親族相盗例とは?兄弟、親族間の犯罪行為
親族間で窃盗行為が行われた場合などには「親族相盗例」により、行為者が処罰されないことがあります。
親族相盗例とはどのようなもので、どういった犯罪に適用されるのでしょうか?
どこまでの親族の場合に罰則が免除されるのかについても、押さえておきましょう。
今回は、一定の犯罪の処罰が阻却される、「親族相盗例」について、弁護士が解説いたします。
1 親族相盗例とは
親族相盗例とは、親族間で窃盗罪などの一定の犯罪が行われたときに、行為者の処罰を阻却する特例です。
親族間で窃盗行為などが行われた場合には、警察などの国家権力が介入するよりも、家族間で解決する方が適切であると考えられるため、親族相盗例が認められています。
親族相盗例は、どのような犯罪にも適用されるわけではなく、対象となる犯罪が限定されています。たとえば、傷害罪や殺人罪などの場合には、もはや家族内で解決すべき問題とは言えず、たとえ親族間であっても刑を免除すべきではないため、親族間の特例はありません。
また、親族相盗例が適用される親族の範囲も限定されています。
2 親族相盗例が適用される犯罪
実際に親族相盗例が適用されるのは、どのような犯罪なのでしょうか?
具体的には、以下のような犯罪が行われた場合に被害者と加害者が親族であれば、刑が免除されます。
・235条) 窃盗罪
・235条の2) 不動産侵奪罪 ・246、248) 詐欺罪 準詐欺罪 ・249条) 恐喝罪 ・247条) 背任罪 ・252条) 横領罪 |
注意しなければならないのは、親族関係はものの所有者、占有者双方に求められるという点です。
つまり、親族が持っていた他人のものや、他人が持っていた親族のものについては、これらの刑が免除されません。
また、親族間で盗品譲受けの犯罪行為(刑法257条)が行われたときにも、やはり刑が免除されます。
この場合には盗品の所有者が親族である必要はありません。
上記以外の、傷害罪や暴行罪などの身体に対する罪や強盗罪や強制性交等罪、殺人罪や放火罪などの罪には、親族相盗例は適用されません。
3 親族相盗例が適用される親族の範囲
次に、親族相当例が適用される親族の範囲も確認しましょう。
親族相盗例によって刑が免除されるのは、配偶者と直系血族、同居の親族に限られます。
直系血族とは、親や祖父母、子どもや孫などの自分と直接つながる親族のことです。
同居の「親族」というのは、同居している六親等以内の血族、配偶者、三親等以内の姻族のことです(民法725条)。
それ以外の人の物を盗んだりだまし取ったりすると、犯罪が成立して処罰される可能性があります。
4 親族相盗例が適用されない親族の場合
それでは、同居していない兄弟姉妹などの親族間の犯罪のケースでは、必ず処罰されることになるのでしょうか?
実は、同居していない親族の場合でも、特別な取扱いがなされています。
親族相盗例が適用されない親族間で窃盗などの親族相盗例が適用される犯罪が行われたときには「親告罪」となります。
つまり、親族相盗例が適用されないケースでも、親族間の犯罪であれば、被害者が刑事告訴をしない限り、犯人が処罰されることありません。
以上のように、窃盗罪や恐喝罪、詐欺罪などの犯罪が行われたときには、被害者と加害者の関係性によって取扱いが変わってくるケースがあります。
対応方法に迷われたときには、弁護士がアドバイスいたしますので、お気軽にご相談下さい。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。