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ひき逃げした場合の罪責

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ひき逃げをすると、刑事責任だけではなく行政責任や民事責任を負うことになります。事件の程度によっては賠償金額が高額になることも考えられ、例えば死亡事故の場合は数千万円の賠償金を請求されることがあります。

この記事では、ひき逃げした場合の罪責や、ひき逃げ事件の傾向などについて解説します。

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1 ひき逃げした場合の罪責

ひき逃げとは、交通事故で人を死傷させたにもかかわらず、必要な処置を施さずにその場から逃げる行為をいいます。ひき逃げをすると、道路交通法および自動車運転処罰法に違反することになります。

 

⑴道路交通法違反

道路交通法とは、道路上の危険を防止し、交通安全を図るための法律です。ひき逃げをした場合は、道路交通法上の以下の義務に違反することになります。

 

①救護義務違反

人をはねた場合、被害者を病院まで運んだり、救急車を呼んだりする義務があります。被害者を救護することなくその場を去った場合は救護義務違反になります。救護義務違反の罰則は、10万円以下の罰金です。

 

②報告義務違反

人身事故を起こした場合は、警察に現在の状況や事故が発生した位置などを報告しなければなりません。報告義務に違反すると、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金に処されます。

 

③現場に留まる義務違反

警察への報告後は、警察が現場に到着するまで安全な場所で待機している必要があります。現場から離れた場合は、5万円以下の罰金に処されます。

 

⑵自動車運転処罰法違反

自動車運転処罰法とは、人身事故を起こして人を死傷させた場合に適用される法律です。

ひき逃げをすると、過失運転致死傷罪・危険運転致死傷罪・準危険運転致死傷罪に問われる恐れがあります。

 

①過失運転致死傷罪

過失運転致死傷罪とは、自動車を運転するために必要な注意を怠り、人を死傷させる事故を起こした場合に成立する罪です。過失によってひき逃げを起こした場合に成立する可能性があり、有罪判決が下されたば場合は7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金に処されます。

参考:過失運転致死傷罪

 

②危険運転致死傷罪

危険な運転をして人を死傷させた場合は、危険運転致死傷罪に問われます。危険な状態での運転を故意に行なっていた場合は、過失運転致死傷罪ではなくこちらの罪に問われます。

危険運転致死傷罪にあたる運転とは例えば、飲酒運転やスピード違反、信号無視などが挙げられます。罰則は、1年以上の有期懲役です。なお、有期懲役の上限は20年となっています。

参考:過失運転致傷罪と危険運転致傷罪の違いとは?

 

③準危険運転致死傷罪

危険運転致死傷罪が成立するほどの危険運転をしていなかった場合に問われる可能性があるのが準危険運転致死傷罪です。罰則は1年以上15年以下の懲役となっています。

 

2 ひき逃げをした場合の行政責任・民事責任

ひき逃げをすると、上記でお伝えした刑事責任以外にも、行政責任と民事責任を負うことになります。

 

⑴ひき逃げをした場合の行政責任

ひき逃げをすると、救護義務違反で35点が加算され、前歴がなくても一発で免許取り消しになります。なお、35点が加算されると、前歴がない場合でも3年の欠格期間となります。

また、事件の状況によっては加えて以下の点数が追加されることがあります。

違反の種類 点数
信号無視 2点
死亡事故 20点
酒酔い運転 35点
危険運転致傷等 55点

 

⑵ひき逃げをした場合の民事責任

ひき逃げの被害者に損害賠償を請求される可能性があります。損害賠償の内訳には治療費や入院費、慰謝料などがありますが、被害者が後遺障害を負った場合や死亡した場合は、数千万円の損害賠償責任が生じることがあります。

 

3 ひき逃げ事件を起こした場合の傾向

ここでは、ひき逃げ事件の特徴について、犯罪白書の統計を参照しつつ解説します。

 

⑴怪我の程度が重いほど逮捕される可能性が高い

平成30年版の犯罪白書によると、ひき逃げの検挙率は58.4%となっています。被害の程度が重いほど検挙率も高くなっており、重傷事故の検挙率は74.7%、死亡事故の検挙率は100%となっています。

参照:ひき逃げ事件|犯罪白書

ひき逃げの場合は検挙率が高く、監視カメラに映像が残っているので警察の捜査から逃げ切ろうと考えるのは現実的ではありません。

 

⑵起訴される可能性が高い

ひき逃げ事件単体の起訴率自体は統計が存在しませんが、道路交通法違反の起訴率は61.6%(平成27年)となっています。中でもひき逃げは比較的悪質性が高いため、一般的な道路交通法違反よりも起訴されやすい可能性もあります。

そのため、悪質性が高いひき逃げ事件の場合は不起訴ではなく、加害者にとって少しでもいい情状になるような証拠を集め、減刑や執行猶予を目指していくことになります。

 

⑶示談交渉が難航することが考えられる

不起訴や減刑を得るためには、被害者との示談交渉が成立していることが重要です。

任意保険に加入している場合は保険会社が示談交渉を代理してくれるものの、交通事故の場合は症状固定に時間がかかることがあり、刑事裁判までに示談交渉が終わらないことも考えられます。

また、ひき逃げという事件の性質上、加害者は一度怪我を負った被害者の元から逃げていることもあり、被害者感情の観点から示談が難航する可能性もあります。

上記のような理由から、ひき逃げで逮捕された場合は一度弁護士に刑事弁護の相談をするのが無難といえます。

参考:被害弁償、示談交渉は、弁護士に任せましょう

 

4 ひき逃げをした場合の対応

最後に、ひき逃げをしてしまった場合にやるべきことをお伝えします。

 

⑴自首をする

上記でお伝えしたように、ひき逃げは検挙率が高いため、目撃者の証言や監視カメラの映像を元に警察が犯人を突き止める可能性が十分に考えられます。

ひき逃げをしたことに気づいている場合は、警察に自首をしましょう。自首をすると警察が事件を認知するため、捜査や取り調べを回避することはできませんが、反省をしている事実は加害者にとっていい情状になるので、裁判官の裁量によって罪が軽減されることも考えられます。

ただ、自首をした場合は逮捕され、身柄を拘束されることも考えられます。弁護士に自首同行の依頼をすることで、逃亡や証拠隠滅の恐れがないとみなされ、在宅事件扱いになる可能性も考えられます。

参考:自首に同行してほしい

 

⑵弁護士に刑事弁護を依頼する

事件の性質上、ひき逃げ事件の示談交渉は簡単ではありません。保険会社が示談交渉を代理してはくれますが、裁判で有利な情状を得られることも目的として刑事弁護を行ってくれるわけではありません。

刑事事件になってしまうと、身柄拘束の長期化や刑事裁判の準備など、対応するべき問題が他にも発生してきます。決して軽微な事件ではないので、刑事事件の解決がある弁護士に一度相談されることをおすすめします。

 

5 まとめ

ひき逃げ事件を起こすと、刑事責任・行政責任・民事責任の3つの責任を負うことになります。怪我の程度が重いほどこれらの責任がより重くのしかかってくることになります。ひき逃げ事件を起こしてしまった場合は、弁護士に自首の同行や被害者との示談交渉の代理を依頼しましょう。

このコラムの監修者

  • 田中今日太弁護士
  • 弁護士法人 法律事務所ロイヤーズ・ハイ

    田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録

    弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、性犯罪事件、窃盗・横領などの財産事件、暴行傷害などの暴力事件などで多数の不起訴経験あり。刑事弁護委員会所属。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。

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