酒に酔ったからと言い訳しても許されない性犯罪
酒に酔うと気分が良くなり、性行為(性犯罪)を行ってしまうこともあります。
お互いに同意していれば大きな問題にはなりませんが、酒に酔った異性と同意なしの状態で性行為をしてしまった場合は、罪に問われてしまう可能性があります。
つまり、酒に酔ったからという言い訳は許されないということになるのです。
では、いったいどのような罪に問われるのでしょうか?
目次
準強制性交等罪について
暴行や脅迫をすることによって、姦淫や口腔性交、肛門性交などを行った場合に強制性交等罪が成立します。
一般的にレイプと呼ばれる行為をしたときに、この罪に問われると思っておくと分かりやすいのではないでしょうか?強制性交等罪ではなく、準強制性交等罪と呼ばれる罪もあります。
準強制性交等罪というのは、心神喪失状態もしくは抵抗が不可能な状態の人に対してレイプのような行為を行った場合に問われる罪です。
例えば、泥酔していて抵抗ができなくなっている人に対して性行為を行った場合などに成立します。また、酩酊状態の人に対して性行為を行った場合にも、準強制性交等罪は成立します。
準強制性交等罪は、「準」という言葉が付いているため、軽い罪だと思ってしまう人もいるかもしれません。
しかし実際は、強制性交等罪と法定刑は同じで、5年以上の有期懲役が科せられます。
つまり、重大犯罪ということになります。
初犯だった場合の量刑はどのくらいになる?
準強制性交等罪に問われたとしても、初犯であれば軽く済むのではないかと思う人もいるでしょう。
続いては、初犯だった場合の量刑はどのくらいになるのかという疑問に答えていくことにします。
量刑はどのくらいが相場?
準強制性交等罪の量刑がどのくらいなのかというデータは公表されていないため、相場を知ることはできません。
しかし、初犯だったとしても被害者との間で示談が成立していないのであれば、実刑になるケースが極めて多いです。
旧強姦罪や旧準強姦罪を厳罰化したという流れを踏まえて考えてみると、初犯の実刑は減刑された場合で2.5年~3年ほどになると予想できます。
ただし、事案によって大きく変動するため、一概にどのくらいと言い切ることはできないでしょう。
行為が悪質な場合、被害者が複数人いる場合などは、より重大な事案だと考えられます。
そのため、より重い罪が科せられると想定できます。
執行猶予はつく?
準強制性交等罪は基本的に減刑されなければ短期刑が5年以上となっています。
執行猶予は3年以下の懲役刑のみなので、基本的には執行猶予を付けることはできません。
ただし、法律上の減刑事由があったり、減刑すべき事由があったりする場合は、裁判所の判断で減刑することができます。
そのため、何らかの理由で減刑になり2.5年の短期刑になった場合は、ぎりぎりですが執行猶予を付けられます。
量刑が決まる基準とは?
刑事裁判では量刑を決める際に、下記の事情を考慮して決めていきます。
- 犯罪行為の結果がどれほど重大か
- 犯罪行為がどれほど悪質か
- 被害者との示談がなされているか否か
- 加害者の立場
- 被害者の年齢
- 犯行に至る経緯と動機
犯罪行為の悪質性を示すのは、暴行や脅迫をしていたり、明らかに心神喪失状態にあるにも関わらず性行為を無理やり行ったりしたという事実があるかどうかがポイントになります。
それだけではなく、犯行が明らかに計画的であったと認められる場合や常習性が認められる場合も悪質だと判断される可能性が高まるでしょう。
示談交渉を進めるなら弁護士に相談しよう
準強制性交等罪に問われた場合、示談交渉を行いたいと思う人もいるでしょう。
そこで続いては、示談交渉を進める際に知っておきたいポイントについてご紹介します。
示談交渉の基本的な流れ
示談交渉は、まず被害者の連絡先を入手して交渉をスタートすることから始まります。
被害者と交渉し、どのような条件にするのか細かく話し合うことが重要です。
条件について話し合うことができたら、示談書を作成し、示談金を支払います。
そして、お互いに示談書にサインをすると示談が成立となります。
示談をする際に最も重要になるのは、被害者に対して心の底から謝罪することです。
被害者に対する謝罪の仕方に気持ちがこもっていないと感じられてしまうと、示談を受け入れてもらえない可能性も高まってしまいます。
お互いが納得できるように交渉するためにも、加害者はきちんと謝罪をしてください。
示談交渉の流れは一見するととてもシンプルです。
しかし実際は、かなり交渉は難航してしまうものです。
そのため、自力で示談交渉をするのでなく、弁護士に相談した方が良いということになるでしょう。
示談交渉をする際に現れる高いハードル
示談交渉をする際に高いハードルが現れます。
そのハードルというのは、連絡先を入手できないという事態です。
準強制性交等罪の加害者が被害者の連絡先を知らないというケースは少なくありません。
捜査している機関ではお互いの連絡先を知っていますが、加害者に被害者の連絡先を教えることはないのです。
なぜかというと、被害者は加害者に連絡先を教えることでさらに危害を加えられないか不安に感じているケースがほとんどだからです。
そのため、被害者は加害者との関わりを持ちたくないと考えるため、捜査機関から聞きだすことは不可能だと思っておいた方が良いでしょう。
ただし、弁護士は捜査機関を介して被害者から許可をもらうことができれば、連絡先を入手できることもあります。
弁護士を介して示談交渉をする場合は加害者に連絡先を知られる心配がないため、スムーズに進められるというケースもあるのです。
弁護士なら安心だと感じて連絡先を教えてもらえるからです。
難航しがちな示談交渉…した方がいいの?
示談交渉は難航してしまうことが多いです。
示談は簡単にできるものではありませんが、示談が成立した場合は加害者にとって有利に働く可能性が非常に高まります。
検察官が基礎を決める前の段階で告訴の取り消しを含める示談が成立した場合においては、加害者にとってのメリットがかなり大きくなります。
告訴取消しまでできた場合は、不起訴になる可能性も高まるため、示談交渉をしてみる価値はあると言えます。
不起訴になると、前科が付かないまま事件が終了となるのです。
起訴後だった場合は、執行猶予になったり、刑期を短くしてもらえたりするケースもあるという点も、メリットの大きさを物語っているでしょう。
加害者だけではなく被害者にも示談するメリットはあります。
その中でも特に大きいのは、民事裁判のように面倒な手続きをしなくても賠償金を受け取れるというメリットです。
しかし、示談が成立したタイミングで賠償金を受け取らなかった場合は、加害者が支払ってくれないというリスクも高なるので注意しなければいけません。
もしも賠償金を支払ってもらえない場合は、示談書を証拠にして民事裁判などを行うことになります。
民事裁判を行うと賠償金を受け取るまでに時間がかかってしまうため、示談をして確実に賠償金を回収するという選択肢を選ぶのも良いでしょう。
まとめ
酒に酔った状態で相手の合意なく性行為をしてしまった場合、準強制性交等罪という罪に問われる可能性が高くなります。
これは、強制性交等罪と同じ法定刑なのでかなり重大な犯罪だと言えるでしょう。
しかし、示談交渉が成功すれば罪が軽くなる場合があります。
そのため、弁護士に相談して示談交渉がスムーズに進むように行動した方が良いと言えます。もしも、強制性交等罪の罪に問われた場合は早い段階で弁護士に相談し、対策するようにしてください。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)
弁護士ドットコム登録弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。
大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。
お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。