特殊詐欺にだまされないように
特殊詐欺とは、電話やメール、S N Sなど、直接対面しない方法で被害者から金品などを騙し取る手口のことをいいます。
令和2年の認知件数は169件(前年同期比-77件)、被害額は3億1,523件(前年同期比-5716件)と前年より被害は減っているものの、平成22年と比べると被害総額は約3倍近くまで増えており、引き続きだまされないための警戒が必要といえます。
この記事では、特殊詐欺の手口の種類や最近増えている手口などについてご紹介した上で、被害を未然に防ぐ方法などについてご説明します。
目次
1 特殊詐欺の8つの手口
特殊詐欺には、振り込め詐欺と、振り込め詐欺以外の詐欺があります。
特殊詐欺 | |
振り込め詐欺 | 振り込め詐欺以外 |
①オレオレ詐欺
②架空請求 ③融資詐欺 ④還付金詐欺 |
⑤金融商品詐欺
⑥ギャンブル詐欺 ⑦交際あっせん詐欺 ⑧その他の特殊詐欺 |
⑴振り込め詐欺の種類と手口
①オレオレ詐欺
親族をかたり、急なトラブルでお金が必要といって被害者からお金を騙し取る手口です。会社のお金の横領、女性を妊娠させた示談金、借金の保証人になったなど、すぐにお金が必要であると訴えかけてきます。
昔のように「オレ、オレ」というような古典的な手口の報告は見られなくなり、最近では「スマホを変えた、登録しておいて」などといい、事前に被害者のスマホなどに登録されている被害者の親族の情報を変更させたうえで、詐欺に及ぶような手口も見られます。
また、親族だけではなく、警察や弁護士、銀行員などを名乗る複数の人物から電話がかかってくる劇場型詐欺もここ数年でよく見られるようになりました。複数の人物から同一の事件についての電話がかかってくる他、台本が用意されているようなケースなどもあり、手口が昔よりも巧妙になっています。
②架空請求
メールや葉書で身に覚えのない請求が届いたら、架空請求を疑いましょう。サイト利用料や登録料、延滞料などの名目で、高額な金銭を請求する手口です。また、不安を煽ったうえで連絡をさせて、さらに個人情報を聞き出そうとすることもあります。
他の振り込み詐欺に比べると、10代や20代など若い人が被害に遭いやすい手口です。身に覚えのない請求は無視しましょう。
③融資詐欺
低金利・保証人不要・即日100万円まで融資といった好条件で、実際には行わない融資を持ちかける手口です。ビラやメール、F A Xなどの方法で勧誘がなされます。
実際に連絡をすると、個人情報を要求されたり、返済能力確認のためにお金を振り込むように要求されたりすることがあります。他にも、個人情報の削除やキャンセル料などの名目で金銭を請求されることがあります。しかし、本物の貸金業者であれば、融資の際にお金を要求することはありません。
④還付金詐欺
医療費や税金、保険料などの還付金を口実にお金を騙し取る手口です。A T Mから受け取りの手続きをしてくださいと伝えますが、実際は電話で加害者の口座にお金を振り込むよう指示をします。A T M操作に慣れない高齢者を狙った悪質な手口です。実際は還付金受け取りのためにA T Mの操作が必要になることはありません。
⑵振り込め詐欺以外の特殊詐欺|主な種類と手口
⑤金融商品詐欺
社債、株、不動産、外貨などの投資話を持ちかけ、絶対儲かると思い込ませてお金を払わせる手口です。最初の頃は配当金を渡して儲かっているような感覚を与えつつ、追加でお金を投資させるようなこともあり、被害額が高額になることも少なくありません。
⑥ギャンブル詐欺
パチンコや競馬、宝くじなどの必勝法を口実に、情報料として金銭を騙し取る手口です。ギャンブルで必ず勝てると思っている人は多くはないでしょうが、ギャンブルに必勝法は存在しないので、あくまで可処分所得で楽しむ範囲内にとどめたいところです。
⑦交際あっせん詐欺
異性の紹介を口実に、紹介料や登録料を請求する手口です。一度だけ女性に合わせたうえで、「女性を不快にさせたから」と迷惑料を請求することもあります。
⑧その他の特殊詐欺
上記以外で、対面することなくお金などを騙し取る手口です。特殊詐欺の手口は時代の流れによって変わってくることもあるのでご注意ください。
2 特殊詐欺で最近増えている手口
イベントや災害、法制度の改正などがあった際は、それに便乗する詐欺が発生することがあります。ここでは、特殊詐欺の中でも最近増えている手口をご紹介します。
⑴新型コロナに便乗した詐欺
最近では新型コロナウイルスの流行に便乗した詐欺が確認されています。手口は様々で、保健所の職員を名乗り「マスクを配布している。家族構成を教えて欲しい」と個人情報を不正に得ようとする手口、緊急対策特別資金と称した融資詐欺、新型コロナに便乗して困っている親族を装うオレオレ詐欺などがニュースになっています。
⑵元号変更に便乗した詐欺
全国銀行協会や銀行の職員に成りすまし「元号が変わったから、今のキャッシュカードは使えなくなる。新しく作る必要がある。」といってカードを騙し取る手口が確認されています。
基本的に、銀行員がみずから連絡をしてきてキャッシュカードを受け取ろうとすることや、暗証番号を聞き出すことはありません。「用事がありますので」などと口実をつけ、相手の氏名と電話番号をメモして電話を切りましょう。
⑶オリンピックに便乗した詐欺
東京でのオリンピック開催が決定した2013年以降、オリンピックに便乗した詐欺が発生するようになりました。
手口は大きく分けて次の3つになります。
・観戦チケットに関する詐欺
・株や不動産などの投資詐欺 ・東京オリンピック関連の”ビジネス”に勧誘する詐欺 |
3 特殊詐欺にだまされないための対策
特殊詐欺にだまされないために、今から心がけておきたいことや、やっておきたいことをお伝えします。
⑴誰かに相談をする
警察庁の調査によると、被害者になってしまった人には詐欺から連絡が来てからお金を振り込むまでの間に誰にも相談しない傾向があったそうです。
確かに「息子さんが女性を妊娠させた」などと言われれば他人に相談しにくいかもしれません。そんな時は警察の相談窓口#9110など、知人以外に相談をするのも1つの手です。
⑵事実確認をする
少しでも違和感を感じたら、事実確認をするようにしましょう。連絡をしてきた人ではなく、自分から確認しに行くのがポイントです。
具体的には…
・オレオレ詐欺かもと思ったら、本人に連絡をする。
・警察を名乗っているが怪しいと感じたら、本物の警察に問い合わせてみる。 ・金融機関の職員を語る人物がいたら、金融機関名と所属と氏名をメモしてインターネットで検索する。 ・怪しい電話がかかってきたら、電話番号検索サイト『jpnumber』で検索してみる。 |
⑶キャッシュカードの利用限度額を下げておく
キャッシュカードの1日の振り込み上限額や、引き出し上限額をあらかじめ下げておくと、振り込め詐欺やキャッシュカードを盗む詐欺にあったとしても、被害を最小限に抑えられます。
⑷留守番電話や録音などの設定をしておく
高齢者の方が1日中ご自宅にいるような場合は、留守番電話に設定したり、自動で録音できる設定にしたりしておくことで、詐欺に遭うきっかけを減らしやすくなります。
4 まとめ
今回は、特殊詐欺の特徴や最近増えている手口、被害を未然に防ぐ方法などをお伝えしてきました。詐欺に遭わないようにするためには、一人でなんとかしようとせずに家族で協力して対策をしていくことが大切です。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。