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18歳の息子が逮捕された!「特定少年」の扱われ方と弁護士の役割

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18歳の息子が逮捕されてしまいました。最近友達と始めた「時給のいいバイト」が,オレオレ詐欺まがいのものだったそうです。まだ大学生なので,進級・就職に響くことがないよう早く釈放させたいです。しかし,最近では成人年齢が18歳になった関係で,息子も成人として扱われ,刑務所送りになってしまうのではないでしょうか。

今回の記事では,令和4年4月1日に施行された少年法の改正によって,18歳はどのような扱いを受けるのか?また家族ができることは何かを解説していきます。

 

 

1 18歳の息子が逮捕された!そもそも少年法とは

少年法は,14歳以上の未成年である非行少年に対する処分やその手続きを定めた法律です。

成人が罪を犯したとき,有罪判決が決定されれば,その罪を償うための刑罰が下されますが,少年法の目的はあくまで「非行少年の教育」です。

 

非行少年は,人格が十分に形成されているとは言えないため,更生の可能性が高いことから,家庭環境を見直し,本人を教育することで,再犯を防ぎます。

成年事件とは,そもそも目的が異なるため,逮捕されてから審判が始まるまで,その後の処分も大きく異なっています。

少年事件は,今後の処遇を決めるために家裁調査員による調査が必要になるので,「全件送致主義」が採られています。

そのため,全ての事件が捜査機関(警察・検察)から家庭裁判所に送られます。

そして,家庭裁判所では「調査官」が少年に関してさまざまな調査を行います。調査官は,調査結果に併せて,少年の処分に関する意見も調査報告書にまとめて,裁判官に提出します。

裁判官は,この調査報告書をもとに,少年に対する処分を決定します。
家庭裁判所の決定には,検察官送致(逆送),少年院送致,保護観察などがあります。

 

保護観察は,学校や職場に通いながら,保護観察官等の支援の下更生を図る制度です。

少年院送致は,刑務所ではありませんが,刑務所と同じように定められた期間内は身柄を拘束されます。

 

ここでは,生活指導や,職業補導等によって少年の更生を目指して教育が行われます。

保護観察や,少年院送致は,あくまで保護処分である一方,検察官への逆送は,成人と同様の刑事手続きを行います。

 

逆送された事件は,検察官によって刑事裁判所に起訴され,刑事裁判で有罪となれば刑罰が科されます。

参照:少年事件と成人(成年)事件の違い

参照:少年事件

 

2 18歳の息子が逮捕されたら「特別少年」として扱われる

もっとも,今日では,成人の年齢が20歳から18歳に引き下げられるなど,18歳や19歳が社会的に期待される役割は大きくなってきています。

そこで,刑法でも,18歳や19歳は17歳以下の少年たちに比べ,社会的な責任が大きいとして「特定少年」として扱われることになりました。

この法律の改正は,令和3年5月21日に成立し,令和4年4月1日から施行されます。

具体的な変更点を解説します。

 

(1)少年法の適用について

「特別少年」にも少年法が適用されることには変わりがありません。

 

(2)逆送対象の事件の拡大

少年が犯した罪の中には,原則として検察官への逆送が決定される事件があります。

(検察官への送致についての特例)

第六十二条 家庭裁判所は、特定少年(十八歳以上の少年をいう。以下同じ。)に係る事件については、第二十条の規定にかかわらず、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。

 前項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、特定少年に係る次に掲げる事件については、同項の決定をしなければならない。ただし、調査の結果、犯行の動機、態様及び結果、犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない。

 故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて、その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るもの

 

少年法62条は1項において,罪を犯すときに16歳であったものが,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であるときに,検察官に送致することを定めています。

改正法は,同条2項において,新たに原則逆送対象事件を拡大しました。

 死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件であつて、その罪を犯すとき特定少年に係るもの(前号に該当するものを除く。)

 

つまり,特定少年が犯した罪は,死刑または短期以年以上の懲役・禁錮が科せられるものであれば,原則逆送されることになったのです。

今回の改正で新たに原則逆送対象事件となった主な犯罪は,以下の通りです。

・組織的詐欺罪

・強盗罪,強盗致傷罪

・不同意性交等罪不同意わいせつ等致死傷

・現住建造物等放火罪,非現住建造物等放火罪,建造物等以外放火罪

 

ここでいう,組織的詐欺罪とは,刑法ではなく,組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律という別の特別法によって定められた犯罪です。

犯罪組織が詐欺を行った場合に適用されます。

主にオレオレ詐欺などでこの犯罪が成立します。

 

(3)実名報道の解禁

第三節 記事等の掲載の禁止の特例

第六十八条 第六十一条の規定は、特定少年のとき犯した罪により公訴を提起された場合における同条の記事又は写真については、適用しない。ただし、当該罪に係る事件について刑事訴訟法第四百六十一条の請求がされた場合(同法第四百六十三条第一項若しくは第二項又は第四百六十八条第二項の規定により通常の規定に従い審判をすることとなつた場合を除く。)は、この限りでない。

 

少年法は,少年の時に犯した罪について,たとえ逆送されて刑事事件化したとしても,容疑者となった少年の実名での報道,写真を公開することは少年の更生を妨げるとして,禁止されていました。

しかし,今回の改正では,特定少年は逆送されて起訴(略式手続きを除く)された時,実名の報道や,写真の公開が可能になったのです。

 

(4)保護処分に関する変更

いままで,少年の処分に関する決定は,調査官の調査報告書が重要な考慮要素とされていました・

しかし,改正後は,特定少年は,犯した罪の重さが重視されるようになります。

さらに,保護処分の期間についても変更が加えられています。

従前は,保護処分の期間が審判時に明示されることはありませんでした。

改正後は,特定少年の保護処分について,以下のように規定されています。

(保護処分についての特例)

第六十四条 第二十四条第一項の規定にかかわらず、家庭裁判所は、第二十三条(不処分)の場合を除いて、審判を開始した事件につき、少年が特定少年である場合には、犯情の軽重を考慮して相当な限度を超えない範囲内において、決定をもつて、次の各号に掲げる保護処分のいずれかをしなければならない。ただし、罰金以下の刑に当たる罪の事件については、第一号の保護処分に限り、これをすることができる。

 六月の保護観察所の保護観察に付すること。

 二年の保護観察所の保護観察に付すること。

 少年院に送致すること。

 前項第二号の保護観察においては、第六十六条第一項に規定する場合に、同項の決定により少年院に収容することができるものとし、家庭裁判所は、同号の保護処分をするときは、その決定と同時に、一年以下の範囲内において犯情の軽重を考慮して同項の決定により少年院に収容することができる期間を定めなければならない。

 家庭裁判所は、第一項第三号の保護処分をするときは、その決定と同時に、三年以下の範囲内において犯情の軽重を考慮して少年院に収容する期間を定めなければならない。

 勾留され又は第十七条第一項第二号の措置がとられた特定少年については、未決勾留の日数は、その全部又は一部を、前二項の規定により定める期間に算入することができる。

 第一項の保護処分においては、保護観察所の長をして、家庭その他の環境調整に関する措置を行わせることができる。

 

要約すると,保護観察は六カ月または二年,少年院送致は三年で,保護観察中に少年院送致が決定した場合には,一年とするという範囲が明示されました。

 

(5)特定少年は虞犯少年が適用されない

虞犯少年とは,保護者の監護に服しておらず,正当な理由なく家庭に寄り付かない,または交際や出入りしている場所がいかがわしいような少年を言います。

虞犯少年については,将来罪を犯す可能性が高いとして,少年審判に付される可能性がります。

もっとも,今回の改正で,特定少年は虞犯少年が適用されることはなくなりました。

 

(6)刑罰の変更

改正少年法は,特定少年に科せられる刑罰についても変更しました。

(死刑と無期刑の緩和)

第五十一条 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、死刑をもつて処断すべきときは、無期刑を科する。

 罪を犯すとき十八歳に満たない者に対しては、無期刑をもつて処断すべきときであつても、有期の懲役又は禁錮を科することができる。この場合において、その刑は、十年以上二十年以下において言い渡す。

 

まず,刑期の上限について変更されています。

少年法は,少年に言い渡される刑期について,死刑は無期懲役に変更され,懲役刑・禁錮刑は10年以上15年以内としていました。

今回の改正では,特定少年はこれらの制限が適用されないことになりました。

成人と同じく,最長30年の懲役刑も可能になったのです。

(不定期刑)

第五十二条 少年に対して有期の懲役又は禁錮をもつて処断すべきときは、処断すべき刑の範囲内において、長期を定めるとともに、長期の二分の一(長期が十年を下回るときは、長期から五年を減じた期間。次項において同じ。)を下回らない範囲内において短期を定めて、これを言い渡す。この場合において、長期は十五年、短期は十年を超えることはできない。

 前項の短期については、同項の規定にかかわらず、少年の改善更生の可能性その他の事情を考慮し特に必要があるときは、処断すべき刑の短期の二分の一を下回らず、かつ、長期の二分の一を下回らない範囲内において、これを定めることができる。この場合においては、刑法第十四条第二項の規定を準用する。

 刑の執行猶予の言渡をする場合には、前二項の規定は、これを適用しない。

 

さらに,従前の少年法では,少年が逆送によって起訴され有罪判決が下された場合には,「不定期刑」とされていました。

不定期刑の趣旨は,少年が更生したときの為に状況によって柔軟に刑期を短縮することがでることにあります。

しかし,今回の改正で,特定少年が逆送されても不定期刑が適用されることはなくなりました。

よって,特定少年は,成人と同様に明確な刑期が言い渡されます。

特定少年が刑期中に更生したとしても,刑期が短くなることはありません。

 

3 18歳の息子が逮捕されたら,弁護士にお任せください!

少年法の改正によって,特定少年が起こした犯罪は厳罰化されることになりました。

特に特定少年が,原則逆送対象事件を犯した場合,原則として成人と変わらない厳しい処罰が行われます。

もし,自分の子供が逮捕されてしまったら,親としては居ても立っても居られないでしょう。

18歳・19歳が成人として扱われるとしても,まだまだ未来のある大事な時期であることには変わりありません。

そこで,18歳・19歳のお子さんが逮捕されてしまったら,弁護士に相談することをおすすめします。

少年事件で特定少年が拘束されたなら、付添人弁護士が少年のために弁護活動をすることが大切です。

弁護士が早期から調査官に働きかけて、社会内での更生が可能であることを納得させることで,少年院送致ではなく,保護観察処分が相当であるとアピールします。

もし特定少年による犯罪が逆送されてしまったら,実名の報道や,刑期の延長など,今後の社会復帰や更生にかなり不利に働いてしまいます。

原則逆送対象事件は,家庭裁判所の調査官による調査の結果、犯行の動機、態様及び結果、犯行後の情況、特定少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮し、刑事処分以外の措置を相当と認めるときは、この限りでない,と少年法に規定されています。

そこで,弁護士は,特定少年が逆送されることのないように,裁判官や調査官と面談し,迅速かつ積極的に,保護処分が相当であるとの意見を述べます。

 

4 まとめ

今回は,少年法改正による特定少年について解説しました。

「詐欺罪の受け子」や「強盗」は,原則逆送対象事件と規定されていますので,軽い気持ちで行った「闇バイト」のせいで,刑務所に入ることになりかねません。

そのような事態に陥らないためにも,一刻も早く弁護士に相談しましょう。

そこで,休日や夜間でも刑事事件の相談が可能な弁護士事務所に依頼するべきです。

法律事務所ロイヤーズハイは,土日祝・夜間の対応が可能です。速やかに事件を把握し,弁護活動を行うことで,逆送されることなく,保護処分の可能性が見えてきます。

刑事事件の経験が豊富な弁護士が多数在籍しております。

18歳,19歳のお子さんが逮捕されたら,法律事務所ロイヤーズハイにぜひご相談ください。

このコラムの監修者

  • 田中今日太弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

    田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録

    弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。

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