正当防衛に当たらない場合とは?
形式的には犯罪に該当する行為をしたとしても、「正当防衛」が成立すると、違法性が阻却されて犯罪が成立しません。
ただ、一般的には「どういったケースで正当防衛が成立するのか」あまり正確に知られていないものです。
今回は、正当防衛に当たらない場合について、弁護士が解説します。
1.正当防衛とは
刑法は、正当防衛について定めています。
正当防衛とは、「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するために、やむを得ずにした行為」です(刑法36条)。
正当防衛が成立するためには、以下のような要件が必要です。
① 違法な侵害があり
② 侵害が切迫しているとき
③ 自分や他人の権利を守るため
④ 防衛の必要性があり
⑤ やむを得ずにした行為
たとえば、いきなりサバイバルナイフで切りつけられて殺されそうになったときに、そばにあった包丁で相手に反撃して大ケガをさせた場合などには、正当防衛が成立します。
2.防衛の意思がない場合
それでは、正当防衛が成立しないケースとは、どのような場合なのでしょうか?
1つは、「防衛の意思」がないケースです。
防衛の意思とは、自分や他人の権利を守ろうという意思です。
たとえば、先の例の場合には「自分の生命」を守ろうという「防衛の意思」をもって、相手に反撃をしているので、防衛の意思があります。
これに対し、相手から権利侵害を受けたとき、その機に乗じて反対に相手を傷つけてやろうとすることがあります。
たとえば、以前から気に入らないと思っていた相手と喧嘩になって殴られそうになったとき、それに乗じて思い切り暴行を振るい、大けがをさせた場合には、正当防衛が成立しない可能性があります。
ただし、防衛の意思と攻撃の意思の両方がある場合には、正当防衛が成立する余地があります。
3.過剰防衛の場合
次に、過剰防衛の問題があります。
過剰防衛とは、反撃行為に相当性がないケースです。
正当防衛が成立するためには、相手からの侵害行為に対して「相当な範囲内」の反撃である必要があります。
たとえば、殴られそうになったときに殴り返したのであれば、正当防衛と言えます。
これに対し、相手が殴るそぶりをしてきたときに、こちらはサバイバルナイフを持ちだして相手に執拗に切りつけて大けがをさせたとしましょう。そのようなケースでは、明らかに「相当性」に欠けると言えます。そこで、正当防衛は成立せず、傷害罪が成立します。
4.急迫性がない場合
場合によっては急迫性が認められないケースもあります。たとえば、危険な相手であっても眠り込んでいる場合や、すでにロープで縛って拘束している場合、相手が戦意を失っている場合などには急迫不正の侵害がありません。このようなときに相手を攻撃すると、正当防衛にはなりません。
以上のように、正当防衛の成否については法律的な判断が必要となります。
刑事事件に巻き込まれて、「正当防衛が成立するのでは?」と疑問を持たれているならば、一度お気軽に弁護士までご相談下さい。
このコラムの監修者
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田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。