DVで通報、逮捕された!問われる刑罰と手続きの流れ | 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

DVで通報、逮捕された!問われる刑罰と手続きの流れ

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DVで通報、逮捕された!問われる刑罰と手続きの流れ

私は妻と一人の子供と三人で暮らしている40代男性です。

妻と喧嘩している最中にカッとなって妻に手を挙げてしまいました。

喧嘩のたびにコップを割ったり,妻に大声を上げたりしたこともあるのですが,暴力を振るったのはこれが初めてです。

妻は,「これはDVだ!警察に通報する!」と言って家を出てしまいました。

私は逮捕されてしまうのでしょうか。

近年DVが社会問題化するのに伴い,厳罰化の動きがあります。

今回のコラムでは,DVで通報された後の流れ,問われる罪について解説していきます。

 

目次

 

1 DVで警察に通報されると、逮捕・身柄拘束される?

DVで警察に通報されると、逮捕身柄拘束される?

そもそも,DVとは,正式には「ドメスティック・バイオレンス」の略です。

「ドメスティック・バイオレンス」と言う言葉の定義は曖昧ですが,近年「家庭内や,家庭内に準ずる近しい関係にある,又は過去にそう言った関係にあった人間から振るわれる暴力」という意味で使用されることが多いです。

では,DVで警察に通補されると逮捕・身柄拘束されてしまうのでしょうか。

結論から言うと,逮捕・身柄拘束される可能性があります。

警察は,民事不介入と言って,私人間の民事紛争には介入しません。

しかし,家庭内や家庭内に準ずる関係の人間同士の間で起こったと言っても,犯罪行為が関係していれば,民事不介入の原則の対象外です。

DVは,状況次第では,警察が介入して刑事事件に発展する可能性があります。

DVを受けた,又はDVを受けている人がいる旨の通報によって,警察官が到着した時点でDVが続いている場合,警察官は現行犯逮捕を行うことが出来ます。

もちろん,現行犯逮捕できない状況であっても,逮捕されないとは限りません。

DV被害者が被害届を出した場合や,被害者が受診した病院が通報した場合には,任意同行又は通常逮捕される可能性があります。

2 DVを受けたら問われる刑罰とは

⑴ 暴行罪 (刑法208条)

第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

喧嘩中に暴力を振るってしまったが,相手に怪我はさせていないようなケースでは,暴行罪が成立します。

もっとも,逮捕後に怪我が判明すれば,傷害罪として刑事事件化してしまいます。

暴行罪は,二年の懲役もしくは三十万円の罰金または,拘留もしくは科料が科せられます。

拘留とは,一日以上三十日未満の期間で,刑事施設に収容する刑罰です。

科料とは,千円以上一万円未満の金銭の給付を命じられる刑罰です。

⑵ 傷害罪 (刑法204条)

第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

DV加害者に怪我を負わせてしまったケースでは,傷害罪が成立します。

障害とは,「人の生理的機能を損なわせること」をいいます。

怪我の程度には関係がないので,骨折はもちろん,打撲でも傷害罪が成立します。

傷害罪は,十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金が科せられます。

⑶ 器物損壊罪 (刑法261条)

第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

人に危害を加えてないが,家の中の皿を割る,家具を破壊する等,物を破壊すれば器物損壊罪が成立します。

「自分の家のものを壊しただけで,他人のものを壊していないのに,器物損壊罪に問われるのか」という疑問もあるかもしれませんが,家族で購入したものは,他の家族の持ち物でもありますから,器物損壊罪が成立します。

また,「損壊」は,物の使用を妨げる行為を意味します。

つまり,家族を困らせてやろうと思い,ものを隠す行為も器物損壊罪が該当するのです。

器物損壊罪は,三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料が科せられます。

⑷ 脅迫罪・強要罪(刑法222条・223条)

(脅迫)

第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

(強要)

第二百二十三条 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。

 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。

 前二項の罪の未遂は、罰する。

「殴るぞ!」等と相手を脅した場合には,脅迫罪が成立します。

脅す内容は,怪我をさせるような内容にとどまらず,貯金を取り上げる等の財産を損なう旨の発言,不倫していると言いふらしてやる等の名誉を棄損しようとする旨の発言も含まれます。

本人に限られず,「子供に何があってもいいのか!」というような親族への加害を告知するケースも同様です。

脅迫罪の量刑は,二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金です。

さらに,脅迫したうえで,義務のないことを指せ,権利の行使を妨げるケースでは,強要罪が成立します。

害悪を告知したうえで家事をさせた場合,強要罪が成立する可能性が高いです。

強要罪の量刑は,罰金刑が存在せず,三年以下の懲役刑のみになります。

⑸ 不同意性交等罪・不同意わいせつ罪

(不同意わいせつ)

第百七十六条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。

 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。

 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。

 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。

 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。

 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。

 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。

 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。

 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。

 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

(不同意性交等)

第百七十七条 前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、こう門性交、口腔性交又は膣もしくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。

 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。

 十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

改正刑法が2023年6月23日に公布され,2023年7月13日に施行されました。

そのため,改正前は強制わいせつ罪・強制性交等罪であった犯罪は,7月13日以降に起こした事件については,不同意性交等罪、不同意わいせつ罪が適用されます。

これらの犯罪は,改正によって,条文に「婚姻関係の有無にかかわらす」と,明記されることになりました。

つまり,夫婦であっても,同意のない性行為又は性行為に準ずる行為は犯罪です。

不同意わいせつ罪は六月以上十年以下の拘禁刑,不同意性交等罪は五年以上の有期拘禁刑と,かなり重い罪が科されます。

特に,不同意性交等罪は,五年以上の有期懲役ですので,最長で二十年の懲役刑が科せられます。

関連コラム:不同意性交罪とは?不同意性交罪がいつから適用されるのか、成立要件などを解説

3 DVで逮捕されてから釈放されるまでの流れ

 ⑴DVで逮捕されてからの流れ

DVが刑事事件化し逮捕された後の流れは,他の刑事事件と変わりはないです。

現行犯逮捕,通常逮捕を問わず,逮捕されれば警察署に連行され取り調べを受けます。

この時点から身柄拘束が始まります。

逮捕されてから48時間以内に,警察は検察官に送致するかどうかを決めます。

検察官に送致されたら,そこから24時間以内に,勾留請求を行うか否か判断されます。

それまでの捜査への協力の姿勢や,反省の態度,被害者との示談の有無,逃亡可能性などが考慮されます。

裁判官が検察官の勾留請求を許可すると,そこから10日間,最大で20日間もの間身を拘束されてしまいます。

DVで逮捕されたら,加害者と被害者を接近させるわけにはいきませんから,身柄の拘束が長期化するケースが多いです。

勾留期間までの捜査結果をもって,検察官は被疑者を起訴するかどうか決めます。

起訴されたら,日本の刑事裁判は99%以上が有罪判決を下されます。

初犯や,量刑が軽い罪であれば,裁判官から刑を言い渡される際に,執行猶予がつくこともあります。

⑵保護命令制度とは

DV加害者には,DV被害者に接触することがないように,裁判所から保護命令が出ることもあります。

この保護命令制度について定めたのが,DV防止法,正式名称「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」です。

DV防止法そのものは,DV加害者を罰するものではありません。

DV被害者の救済を目的としています。

①DV防止法の対象

DV防止法は,「配偶者からの暴力」を受けた者を対象にしていますが,ここでいう「配偶者からの暴力」の意味は,一般的な意味よりも広い意味です。

まず,DV防止法のいう配偶者とは,婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含みます。(DV防止法1条)

具体的には,婚姻関係にある人はもちろん,事実婚や,同棲状態にある者を含みます。

次に「暴力」とは,身体・生命に危害を及ぼすような暴力を言います。

身体的暴力に限られず,精神的暴力,性的暴力も含みます。

もっとも,改正法が令和5年5月19日に公布され,令和6年4月1日の施行後は,精神的暴力には生命・身体に対する脅迫に限られず,自由・名誉・財産に対する加害の告知も含まれることになります。

②保護命令制度の種類について

保護命令とは,以下の四つの命令の総称です。(法10条)

 

ア 被害者への接近禁止

イ 退去命令

ウ 被害者の子又は親族の接近禁止命令

エ 電話禁等止命令

ア接近禁止命令

被害者の生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいとき,裁判所は,被害者の申立てにより,加害者に対し,被害者の住居・職場等の身辺に付きまとうことを半年間禁止されます。

改正法の施行後は,生命または身体の重大な危険の恐れに限られず,心身に重大な危害を受けるおそれが大きいときでれば,接近禁止命令を申し立てることが出来るようになります。

さらに,その期間を半年から一年間に伸長されることになりました。

イ退去命令

被害者は,加害者に対して,二カ月間一緒に住んでいる家から退去させることが出来ます。

ウ被害者の子又は,親族への接近禁止命令

接近禁止命令が出てから六か月の間,被害者の子・親族への接近を禁止します。

親族はもちろん,子が15歳以上であれば,その子の同意が必要です。

エ電話等禁止命令

接近禁止命令が出てから六カ月の間,以下の行為が禁止されます。

 

・面会を要求すること。

・監視の告知

・著しく粗野又は乱暴な言動をすること

・無言電話や,緊急の用がないにもかかわらずメールや電話を連続して行うこと

・緊急時以外の、午後十時から午前六時までの間に、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、又は電子メールを送信すること。

・汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付すること

・名誉毀損

・性的羞恥心をあおるような告知,写真の送付

改正法施工後は,以上の行為の他に,緊急時以外の連続した文書の送付・SNS等の送信、緊急時以外の深夜早朝(午後10時~午前6時)のSNS等の送信、性的羞恥心を害する電磁的記録の送信、位置情報の無承諾取得を追加が追加され,子への電話等禁止命令も追加されます。

③保護命令に違反してしまったら

DV防止法29条は,保護命令に違反した罰則について,一年以下の懲役又は百万円以下の罰金を科しています。

つまり,保護命令に違反してしまうと,逮捕される恐れがあります。

改正法施行後は,二年以下の懲役と,二百万円以下の罰金へと厳罰化がされています。

4 DVで逮捕されたら弁護士にお任せください!

一言でDVと言っても,様々な犯罪に該当する恐れがあります。

刑事事件化してしまったら,他の犯罪と同様警察に逮捕されてしまいます。

DVの加害者は通報した被害者を逆恨みしている可能性が高く,被害者に接近させないように釈放されることなく身体拘束が長期間続くことが多いです。

しかも,被害者側が申立を行えば,住居からの退去や,配偶者と子どもとも接近禁止命令が下されてしまいます。

そこで,DVをして逮捕されてしまったら,一刻も早く弁護士に相談しましょう。

早期の釈放には,被害者との示談の成立の有無が大きく影響しています。

DVの被害者は,加害者とコンタクトをとることはできるだけ避けようとします。

そこで。弁護士が代わりに被害者へ示談を働きかけます。

冷静な第三者を挟むことで,示談の成功率が高くなります。

早期釈放の他にも,不起訴の獲得や,刑の減軽には弁護活動が必要不可欠です。

法律事務所ロイヤーズハイは,夜間・休日の対応が可能な事務所です。

DV事件の経験が豊富な弁護士が,できる限りのサポートを行います。

DVで逮捕されてしまったら,法律事務所ロイヤーズハイにお任せください。

このコラムの監修者

  • 田中今日太弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

    田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)
    弁護士ドットコム登録

    弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。
    大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。
    お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。

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