強制性交等罪とは
強制性交等罪とは、暴力や脅迫を用いて無理やり性交などをした際に問われる罪です。刑法改正前は強姦罪と呼ばれていましたが、改正後は対象となる行為や被害者の範囲が拡大され、刑事罰の内容もより重いものになっています。
この記事では、強制性交等罪や準強制性交等罪について解説した上で、刑法改正によって強姦罪から強制性交等罪への変更によって具体的に変わったポイントなどをご紹介します。
目次
1 強制性交等罪・準強制性交等罪とは
⑴強制性交等罪とは
強制性交等罪とは、13才以上の人に対して、暴力や脅迫を用いて強制的に性交・オーラルセックス・アナルセックスを行うことです。有罪判決が下された場合は5年以上の懲役刑に処せられる恐れがあります。
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
引用:刑法第177条 |
近年は性犯罪が厳罰化される傾向があるのですが、その中でも代表的なものの1つが強制性交等罪(旧強姦罪)です。強姦罪の時代は性交のみが処罰の対象でしたが、強制性交等罪になってからはオーラルセックスやアナルセックスも処罰の対象になっています。
刑法改正で変更になったポイントは他にもいくつかございますので、後ほど詳しくご説明します。
⑵準強制性交等罪とは
準強制性交等罪とは、被害者を精神的もしくは物理的に抵抗不可能な状態にして強制的に性交等をすることです。罰則は強制性交等罪と同様5年以上の懲役刑となっています。
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。
引用:刑法第178条2項 |
準強制性交等罪について理解するには、『心神喪失』『抗拒不能』の意味をおさえるとスムーズです。
心神喪失とは、精神の異常によって正常な判断力が失われた状態のことを言います。具体例としては、泥酔状態や麻痺状態などがあげられます。泥酔するまでお酒を飲ませてその状態で性交渉を行った場合、被害者は心神喪失状態にあるため準強制性交等罪の構成要件を満たします。
抗拒不能とは、心神喪失以外で抵抗ができない状態のことをいいます。手足を拘束されている状態・驚愕・錯誤などが抗拒不能にあたります。
⑶強制性交等罪・準強制性交等罪の違い
両者の違いは、性交等に至るまでの手段の違いです。暴力や脅迫を用いて性交などを行うのが強制性交等罪で、心神喪失や抗拒不能に乗じて性交などを行うのが準強制性交等罪です。
被害者の意思に関係なく性交等を行うと、上記いずれかの罪、もしくは強制わいせつ罪などに問われてきます。
2 強姦罪から強制性交等罪への改正で変わったポイント
性犯罪厳罰化に伴って、性交だけではなくオーラルセックス・アナルセックスを強要した場合も強制性交等罪に問われる恐れがあると先ほどお伝えしました。ここでは、刑法改正によって具体的にどのようなポイントが変更になったのかお伝えします。
⑴男性も被害者とみなされるようになった
⑵オーラルセックス・アナルセックスも処罰の対象になった ⑶懲役の期間が3年から5年に変更された ⑷非親告罪になった ⑸監護者から子供への性交等も処罰の対象に |
⑴男性も被害者とみなされるようになった
強姦罪の時代は条文に『女子を姦淫した』という文言があり、女性のみが被害の対象でした。
刑法改正後はこの文言がなくなり、男性も被害者としてみなされるようになりました。
したがって、女性が男性に、男性が男性に対して強制的に性交等を行った場合も強制性交等罪に問われるようになりました。
⑵オーラルセックス・アナルセックスも処罰の対象になった
たびたびお伝えしているように、姦淫だけではなく、肛門性交や口腔性交も処罰の対象になります。刑法改正前にこれらの行為を行った場合は強制わいせつ罪などが成立する可能性がありましたが、強制性交等罪に問われるようになったことでより重い刑罰が科されるようになりました。
⑶懲役の期間が3年から5年に変更された
法定刑の下限が、3年から5年に引き延ばされました。執行猶予は3年以下の懲役刑が求刑された場合にしかつかないので、下限が5年になったというのは1つ大きなポイントです。罪の減軽理由がなければ、懲役刑が執行され刑務所に収監されることになるでしょう。
⑷非親告罪になった
強姦罪は親告罪といって、被害者の告訴がないと検察官は被疑者を起訴できませんでした。そのため、被害者が声をあげられず泣き寝入りをするようなケースが多く想定されました。刑法厳罰化後は非親告罪になったため、被害者の訴えがなくても検察官が被疑者を起訴できるようになり、犯罪の捜査がなされやすくなりました。
⑸監護者から子供への性交等も処罰の対象に
新設された監護者性交等罪は、家庭内での強制性交等を想定したものです。子供を監護・保護する立場にある人(親など)が子供に対して性交などを行った場合は5年以下の有期懲役に処されます。
十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。
引用:刑法第179条2項 |
3 強制性交等罪で逮捕されたら被害者との示談交渉を
強制性交等罪で有罪判決が下された場合、罪が軽減されない限りは執行猶予がつかないとお伝えしました。
しかし日本では起訴されると99.9%が有罪になるといわれています。
強制性交等罪で逮捕された場合は、いち早く被害者と示談交渉をして不起訴を目指す必要があります。
ここでは、強制性交等罪における示談の重要性についてご説明します。
⑴示談交渉の効果
被疑者や被告人の情状にもっともいい影響を与えるのが被害者との示談交渉です。
示談交渉が成立すると、被疑者と被害者との間で問題解決がなされた一つの証拠となるので、不起訴や減刑を得られる見込がでてきます。
⑵示談交渉の代理を弁護士に依頼するべき理由
ただし、示談とはいわばお金で解決を図るということであり、強制性交等罪のような重い罪の場合は被害者の被害感情も大きく、加害者側の方が直接交渉するのは現実的ではありません。被害者との示談交渉は、刑事事件の解決実績のある弁護士に依頼するのが一般的です。
⑶示談金の相場
加害者や被害者を取り巻く要因によって示談金額の金額は変わってきますが、安くても100万円程度、高くて500万円以上の示談金が必要になると見ておくのが無難です。具体的な金額についてはあくまでケースバイケースと考えていただくのがいいでしょう。弁護士に相談する際に事件の概要を伝えれば、大まかな示談金の目安を聞くこともできます。
4 まとめ
この記事では、強制性交等罪や準強制性交等罪の概要についてご説明してきました。どちらの罪も懲役刑の下限が5年以上であるため、刑事裁判になれば執行猶予がつかず、刑務所に収監されることも十分に考えられます。身内の方が逮捕された場合は、一刻も早く弁護士に刑事弁護を依頼しましょう。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。