない」という方もいらっしゃいます。
そのような場合には、黙秘をしてしまうのも1つの方法となります。黙秘している限り、供述調書は作成されません。
刑事手続きにおいては、黙秘しているからといって、そのことを不利益に斟酌することはできないことになっているので、安心しましょう。
以上のように、供述調書の作成に際しては、署名指印するかしないかについて、慎重な対応が必要です。また、黙秘するとは言っても捜査官からの圧力があるので、弁護士なしでは黙秘を貫けるものでもありません。
ご自身やご家族が刑事事件の被疑者となり、対応に困られた場合には、すぐに弁護士までご相談下さい。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。